使える!サーバ運用の実践テクニック

第20回インフラエンジニアと電力事情

未曾有の天災から引き起こされた原子力発電所の災害時対策などは一部人災と評されています。経済に貢献する事業を営む企業では、たとえば本連載の趣旨でいえば、データセンターやサーバ機器などで電力を必要とします。そして事業が拡大すると、それに従い求める電力も増えていきます。

私は専門家ではないため詳細はわかりませんが、各事業者がより電力を求めれば、供給事業者として求められる量を安定的に効率よい方法を模索するでしょう。天災前までの答えとしてはそれが原子力という手段だったのかと想像します。

しかしながら、原子力発電所自体の電力供給が途絶えた場合や、施設そのものが「壊滅的」環境におかれた際の管理を問われているところを見ると、やはりライフラインに属する事業というのは特別なものがあると感じます。

さて、そのような状況の中、会社の経営陣、オフィスの入っているビル、データセンターなどから「節電」のお願いを受けることが多くなってきているかと思います。今回はインフラエンジニアとして取り組める節電について記載したいと思います。

正しく理解しよう。節電は誰からお願いされるのか?

先述した通り、会社の経営陣、オフィスの入っているビル、データセンター、電車に乗った場合などでも「節電のため、7月1日より…」と、いろいろな形で耳にする機会がある「節電⁠⁠。これらは各企業などが自主的に行っているわけではなく(もちろん自主的に節電している部分もありますが⁠⁠、電力供給元事業者から直接お願いされるわけでもありません。実は経済産業省よりお願いされているものと考えるのが妥当なのです。

具体的には、経済産業省が「電気事業法第27条による電気の使用制限の発動を行った」のが大元となります。

電気事業法第27条による電気の使用制限の発動について(経済産業省)
URL:http://www.meti.go.jp/earthquake/shiyoseigen/index.html

この発動の内容によれば、データセンターを直接所有していない事業者などは「東京電力及び東北電力並びにその供給区域内で供給している特定規模電気事業者と直接、需給契約を締結している大口需要家(契約電力500kW 以上、対象者は電気事業者との契約単位(事業所単位)で判断⁠⁠」には相当しにくいため、対象となることはほとんどないかと思いますが、会社が契約しているデータセンターなどが上記の対象となった場合、契約している電力を消費している店子(我々事業者)へお願いが来るといった流れになると思います。

正しく理解しよう。どの程度節電すればよいのか?

電力が足りないことは感覚的に理解できても、具体的にどの程度の節電が必要なのか、ある程度の数値が見えていないと、我々の取り組みに対する達成度合いが見えにくい点が上げられます。

以下は、5月25日に電力需給緊急対策本部および経済産業省から発表された、今夏の電力需給対策および電力使用制限の概要となります。

東電管内の今夏の電力需給バランス

想定需要(抑制基準)6,000万 kW
供給力見通し(東北電力へ融通後)5,380万 kW
必要な需要抑制量(受給ギャップ)620万 kW
必要な需要抑制率10.3%
想定需要(抑制基準)は、昨年並みのピークを想定
東京電力か東北電力に最大限の融通を行うことを想定

電力抑制の目標
  • 需要抑制については、「使用最大電力(kW)」を抑制することを基本とする
  • 余震の影響や老朽化力の昼夜連続運転等の技術リスクを勘案し、目標とする需要抑制率を▲15%とする
  • 大口需要家(契約電力 500kw 以上の事業者)・小口需要家(契約電力 500kW 未満の事業者)
  • 家庭の部門毎の需要抑制の目標については、均一に▲15% とする
  • 大口需要家については、需要家の自主的な取り組みを尊重しつつ、実効性及び公平性を担保する補完措置として、「電気事業法第 27 条」を活用し電力使用制限を実施する

電気事業法第27条の活用
対象者
  • :電気事業者と直接受給契約を締結している大口需要家(契約電力500kW以上)
  • :対象者は、電気事業者との契約単位(事業所単位)で判断
期間・時間帯
  • :平成23年7月1日~9月22日(平日) 9時~20時
使用制限の内容
  • :原則、「昨年の上記期間・時間帯における需要設備の使用最大電力の値(最大値を記録した 1 時間あたりの平均使用電力の値)」の 15%を削減した値を使用電力の上限とする
  • :基準期間の末日の契約電力と比較して契約電力が増加している者については、増加後の契約 電力を基準電力値とし、基準電力値の 15%を削減した値を使用電力の上限とする
適用除外・制限緩和
  • :適用除外や削減率(15%)の軽減等の制限緩和を実施
  • :適用除外や制限緩和の対象であっても、自らできる限りの使用抑制に努め、また、企業・事業体等として削減率(15%)を達成するように努めることとする

データセンター事業者に対する電力使用制限の緩和について
  • 安定的な経済活動・社会生活に不可欠な需要設備
  • 24時間・365日電力使用の変動幅がほぼフラットな需要設備
  • 情報処理システムに係る需要設備(例:データーセンター、金融機関、航空、通信関係のシステム)
  • 「削減率」変動幅に連動
※変動幅:
1日の電力需要(1時間単位)の最大と最小の変動率を基準期間の日数分を平均したもの

電力使用の変動幅と削減率

変動幅削減率
10%未満0%
10%以上 15%未満5%
15%以上 20%未満10%

以上から、データセンターの場合はそれを利用した事業の性質を加味し、若干ながら目標値が異なることがわかります。

ただし、事業内容があくまでもライフラインに近いものを想定しているようにも見え、その場合、たとえば携帯電話のキャリアは含まれるものの、ゲームや娯楽などのCP業態に関しては対象外の可能性もありますが、取り急ぎ全体で15%削減するか、変動で10%以上の達成がスタートラインになることがわかります。

経済産業省への報告義務がある場合、データセンター事業者が全体の数値でまとめるだろうと考えると、詳細の数値とトレンド取得、分析する必要はなさそうです。

節電活動

オフィス(事務所)の節電

筆者の場合、事務・開発オフィスの情報システム部門も兼ねております。こちらは、震災時にちょうどデスクトップパソコンを全てノートPCへリプレイスする計画の最中で、入れ替えが終了した時点で達成となりました。

おおよそですが、1日8時間、30日を1ヵ月として利用し続けた場合の電力消費は、デスクトップパソコンで150W程度のものがあった場合

(150×8)×20=24kWh

となり、ノートパソコンで30W程度のものを用意すれば、デスクトップの5分の1程度の消費量で済み、またそれが削減率であることが算出できます。

また、社内のサーバルームのエアコン温度を日中は23℃、夜は25℃程度から状況を見ながらコントロールを行うようになりました。

データセンターの節電

事業会社のインフラエンジニアがデータセンターで活動できる節電については、意外とできることが限られていたりします。

冗長電源を単調化する

乱暴なやり方ですが、これでかなりの削減になると思います。ただし、サーバの機種によっては、アラート、発報や、出荷(購入)時構成と異なるため、起動時やモニタに何らかの影響がある可能性があります。担当営業様やテクニカルサポートなどを受けながら正しい対処をすると同時に、万が一の際に備え、障害対処方法などを見直す必要があります。

駆動系機器の弱電力化

ハードディスクなどに代表される駆動系の機器をSSDなどへ変更することにより節電が見込まれますが、これらは容量や費用対効果の部分に直結するため、慎重な検討が必要だと思います。

物理から仮想化へ

本連載でも何度か延べしましたが、クラウド化への検討、または自社内での物理サーバ統合として、仮想化が実現されれば、統合したサーバの数だけ達成したことになります。これらは保守費用なども含め非常におすすめです。

サーバ関連の設定で省電力化

サーバの設定で電力を下げていく場合、CPUとメモリの稼働率をきちんとコントロールすることが大切かと思います。CPUの稼働率を下げると結局他に負担がかかり節電になっていないことなどもあり得ます。

チューニングのポイントは、Intel系のCPUであればIntel EIST(Enhanced SpeedStepR Technology⁠⁠、Turbo Boost Technology、Hyper-Threading Technologyなどの設定を変更すれば節電効果が期待できます。ただし、これらはパフォーマンスと引き換えとなるため、昨日今日の思いつきで行うのではなく、事前のトレンドを分析し、きちんと計画たてて実行し、その後もウォッチする必要があります。

メモリに関しても、動作電圧に1.5V対応のものと1.35V対応のものがあり、それぞれでできることできないことがあります。またCPU、メモリを問わず設定はBIOSなどの画面から行うことが多く、各メーカからの資料などを参照する必要が生じます。

また、OS(Redhat Enterprise Linuxでは「cpuspeed」など)やハイパーバイザー(VMwareでは「構成⁠⁠-⁠電力管理」など)でも場合によっては省電力設定を行うことができますので、適用可能かどうか調査してみるのはいかがでしょうか?

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