前回はAWSについて取り上げてみましたが、今回は「さくらのクラウド」について取り上げてみます。
さくらのクラウド登場
さくらのクラウドといえば、サービス開始してすぐに大規模なディスク障害が発生、その後長期にわたって新規受付中止という状況でした。
そして11月1日に無事クラウドの新規受付を再開しました(あやうくこの連載でさくらのクラウドを取り上げられないところでした)。
さくらのクラウドはさくらインターネットが提供するクラウドサービスで、AWS同様IaaS形態のクラウドです。さくらインターネットといえば、日本におけるレンタルサービス、ホスティングサービスの雄であり、その領域においては日本ナンバーワンといっても過言ではないでしょう。
そのさくらインターネットがいよいよクラウドサービスに乗り出したということで、これはユーザからするとやっとAWSに対抗できる国産クラウドサービスの登場かと期待が持たれました。
さくらのクラウド以前にも国産クラウドはありましたが、正直なところマトモに商用サービスで使われているものは皆無だったと言えます。それがAWSよりもコストパフォーマンスがいいクラウドの登場とあって、開始当初はかなり話題になりました。
ところがオープン直後にディスク障害が発生して、またその解決に長期の時間を要したため、実質サービス開始からこれまではAWSの対抗とは言えない状況でした。
ようやく受付再開され、これからいろいろなシーンで比較されていくものと思われます。
AWSとさくらのクラウドの価格やパフォーマンスの比較は、連載の最後で各種クラウドの数値比較という記事で紹介する予定ですので、あくまで今回はさくらのクラウドの紹介をしていきます。
さくらのクラウドの特徴
さくらのクラウドは現在のところさくらインターネットの石狩データセンターに存在します。
さくらのクラウドは基本的にコントロールパネルから操作します。
GETやPUTなどのHTTPリクエストで操作できるAPIもあるようですが、AWSと違いまだまだAPI経由でできることには限りがあるようです。
- ドキュメント一覧:サーバ関連のAPI
- http://developer.sakura.ad.jp/cloud/api/
また提供されているリソースも、現状ではAWSで言うところのEC2に該当するサーバリソースのみとなっています。
さくらのクラウドの使い方
サーバの作成には、まずゾーン(現状は石狩のみ)、CPUのコア数、メモリ、ディスク仕様(HDD or SSD、接続形式、サイズ、内容)、ネット接続形式などを指定して起動します。
CPU、メモリ、ディスクの選択についてはあまりAWSと変わりませんが、面白いのはネットワークの自由度が高いことです。スイッチやスイッチ+ルータをクラウド上に設置して、そこにサーバを接続するという選択が可能です。これはAWSに比べてより自由度の高いネットワーク設計が可能といえるでしょう。
もともとサーバホスティングサービスを先行して提供していて、クラウドは後からの提供のため、思想としてサーバホスティングサービスを従量制にして提供する、という形式のようです。
ホスティングサービスとクラウドサービスの併用が可能
また、さくらインターネットはホスティングサービスの雄であると前述しましたが、もう1つユニークな点としてホスティングサービスで利用しているサーバとクラウドで利用しているサーバをネットワーク的に接続できるようになっています。
すなわち固定的に必要なリソースはオンプレミスで構築し、アクセス量によって増減する部分をクラウドで構築する、という第1回で説明したオンプレミスとクラウドの長所短所のいいとこ取りをする構成が利用可能です。
たとえば、ECサイトやソーシャルメディアで、基盤部分や確実にアクセスが見込める分はオンプレミスで構築して、キャンペーンの展開やヤフトピアタック(Yahoo!ニュース トピックスに掲載される)によるトラフィックの増大を受ける部分はクラウドで受けるという、コストパフォーマンスにすぐれたシステムの構築を行うことができます。
コンソール画面へのアクセスも可能
また、コンソール画面にアクセスできるのもAWSにはない特徴です。
サーバ管理画面からコンソールを選択すると、/dev/tty1に接続することができます。誤ってネットワークを切断してしまっても、このコンソール画面から操作できるので、再度ネットワークの設定を修正することも可能です。
またAWSで便利な機能の1つにAMIの管理がありますが、さくらのクラウドでもアーカイブという同様の機能があります。さくらインターネットからもCentOS、FreeBSD、Ubuntuなどのの何種類かのパブリックアーカイブも提供されていますし、自分で作成した環境をアーカイブ化することも可能です。
また、セキュリティについてはパスワードもしくは公開鍵のどちらかもしくは両方を選択することが可能です。もちろん公開鍵のほうが望ましいことは言うまでもありません。
AWSの場合には初期公開鍵はAWS側で発行し、その秘密鍵をダウンロードするという形式でしたが、さくらのクラウドでは公開鍵自体を入力することができます。
サーバ管理をする人は1個の秘密鍵であちこち管理することも多いでしょうから、この選択肢は便利だと思います。
メリットは「ホスティングサービスを従量課金にしたように使用することができる」こと
まとめてみると、さくらのクラウドをAWSと比較した場合、メリットとしては「ホスティングサービスを従量課金にしたように使用することができる」ということが言えると思います。逆にデメリットとしては、「まだまだサービスラインアップや管理ツールなど全般的に成熟していない」というものがあります。もっとも、利用者が一番気にするメリット・デメリットはコストパフォーマンスだと思いますが、それは連載の最後までお待ちください。
そういえば、AWSは時間課金なのに対してさくらのクラウドは日毎もしくは月毎に課金という違いもあります。課金の粒度は細かいほうがうれしいですね。
クラウドサービスとしては後発ゆえまだまだ今後に期待という部分もありますが、ホスティングサービスとして長い歴史と多くの実績をもつだけに、サービスが成熟・充実してくるとかなり有望な選択肢になりそうで、今後に期待できるクラウドサービスであると言えます。