雲を駆け抜けろ

第2回従来のホスティングとIaaSを比較する

Iaasと従来のホスティングを比較する

前回はクラウドの分類をIaaS、PaaS、SaaSと分類してみました。今回はクラウドの根幹部分を支える「IaaS」の部分を見てみましょう。

IaaS(=Infrastructure as a Service。日本語読みは「イァース」もしくは「アイアース⁠⁠)は、前回の説明した通り、サービス利用者にサーバを提供するものです。サービス利用者はIaaSを利用すると自分でハードを買う事無く「サーバ」を利用できます。

しかし、このようなサーバを利用させるサービス自体はクラウドが登場する前からありました。一般的にはホスティングや専用サーバと言われている物です。これらのサービスも料金を支払うことで「サーバ」を利用できるサービスです。では、IaaSと以前のホスティングや専用サーバとは何が違うのでしょうか?

大きく分けて

  • 料金の支払い体系
  • サーバ作成の自由度が高い
  • サーバの作成のスピード

という3点があると思います。それでは、この3点について見てみましょう。

IaaSの特徴――料金体系

まずIaaSと従来からあるホスティングや専用サーバでは、料金体系が大きく違います。ホスティングや専用サーバでは、基本的に月額固定料金制となっており契約した瞬間から月額料金が発生します。また「ホスティングや専用サーバ」の場合は最低利用期間が存在する場合があります。最低利用期間の長さはサービス事業者によって異なりますが一定の利用期間が経過しないとサービスが解約できないため、キャンペーンサイトなどの短い期間しか利用しないものや、テストサーバを利用するのには適していませんでした。また「ホスティングや専用サーバ」では利用する前に料金を支払う先払い方式となっています。契約して一度も利用していないのにも関わらず、契約をしてしまえば、一定の料金を支払う必要があります。

これに対してIaaSの場合は月額固定料金ではなく、従量課金制度を採用しているところが多くなっています。たとえば、代表的なIaaSであるAmazon Web Servicesでは、サーバを起動した1時間あたりでの稼働時間や実際に使用したネットワーク使用量で料金を出しています。安いプランでは、1時間あたり10円以下で利用できるので、短期間での使用には非常に向いています。使用期間がどの程度になるかわからない物については「ホスティングや専用サーバ」のような従来のホスティングと比べてもコストパフォーマンスに優れています。

ただし、このような従量課金は固定料金に比べて、自分が支払う料金がわかりにくいということもあります。固定料金の場合は、サーバをどれだけ利用しようが料金は一定ですが、従量課金の場合は実際に支払いがむまで自分がいくら支払うのかわかりません。IaaSを使用する場合は、実際にどのぐらいの料金を支払うのかも考えておく必要があります。

IaaSの特徴――サーバ作成の自由度

次のIaaSの特徴は「サーバ作成の自由度」が高いということです。従来の「ホスティングや専用サーバ」は、CPUやメモリ、ディスクのスペックが固定化されています。もし、あなたが「ハードディスクの容量はいらないからメモリの容量を大きくしたサーバが欲しい」といっても、そのようなサーバは、従来の「専用サーバ・ホスティング」では用意するのは難しいでしょう。理論的にはサービス提供業者がユーザが要求するスペックのサーバをすべて保有していれば、このような事は可能ですが、サービス提供者としても、そのようなサーバを大量に保有することは現実的でなく、ユーザの希望にあったスペックがあったサーバをそろえるのは難しい状況でした。

しかし、IaaSではサーバのスペックが「専用サーバ・ホスティング」よりも比較的自由に設定できます。IaaSのサービス事業者によって提供しているプランに違いはありますが「CPUやメモリ」については「専用サーバ・ホスティング」よりも、多くのスペックを用意しているサービス事業者が多く、事業者によってはメモリやCPUの性能を自由に設定できるところもあります。

また、ディスクについては、容量を自由に決められるだけでなく、サーバで使用するディスクやアーカイブ用のディスクなど数種類のディスクを用意しているサービス事業者もあります。単にログデータを保存するだけならば、料金が高いディスクでなくアーカイブ用の安いディスクを借りて保管すれば良いですし、サーバのディスクとして利用するのであれば通常のディスクを利用するということも可能です。

IaaSの特徴――サーバ作成のスピード

IaaSの次の特徴はサーバ作成のスピードが速いことです。従来の「専用サーバ・ホスティング」の場合は、サーバの申し込みをしてから実際にサーバが利用できるまでに数日ほどかかっていました。これは、申し込みがあってからサービスを提供するサーバを用意するため、どうしても時間がかかってしまっていたからです。これも理論的にはサービス提供側がサーバを大量に用意しすぐに使えるように準備をしておけば良いのですが、この方法も無駄なサーバが発生してしまいます。

しかし、IaaSではクリック1つ押すだけで数十秒から数分でサーバが利用できます。サーバが必要になったら、すぐにサーバを用意することが可能です。さらにIaaSでは、自分が設定したサーバの設定を保存しておき、その設定通りのサーバを作成することも可能です。

この特徴を利用すると、自分が作成したサービスに急に人気が出た場合でもサーバの数を増やして対応することができます。最近ではFacebookやmixiなどのソーシャルアプリが急に人気が出るケースがありますが、従来の「専用サーバ・ホスティング」では、これに対応するのは難しい状況でしたが、IaaSではサーバを短期間に増やすことができるので、巨大なアクセス数に対してサーバの数を増やして提供しているシステム全体を強化することができます。さらに、IaaSは前述した通り従量課金を採用しているので、アクセス数がなくなればサーバをなくすこともできます。提供しているサービスのアクセス数によってサーバの数を増減できます。

このような巨大なアクセス数に対してIaaSを使って対応した有名な例として「Animoto」の例が挙げられます。Animotoは写真などをアップロードするとミュージックビデオ風のスライドを作成してくれるというサービスです。このAnimotoですが、Facebookアプリを作ったのがきっかげでユーザ数が10倍に増えてしまいました。今までの「専用サーバ・ホスティング」では、このような事象には対応できないはずですが、AnimotoはAmazon Web Servicesを利用していたので、サーバ数を50から3,000以上まで増加させることができました。しかも、単にサーバの数を増やすだけでなく、アクセス数が下がった時はサーバの数を減らしながら最終的に3,000以上まで増やしたことになります。

この例を見て、日本のソーシャルアプリベンダーもIaaSを採用しはじめました。流行廃りが激しいソーシャルアプリですので、人気がなくなればすぐに停止するソーシャルアプリも出てきますし、逆に人気が出始めたらサーバの数を増やすこともできます、ソーシャルアプリとIaaSは相性が良い組み合わせと言えるでしょう。さらに、ソーシャルアプリ以外にも、特定の期間に負荷が集中する物に対してもIaaSは向いています。例えば、夜間にサーバ処理を行いたい場合やキャンペーンサイトの作成にもIaaSは向いていると言えるでしょう。

 従来のホスティングとIaaSの比較
図 従来のホスティングとIaaSの比較

まとめ

今回は従来の「専用サーバ・ホスティング」と比較しながらIaaSの特徴を見てきました。今までの「専用サーバ・ホスティング」のようにサーバを利用できるところは同じですが、従量課金制度やサーバ作成スピードが速いといった特徴があることで、従来ではできなかったことができるようになっています。次回は、IaaSがなぜこのような事ができるのかということと今後のIaaSの方向性について解説をいたします。


まずは、Windows Azure Platformを無料で試すためのアカウントを取得しましょう。

さらに詳しい技術情報はこちらから。

おすすめ記事

記事・ニュース一覧