私とLinuxとの関わり
それは1981年以来です、というと不思議に聞こえるでしょうか。私が初めてVAX 11/780システム上の初期のBSD UNIXのソースコードへのアクセスが許された時です。私がその時にカーネルに加えた変更は、(幸いにも)ずっと前に失われていますが、あのときの経験から、1つのシステムのソースコードがオープン化されて変更が許されることが、どれだけ可能性を広げるか、ということを学びました。
私がLinuxを初めて使用したのは1993年でしたが、1995年までにはリアルタイムのデータ取得、処理、そしてビジュアライゼーションのために(国の研究所の)仕事でLinuxを活用していました。それ以降ずっとLinux一筋です。
私は、ここ数年間に改定を含めてLinuxのデバイスドライバに関する本を2冊書き、多くのドライバを作成し、カーネルのソースの多くの箇所に手を付けました。1998年にはLWN.netを共同設立し、それをインターネットで最高のLinuxの情報源とするために活動してきました。さらに、カーネル・サミット・プログラム委員会のメンバーを務めて数年になりますが、現在はLinux FoundationのTechnical Advisory Boardの理事も務めています。
Linuxの現状について
Linuxに対する私の見解は、長い間変わっていません。素晴らしいシステムであり、改良され続けています。Richard StallmanがGNUプロジェクトを発表した時、新しいフリー オペレーティングシステムを作成しようとする彼の計画は野心的過ぎて望みがないと思われました。現在、私たちは、彼の当初の目標を何回でも簡単に実行できるほどの開発コミュニティを擁しており、はるかに大規模なタスクに取り組んできています。
Linuxシステムは、従来型のデスクトップシステムにおける顕著な例外を除き、ほとんどあらゆる状況において重要な役割を果たしています。多くの人は、複数のLinuxシステムを自宅で使用していますが(ネットワーク・ルータ、テレビ、セットトップ・ボックス、電話など)、それを知らずにいます。Linuxとフリー・ソフトウェアは、私たちの誰もが夢見たよりもはるかに成功しており、さらに私たちがやるべきことは未だあるのです。
LinuxCon Japanへの期待
私は、この世界トップクラスの技術会議で、多くの興味深い人々と話し、多くのことを学べると期待しています。会議のプログラムは、かなり充実しているようです。日本には、他の地域では見られない大規模な(そして拡大を続ける)開発コミュニティがあります。私は、いつも日本を訪問するたびに楽しく過ごしており、今回のイベントもとても楽しみにしています。
もちろん、昨年の「Japan Linux Symposium」は最初のイベントであり、カーネル・サミットと同じ場所で開催されたため大きな影響を受けました(また、助けられました)。今年はカーネル・サミットがないため、LinuxCon Japanは、(短い)歴史と評判で独力でやっていかなければなりません。
どのイベントでも2年目は厳しいものです。真新しさはなく、長年の実績があるわけではないからです。だからといって特に心配はしていません。昨年のイベントは大成功を収めており、私は非常に多くの人が再び参加を希望していることを知っています。つまり、昨年とよく似た形が期待されています。参加者は多少違うでしょうが、コミュニティは同じでしょうし、素晴らしい対話ができるでしょう。日本は、フリー・ソフトウェアの開発コミュニティにおいて存在感を増しており、LinuxCon Japanはそれを反映することになるでしょう。
LinuxCon Japanで伝えたいこと
私はカーネルの開発に関して話す場合、コミュニティの仕組みに大きな重点を置きます。現在、私たちは、毎年4~5回カーネルを新たにリリースしていますが、各カーネルには1,000人以上の開発者による10,000ヵ所を超える変更が組み込まれています。これは、他で見たことがないソフトウェア開発体制です。この体制がスムーズに機能している限り、私たちが克服できない課題はほとんどないでしょう。
私は興味深い技術的な開発に関して多くの時間を割きますが、私の話の中心は、コミュニティの状況とプロセスです。
私の希望は、カーネルの開発方法、開発コミュニティの最近の実績、差し迫る将来の課題、その課題への取り組みに関して、参加者が理解を深めてくれることです。カーネルの開発や改善の過程参加する気になって、ご尽力いただけたら、さらに素晴らしいですね!
- LinuxCon Japan:Jon Corbetさんのセッション「The Kernel Report」
- URL:http://events.linuxfoundation.org/2010/linuxcon-japan/corbet