3GやWiMAX回線で外出先でもインターネットに接続している方も多いでしょう。ただ、建物内や地下、新幹線のトンネル区間など、電波の届きにくい場所では使えないこともあります。
今回は、3GやWiMAX回線ではカバーできない範囲を補完できる公衆無線LANをUbuntuから使う方法を紹介します。
公衆無線LANの種類
公衆無線LANサービスを提供している事業者は複数あり、それぞれアクセスポイントの数や提携しているお店が異なっています。よく利用する場所やお店で無線LANを使うには、どの事業者と契約すればいいのかを事前に調べる必要があります。
例えば、東海道新幹線(東京-新大阪間)のN700系車内で使いたい場合は、5つの事業者のサービスのいずれかを利用しなければなりませんし、スターバックスコーヒーで使いたい場合は店舗検索のページからリンクされているPDFファイルを見て、利用する店舗がどのサービスに対応しているのかを調べておきます。
ここでは筆者が実際に契約して試したものを紹介していきます。
BBモバイルポイント
BBモバイルポイントはマクドナルドや銀座ルノワールで利用できます。プロバイダにはワイヤレスゲートを選びました[1]。プランは1ヶ月に1回以上使う場合には最安となるヨドバシカメラオリジナルプランで契約しています。
BBモバイルポイントのエリアでは「mobilepoint」というSSIDのアクセスポイントが表示されるので、これを選びます(図1)。続いて、WEPキーを入力したら、無線LANの接続は完了です。
ブラウザを開くとログインページにリダイレクトされるので、契約時に設定したユーザ名とパスワードを入力します(図2)。ワイヤレスゲートでの契約の場合はユーザ名の末尾に「@wig」をつけます。
ログインが成功すると「ようこそ」ページ(図3)と「ログアウト」ウィンドウが表示されます。ログアウトウィンドウを閉じてしまってログアウトできないと、他の機器を使いたいときや別のアクセスポイントに移動したときなどに、前のセッションが自動ログアウトされるまで一時的に使えなくなってしまいます。「ようこそ」ページをブックマークして、確実にログアウトウィンドウを呼び出せるようにしておくといいでしょう。
このようにUbuntuの場合でも通常の手順で無線LANに接続し、ブラウザでログインするだけで使えるようになります[2]。ログイン後はブラウザを通した通信だけでなく、APTでのパッケージインストールやSSH越しのBazaar操作、Dropboxクライアントの使用も可能でした[3]。
ホットスポット・ドコモ公衆無線LANサービス・フレッツスポット
ホットスポットとドコモ公衆無線LANサービス、フレッツスポット(NTT東日本・NTT西日本)は、エリアが重なっているところが多いものの、微妙な差異があります[4]。また、フレッツスポットではPPPoEが必要ですが、ホットスポットとドコモ公衆無線LANサービスは、BBモバイルポイントと同様のブラウザによる認証です。
ホットスポットは1日(24時間)での契約を選びました。クレジットカードで決済したところ、1度限りのIDとパスワードが発行されました。これには使用期限があり、使わなかったとしても返金はありません。SSIDは「0033」です。
ドコモ公衆無線LANサービスは、FOMAの契約を持っていないため、ドコモショップに出向いてMzoneを契約しました。こちらも1日(24時間)単位での契約にしました。その場でIDとパスワードが発行され、そのIDとパスワードを使ってログインした分だけ翌月に請求が来る後払い制です。ランダムな英数字のIDとパスワードが覚えにくかったのですが、同時に発行されたdocomo IDでMy docomoにログインし、好みのユーザ名とパスワードに変更できました。なおSSIDは「docomo」です。
どちらのサービスも無線LANに接続し、ブラウザでログインするだけで使えます。日単位での契約の場合は、エリアに入っても自動で接続しないように、接続の設定で「自動的に接続する」のチェックを外しておくといいでしょう(図4)。
フレッツスポットは、自宅でNTT東日本のフレッツ光ネクストを使用しているので、その付加サービスとして申し込みました。フレッツスポットは利用する機器のMACアドレスを事前に登録しておくのですが[5]、プロバイダ経由で申し込んでしまったため、MACアドレスを電話で伝えるという事態になってしまいました。さらに開通まで2週間かかりました。フレッツスクエアで申し込めば1時間程度で使用できるようになるとのことです。
フレッツスポットの範囲に入ったら、東日本の場合は「FLETS-SPOT」、西日本の場合は「NTT-WEST」というSSIDに接続します。ただし、フレッツスポットはPPPoEでIPアドレスを取得し、DHCPを使わないため、デフォルトの設定では接続を確立できません。接続の設定を開き、IPv4設定のメソッドを「リンクローカルのみ」に変更して接続し直します(図5)。
残念ながら、ネットワークマネージャが無線LAN経由のPPPoE接続に対応していないため、PPPoE接続はpppoeconfを使って設定します[6]。
無線LANでPPPoE
[アプリケーション]-[アクセサリ]-[端末]を開いたら、次のコマンドを実行します。
対話形式で進んでいき、プロバイダから提供されているユーザ名やパスワードを入力していきます。質問には、推奨されている選択肢を選んでいけばいいのですが、「PPPDをブート時に開始するか」の質問では「いいえ」を選びます(図6)。
pppoeconfでの設定を行うと、"/etc/network/interfaces"に項目が追加されるため、再起動後にネットワークマネージャのアプレットが機能しなくなります。ネットワークマネージャと併用するために"/etc/NetworkManager/nm-system-settings.conf"内の"managed"の項目を次のように"true"に変更しておきます。
ここまで設定したら、次回からは端末で次のコマンドを実行し、PPPoE接続を開始します。
数秒間待ってから次のコマンドを入力します。
次のような出力でIPアドレスやDNSアドレスが取得できていたら接続成功です。
接続を切断する場合は次のコマンドを実行します。
plogコマンドの出力が次のようになっていたら切断完了です。
フレッツスポット高セキュリティプラン
フレッツスポットには標準プランと高セキュリティプランがあり、高セキュリティプランを選択すると、電子証明書を使った認証になります。
接続の設定で、無線セキュリティに「ダイナミックWEP(802.1x)」を選択します(図7)。IDは任意の文字列でいいようです。CA証明書は単独では提供されていないため、次のコマンドで電子証明書から抽出しておきます。"-in"に続く部分は電子証明書のパスに置き換えてください。コマンドを実行するとパスワードを求められるので「電子証明書パスワード」を入力します。
できあがった「SPOT-ACCESS-CA.pem」をCA証明書として指定します。
秘密鍵には取得した電子証明書を、秘密鍵のパスワードには「電子証明書パスワード」を入力します。
フレッツスポット東海道新幹線エリア
フレッツスポットの契約で使用できる東海道新幹線エリアではPPPoEは必要なく、ブラウザを使った認証だけです。「NTT-SPOT」というSSIDに接続して、ブラウザを起動するのですが、FirefoxやChromiumではログイン画面が表示できませんでした。そこで一時的にw3mを使ってログインします。次のコマンドでw3mを起動します。
カーソルキーなどを使って入力欄に移動し、エンターを押すと編集モードになります。フレッツ・スポット認証IDとフレッツ・スポット認証パスワードを入力してログインします(図8)。認証IDの末尾には「@e-flets.jp」をつけます。
w3mで一度ログインしてしまえば、FirefoxやChromiumといったブラウザやその他アプリケーションでも通信できます。ログアウト用のURLは次の通りです。
このようにUbuntu単体でもさまざまな公衆無線LANサービスを利用できます。サービスによって対応している場所や価格がさまざまで、自宅のインターネット回線の契約や他の回線との組み合わせで割引があったりするので、自分に合った公衆無線LANサービスを見つけてください。