Ubuntu Weekly Recipe

第180回 KdenliveでH.264/AACなMADムービーを作る

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トランジションでクリップ合成

トランジションは聞きなれない単語ですが,クリップとクリップを合成することを意味します。GIMPやInkscapeといったグラフィック系ソフトウェアにおける,レイヤー間の加算(addition)合成や色相(Hue)合成と同じことが,クリップ間でできると考えて下さい。加えて,クリップをスライドして合成したり,クリップの移り変わりに装飾を追加するといった動きのあるトランジションを行うこともできます。

図12 クリップの下部にある半透明の帯がトランジション

図12 クリップの下部にある半透明の帯がトランジション

トランジションを加えるには,タイムライン上のクリップの左下または右下をクリックします。トランジションを選択すると,⁠Transition」ウィンドウでその詳細を設定することができます。

図13 ⁠Transition」ウィンドウ

図13 「Transition」ウィンドウ

プルダウンリスト「Type」でトランジションの種類を指定します。動きのないトランジションは先頭が小文字で,動きのあるものは先頭が大文字で始まっています。同じくプルダウンリスト「with track」で合成先のトラック番号を指定します。⁠Auto」となっている場合は自動的に下にあるクリップに合成するか,クリップがなければ黒の映像があるとして合成します。

トランジションの中にはCompositeやRegionのように,キーフレームを設定することができるものもあります。キーフレームもまた聞きなれない単語ですが,トランジションのパラメーターを時間的に変化させるための仕組みと考えて下さい。

図14 Compositeタイプはキーフレームにより,クリップ合成タイミングや度合いの細かな調整が可能

図14 Compositeタイプはキーフレームにより,クリップ合成タイミングや度合いの細かな調整が可能

レンダリングでファイル出力

「Project Monitor」ウィンドウでここまでの作業結果を見ることができます。

図15 左下が「Project Monitor」ウィンドウ。ここでは,音声や色味の監視のために,左上に「AudioSpectrum」ウィンドウを,右に「Vectorscope」を配置している。蛇足だが,筆者はこのシーンが大好きである。絵描きのキャラクターが絵筆を振り回し,様々な色で目を楽しませてくれるからである。⁠Vectorscope」ウィンドウを見ると色信号が赤から黄色まで一回転し,さまざまな色彩が出力されていることがわかる

図15 左下が「Project Monitor」ウィンドウ。ここでは,音声や色味の監視のために,左上に「AudioSpectrum」ウィンドウを,右に「Vectorscope」を配置している。蛇足だが,筆者はこのシーンが大好きである。絵描きのキャラクターが絵筆を振り回し,様々な色で目を楽しませてくれるからである。「Vectorscope」ウィンドウを見ると色信号が赤から黄色まで一回転し,さまざまな色彩が出力されていることがわかる

納得いくビデオができたら,それをファイルとして出力します。これをレンダリングと言います。

「Clip Monitor」と同じように操作して,先に「Project Monitor」ウィンドウで出力したい時間帯を指定しておきます。もちろん全体を出力することもできます。

画面上部のボタン「Render」をクリックし,⁠Rendering」ウィンドウを開きます。レンダリングはmltフレームワークを通じてffmpegに処理させるため,そのプリセットを指定します。動画共有サイトで利用可能なフォーマットをあらかじめ調べておいて下さい。すでに主要なプリセットが登録されていますが,自分専用プリセットを用意することもできます注2⁠。

図16 ⁠Render」ウィンドウ。表示は筆者が今回用意したプリセット

図16 「Render」ウィンドウ。表示は筆者が今回用意したプリセット

メニーコアなシステムを使っている場合は,項目「Encoder threads」で利用するスレッド数を選択できます。処理を分散してレンダリングにかかる時間を短縮することができます。

「Render」ウィンドウ下部で出力時間帯を「Full project」「Selected zone」から選択したら準備完了です。ボタン「Render to file」でレンダリングを開始して下さい。ファイルはウィンドウ上部のテキストボックス「Output file」に出力されます。

図17 レンダリング中

図17 レンダリング中

こうして出力したファイルは,日本国内法とサービス提供者の規約に従い,他人の権利を侵害しない限りは動画共有サイトにもアップロードが許されます。その際,フォーマットが合わずに再エンコードの憂き目に合う場合もありますが,その場合はffmpegのマニュアルを参照してレンダリングのプリセットを変更するなどして対応して下さい。


筆者が今回使っていて感じたのは,kdenliveやmltフレームワーク,ffmpegが2009年当時から進化し,とても使いやすく高機能となっていることです。今後の発展がますます楽しみです。

注2
現在Ubuntuで利用できるffmpeg内蔵のAACエンコーダー/デコーダーであるffaacはまだ実験的な段階のようです。今回筆者が試した限り望むような結果が得られませんでした。そのため,medibuntuリポジトリから利用できる「libavcodec-extra-52」を利用し,パッケージ「libfaac0」によるAACエンコーディングを行うようなプロファイルを用意しました。

著者プロフィール

坂本貴史(さかもとたかし)

Ubuntuのマルチメディア編集環境であるUbuntu Studioのユーザ。主にUbuntu日本コミュニティとUbuntu Studioコミュニティで活動。いつかユーザ同士で合作するのが夢。