Ubuntu Weekly Recipe

第126回Google Chromeを使ってみよう!

Google Chromeは、Googleが開発している軽量、高速な、現在人気急上昇中のWebブラウザです。しかし正式に公開されているのはWindows版のみで、Linux版とMac版は長らくの間ベータ版としての提供でした[1]⁠。しかしながら5月26日(日本時間⁠⁠、とうとうLinux正式対応版であるChrome 5がリリースされました。そこで今週のレシピは、Ubuntu上で動くGoogle Chromeを紹介します。

Chromeのインストール

Chromeのダウンロードサイトには、Debian/Ubuntu用のdebパッケージと、Fedora/openSUSE用のRPMパッケージが用意されていますので、UbuntuユーザであればすぐにChromeを使い始めることができます。

debパッケージを単体で入れることに抵抗があるかもしれませんが、このパッケージは /etc/apt/sources.list.d/google-chrome.listというファイルを作成し、以後はGoogleのリポジトリをAPTの管理下に置くように作られています。また、http://dl.google.com/linux/deb/がリポジトリに追加されることで、Chromeのアップデートだけでなく、google-chrome-unstableのようなパッケージをapt-getでインストールすることもできるようになります。unstableは現時点でバージョン6.0.427.0-r49010が該当しますが、このパッケージはgoogle-chrome-stableとコンフリクトしますので注意してください[2]⁠。

もしもリポジトリを追加したくない場合は、パッケージインストール前に以下のコマンドを実行しておくとよいでしょう。

$ sudo touch /etc/default/google-chrome

Chromeの特徴

Chromeの主な特徴には、以下のようなものが挙げられるでしょう。Chromeはさすがに後発のWebブラウザだけあって、他のブラウザに比べて優れている点も多くあります。

  • レンダリングエンジンにWebKitを採用
  • Google V8 JavaScript Engineを使用した、高速なJavaScriptの実行
  • 各タブを独立したプロセスとして実行
  • ロケーションバーと検索バーを一体化した「OmniBox」
  • ダウンロード履歴やCookieを保存しない「シークレットウィンドウ」
  • ユーザサイドスクリプトの実行機能
  • ブックマークや設定の同期機能

Chromeを使ってみて感じるのは、やはりその軽快さです。またタブが別プロセスで実行されるため、一つのタブのクラッシュが他のタブに影響しない堅牢さも持ち合わせています[3]⁠。

FirefoxではGreasemonkeyやXmarksといった拡張を使用する必要があった、ユーザサイドスクリプトの実行やブックマークの同期が標準で可能なのも大きな魅力でしょう。筆者も自作のGreasemonkeyスクリプトを動かしてみましたが、大抵のものはそのまま、あるいは小さな修正で動きそうです。シークレットモード機能は閲覧記録を残したくない場合、たとえばオンラインバンキングや、家族には見られたくない楽しいページへアクセスする際に威力を発揮するかもしれませんね。このシークレットモードはCtrl+Shift+Nで開くことができます。

OmniBoxのインターフェイスは賛否両論かもしれません。筆者個人としてはFirefoxのように、検索用のボックスは独立して存在して欲しいと思っています。また、OmniBoxにキーワードやURLを入力してEnterを押すと、現在のタブに結果が読み込まれてしまいます。検索結果は新しいタブで開いてほしいという人も多いかと思いますが、そのためにはAlt+Enterで決定する必要があります。この挙動はFirefoxのデフォルト設定と同一なので、違和感なく使えるでしょう。

筆者は、Ctrl+fでページ内検索をした際に、該当部分の分布がスクロールバー上に表示される機能がお気に入りです。地味ですが、かゆいところに手が届く機能だと言えるでしょう。

図1 シークレットモードで開いたページは、閲覧や検索の記録が残らない。ただしこの状態でもブックマークしたページなどは記録が残るため、注意(?)が必要だ

図1 シークレットモードで開いたページは、閲覧や検索の記録が残らない
図2 右端のスクロールバーに注目。ページ内での該当個所の分布が一目でわかる。
図2 右端のスクロールバーに注目

ChromeもFirefoxと同様に、よく使う機能にはショートカットキーが割り当てられています。詳細なショートカット一覧はオンラインマニュアルを参考にするとよいでしょう。

拡張機能を使ってみよう

Firefoxの魅力の一つは、アドオンによって様々な機能を追加できるところです。⁠このアドオンがないと生きていけない!」というようなアドオンが、誰にも一つや二つはあるのではないでしょうか? Chromeも同じように、拡張機能を導入することで機能を追加/強化することができます。拡張機能は数多くありますが、その中から筆者が導入したものの一部を紹介します。

Chromed Bird

今やTwitterクライアントはなくてはならない存在です。世の中には多くのTwitterクライアントがありますが、Ubuntu Japanese Teamで一番のTwitter通であるあわしろいくや氏も使っているほどの高機能クライアントが、Chromed Birdです。

Chromed Birdは、ブラウザの拡張機能でありながら機能的には大変充実しており、ReplyやReTweet、Favoriteがワンクリックでできるのは当然として、TL、Mention、Direct Messageのほかに複数のリストや検索結果をタブとして任意の順に並べることができるのはとても便利です。表示色や形式も柔軟にカスタマイズ可能で、現時点では機能的にほぼ満点のTwitterクライアントでしょう。

図3 Twitterクライアントなので、当然初回実行時にはアクセスを許可する必要がある
Twitterクライアントなので、当然初回実行時にはアクセスを許可する必要がある
図4 ブラウザ内にポップアップする簡易なクライアントながら、任意にタブの増減が可能。リストや検索にも対応している
図4 ブラウザ内にポップアップする簡易なクライアントながら、任意にタブの増減が可能
図5 設定画面ではUIをはじめとした各種設定が可能
図5 設定画面ではUIをはじめとした各種設定が可能

TooManyTabs

Chromeはタブの多段表示ができないため、タブを多数開くと管理がしづらい側面があります。そんな時に便利なのが、すべてのウィンドウで開いているタブを一元管理できるTooManyTabsです。

TooManyTabsでは、単にタブを鳥瞰するだけでなく、タブの名前や作成された時間でソートする機能や簡易な検索機能を装備しており、目的のタブをすばやく見つけ出すことが可能です。また、⁠閉じたくないけど使っていない」タブをサスペンドすることで、メモリを節約する機能があります。筆者は調べ物の最中などにブックマークを使わず、必要そうなタブを開きっぱなしにしているクセがありますので、この機能は重宝しそうです。他にも閉じたタブを記憶しておき、復元することも可能です。

図6 サムネイルつきでタブの一覧を見られる。最近閉じたタブも記録に残るのが便利
図6 サムネイルつきでタブの一覧を見られる

SearchPreview for Google

SearchPreview for Googleは、Googleでの検索結果にサムネイルを追加する拡張です。検索をする際は、検索結果に表示されるページタイトルと3行程度のページ本文を手がかりに、目的にあうページを探して回ることは誰もがすることだと思います。SearchPreviewを導入すれば、ページのサムネイルが並んで表示されますので、ページをビジュアル的に捉えることが可能になります。わざわざリンク先を訪問しなくても、目的のページが見つけやすくなりそうです。

図7 検索画面にサムネイルが出るだけで、Google検索の印象ががらっと変わる。目的のページも見つけやすくなりそうだ
図7 検索画面にサムネイルが出るだけで、Google検索の印象ががらっと変わる

Google Mail Checker Plus

Google Mail Checker Plusはその名の通り、GMailの新着メールチェックと、簡易な閲覧機能をもった拡張です。メールの閲覧や既読フラグ、アーカイブ操作などを手軽に行うことができるようになっています。多くのメーリングリストに加入していると、⁠流し読みしておけば充分」というメールも毎日たくさんやってきます。そういったメールをわざわざGMailのページを開かずに「軽く読んでさっさとアーカイブ」してしまえるため、メール整理にかかる手間もいくらか減るのではないでしょうか。

オプション画面からは通知方法やポーリングする間隔、通知音やアイコンアニメーションなどを変更することが可能です。ただし使用言語のプルダウンが、デフォルトで現在設定している言語を反映しないようです。Japaneseを選択して保存すればきちんと日本語が反映されますので、Save & Reloadボタンを押す前には、必ず言語を選択しなおす必要があることにだけ気をつけてください。

図8 Chromed Birdと同様に、ブラウザ内にポップアップするGMailチェッカー。ここから全文を読んだり、削除やアーカイブができる
図8 Chromed Birdと同様に、ブラウザ内にポップアップするGMailチェッカー
図9 設定画面。保存する際はLanguageを日本語に選択しなおすのを忘れないようにしよう
図9 設定画面

Edit with Emacs

大抵のメールソフトに外部エディタを呼び出すオプションが用意されているように、Webブラウザでもテキストを書く時はお気に入りのエディタを使いたいですよね。そこでみんなが大好きなEmacsの出番です。FirefoxにはIt's All Text!という、任意の外部エディタを起動してブラウザのテキストエリアの内容を渡すアドオンがあります。Emacsにはemacsclientという、⁠既に起動中のEmacsに接続する」機能があり、筆者はIt's All Text!からemacsclientを呼ぶことで、FirefoxとEmacsを連携させています。

しかしChromeはセキュリティ上の理由から、外部プログラムをキックすることができない仕様になっています。そこで登場する拡張機能がEdit with Emacsです。この拡張機能はEmacs側でWebサーバを起動し、そこに対してChromeがテキストエリアの内容をPOSTします。そしてサーバからレスポンスとして返ってきた内容をテキストエリアに書き戻すというロジックで、外部プログラムでのテキスト編集を実現しています。Edit with Emacsにはedit-server.elというEmacs Lispプログラムが同梱されていますので、ロードパスの通った場所に配置したら.emacsに以下のように設定しましょう。Emacsがlocalhostのポート9292をListenしはじめます。

(require 'edit-server nil t)
(edit-server-start)

Chrome側では、テキストエリアの左下隅に「edit」というちいさなマークが表示されるようになっているはずです。ここをクリックすると新しいEmacsのバッファを開き、テキストエリアの内容が読み込まれます。Emacs上での編集が完了したらC-x C-sで保存しましょう。すると自動的にバッファが閉じ、テキストエリアに編集後の内容が反映されます。

E図10 dit with Emacsの設定画面から、edit-server.elを入手できる。接続するポートも変更できるが、デフォルトの9292でいいだろう
図10 Edit with Emacsの設定画面から、edit-server.elを入手できる
図11 テキストエリアの左下にeditマークが表示される
図11 テキストエリアの左下にeditマークが表示される。

elscreen-edit-server

デフォルトのEdit with Emacsでは、新しいフレームで新いバッファが開いてしまいます。本連載73回でelscreenを紹介しましたが、筆者のようにelscreenを愛用しているユーザならば、こんな時は新しいscreenを作ってバッファを表示して欲しいと思うのは自然な要求でしょう。これを実現するのが、khiker氏のelscreen-edit-serverです。Emacs Wikiからダウンロードするか、次のようにLaunchpadからbzrを使ってブランチを取得してください。

$ sudo apt-get install bzr
$ bzr branch lp:~khiker/+junk/elscreen-edit-server

elscreen-edit-server.elをロードパスの通った場所に配置したら、.emacsに設定を追記してください。elscreenとEdit with Emacsと協調して動くため、最終的な記述は以下のようになります。

(require 'elscreen)
(require 'edit-server)
(require 'elscreen-edit-server)
図12 GMailのメッセージ作成をelscreen-edit-serverで行ってみた。新しいscreenが作成されてバッファが開かれているのがわかる
図12 GMailのメッセージ作成をelscreen-edit-serverで行ってみた。新しいscreenが作成されてバッファが開かれているのがわかる

いかがでしたでしょうか。次期リリースであるUbuntu 10.10のNetbook Editionでは、Firefoxに代わってChromiumがデフォルトブラウザになることも検討されています。この機会に、ぜひChromeに触れてみてはいかがでしょうか。

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