今回は会社というものの仕組みやつまづきやすいポイントについて触れてみたいと思います。
株式会社を設立すること
起業する場合、フリーランスの個人事業主とかはさておき、普通は株式会社を設立します。これは「株式会社という仕組みが仕事というか事業を進める上で都合が良い点が多い」ためです。都合が良い点としては、
- 資金の調達
- 所有と経営の分離
- 法整備
- 各種取引の利便性
などがあります。
言い換えると、これらのメリットが不要であれば、株式会社である必要はないということでもあります。
資金の調達や所有と経営の分離というのは、とくに創業当初は不要なメリットであるケースも多いでしょう。キャッシュが最初から回転していれば(資金繰りがうまくいっていれば)、この2つは不要であると言えます。
ただ、現実的には株式会社というものについての法整備や、取引先との受発注などにおける法人格であることの優位性があるため、実際にはある程度きちんとした事業を行おうとすると個人のままでは難しいと思います。
資金とは何なのか?
さてまずはこの「資金」というものについて考えてみたいと思います。
事業の基本はお金=キャッシュです。
そのお金のうち、いわゆる「元手」のことを資金といいます。商売として一番シンプルな「仕入れて売る」という形態の場合、仕入れ代金が主な元手です。たとえば行商をするのであれば、常に次回仕入れをする代金が売上で賄えてかつ余ったお金=利益で生活できるなら、資金は最初の1回分の仕入れ代金だけ必要ということになります。
とはいえ、現実的にはそういうわけには行かず、だいたいある程度の資金=元手が必要なケースがほとんどでしょう(今回はフリーランスの個人事業主のような形態はあくまで除外しています)。
多くの場合、事業は最初のころは赤字であることが多いですし、また取引も現金ではなく売掛買掛(代金の支払い・受け取りが完了していない状態)で行うことが多くなるため、単月で黒字であっても1ヵ月分の資金は必要になります。
他にも、「売上の入金は月末で給与の支払いは25日」といったように入金・出金の日付が異なる場合など、事業を進めていくにはさまざまな要因で資金が必要になります。
資金について
ではどうやってその資金を用意するか、というとこれは主に2つの方法があります。
1つは借金、1つは出資です。また、借金にしても出資にしても、それを起業する人が用意するのか、他の人に出してもらうのか、という2パターンに分けられます。
起業する人が用意する場合には話は簡単です。最初の資金は手金で用意して、その後は営業利益でカバーしていく、つまり他人のお金は借金にせよ出資にせよ使わないという想定でスタートするものです。このケースで起業する場合が多いのではないでしょうか。
次に、手金では資金がカバーしきれない場合、他人に借りるか出資してもらうかということになります。
借金の場合には、それに利息を付けて返済します。出資の場合には、会社の所有権と引き換えにお金を預かります。この「会社の所有権と引き換えに資金、すなわち資本を得る」というのが「株式会社」の本質です。会社を株式というもので表現し、それをお金でやり取りすることによって、出資という資金調達方法を実現しています。
借金と出資の選択
この2つは一長一短なのでどちらが良いとも悪いとも言えません。
個人的には、借金でまかなえる範囲であれば借金、まかなえないのであれば出資というのが良いのではないかと思います。この件ついては以前ブログで詳しく書いたので、併せて参考にしてみてください。
資金と負債
ちなみに、出資で得た資金を資本、借金で得た資金を負債と言います。またこの2つの合計を資産といいます。
余談ですが、バランスシートというのは左側に資産、右側に負債と資本を書くのが一般的です。上下に並べる場合もあります。右側の負債と資本は資金を得た方法、左側の資産は得た資金の使途です。この2つは必ず一致するので、「バランス」シートといいます。
キャッシュがあるかぎり会社は続けられる
会社というのはキャッシュがある限りはどんなに赤字でも続けることができます。逆に、キャッシュがなくなるとたとえ経営が黒字でも事業は行き詰まってしまいます。
起業のポイントは調達の度合いを把握すること
起業するのであれば、どのくらい元手が必要で、それを自分で用意できるか、他人から調達するのかが最重要なポイントの1つとなってきます。
うまくいかないパターンの多くは、「最初の元手は手金でカバーして、それが尽きる前に事業収益を上げるつもりが、そうはならなかった」というものだと思います。ありていにいえば事業の目論見が外れるということです。
他にも、負債なり資本なりで他人のお金によって資金を調達することを計画していたが、資金調達の目論見が外れるというケースもままあります。
会社が立ち行かなくなるのは、事業の目論見が外れるか、資金調達の目論見が外れることによって、キャッシュが尽きてしまうため、と言えます。もちろんキャッシュ以外の要因で立ち行かなくなるケース、たとえば家庭の事情とかもなくはないでしょうが、だいたいはキャッシュがあるかぎりは会社は存続するパターンが多いでしょう。
この「事業の目論見が外れる」ケースと、「資金調達の目論見が外れる」ケース、これを掘り下げていけば、起業でつまずく要因というのがほぼわかると言って過言ではありません。
まとめ
まとめると、
- 事業にはキャッシュが必要
- キャッシュ=元手=資金を得るには借金と出資がある
- 起業でつまずくのは「事業がうまくいかない」か「資金調達がうまくいかない」かのどちらか
ということになります。
次回以降、いよいよその本質に触れていきたいと思います。