Ubuntu Weekly Recipe

第204回Unity Lens 10番勝負

Ubuntu標準のデスクトップインターフェースであるUnityには、⁠Lens」と呼ばれる検索システムがあります。今年最後のレシピではこのLens用に公開されているさまざまなアドオンを紹介します。

UnityのLensシステム

UbuntuはSuper(Windows)キーを押した時に表示されるDashを使うことで、アプリケーションやファイル、音楽コンテンツなどさまざまなものを検索・表示・インストールできます図1⁠。

図1 Superキーを押した状態。Lensは画面下のアイコンをクリックするか、TABキーで切り替えられます
図1 Superキーを押した状態。Lensは画面下のアイコンをクリックするか、TABキーで切り替えられます

この検索機能は、検索対象ごとにLensとScopeというデーモンがバックエンドで動作し、UIや検索結果を提供しています。このためプラグインという形で、自由に検索機能を追加できるのです。

さらにLensに関するAPIや独自のLensの作成方法は公開されているため、Ubuntu 11.10以降さまざまなLensが作成されました。そこで今回は、公開されたLensから便利そうなものを紹介します。

Lensのインストールについて

今回のレシピではPPAを使ってインストールする方法をたくさん紹介しています。これはLensの作成が11.10のリリース以降に活発になり、公式リポジトリで提供するタイミングを逃しているためです。

これらのPPAは、公式リポジトリのような審査を経たわけでもなく、さらにPPAを追加することで他のパッケージが更新される可能性もあるので、それなりのリスクは十分理解した上でインストールしてください。

今回画像付きで紹介したLensについては、以下のPPAにコピーしています。とりあえず試してみたいだけの場合は、以下のコマンドを実行した上で、インストール時はadd-apt-repositoryを飛ばした上でapt-get installコマンドのみを実行すると良いでしょう。

sudo add-apt-repository ppa:cosmos-door/lenses
sudo apt-get update

ちなみに、Lensはインストールしてから一度再ログインをしてUnityセッションを再起動しないと反映されません。

ウェブサービス系Lens

Gwibber Lens

Gwibber LensはソーシャルネットワーククライアントであるGwibberで取得したストリームを検索するためのLensです図2⁠。

図2 直近のメッセージを表示するだけでなく、画像やURLで絞り込むことも可能です
図2 直近のメッセージを表示するだけでなく、画像やURLで絞り込むことも可能です

例えばTwitterアカウントをGwibberに登録しておくと、TweetやReplyだけでなく、URLや画像が含まれる投稿を個別に検索できます。

今回紹介するLensで唯一、公式リポジトリからインストールできるLensになります。

sudo apt-get install unity-lens-gwibber

Bookmarks Lens

Bookmarks LensはFirefoxのブックマークを検索するLensです図3⁠。

図3 Bookmarksの場合はとくに絞り込みがなく、ただただBookmarkのみを検索します
図3 Bookmarksの場合はとくに絞り込みがなく、ただただBookmarkのみを検索します

WEB UPD8のPPAでパッケージが公開されています。

sudo add-apt-repository ppa:nilarimogard/webupd8
sudo apt-get update
sudo apt-get install bookmarks-lens

Google Docs Lens

Google Docs LensはGoogle Docsを検索するためのLensです図4⁠。

図4 突貫工事で作ったせいか、なぜかPythonのアイコンです
図4 突貫工事で作ったせいか、なぜかPythonのアイコンです

Unityの開発者の一人であるnjpatelが作成しWEB UPD8のPPAでパッケージが公開されています。

sudo add-apt-repository ppa:nilarimogard/webupd8
sudo apt-get update
sudo apt-get install unity-lens-gdocs

さらに、/usr/bin/unity-lens-gdocs.pyの、GDOC_USERNAMEとGDOC_PASSWORDにGoogle DocsのIDとパスワードを記述します。つまり、IDとパスワードが「平文で」保存されることになるので注意してください。

再ログインする前に一度、以下のコマンドを実行してサービスを起動します。

unity-lens-gdocs.py

一度起動したら、自動起動するアプリケーションに追加されますので、上記コマンドは一度実行するだけで大丈夫です。

AskUbuntu Lens

Ask UbuntuはUbuntuのQ&Aサイトの一つで、数多くのユーザーや開発者による質問や回答が投稿されています。このため、Ubuntuで疑問が生じたとき、まずはAsk Ubuntuで検索するとすぐに答えが得られることも多いです。

AskUbuntu Lensはこのサイトを検索するためのLensで図5⁠、Ask UbuntuのPPAで公開されています。

図5 ただ質問と回答を検索するだけではなく、投稿フォームをブラウザで開くこともできます
図5 ただ質問と回答を検索するだけではなく、投稿フォームをブラウザで開くこともできます
sudo add-apt-repository ppa:askubuntu-tools/ppa
sudo apt-get update
sudo apt-get install unity-askubuntu-lens

なお、Ask UbuntuだけでなくStack OverflowなどStackExchangeを使っているWebサービスも検索できます。Lensの「検索の絞り込み」から必要なサービスを適宜選択してください。

Book Lens

Unity Book Lensはドキュメントディレクトリや、電子書籍管理ツールCalibreのライブラリ、さらにはProject Gutenbergなどのインターネットサービスから電子書籍を検索するLensです。

図6 もちろん日本語での検索も可能です
図6 もちろん日本語での検索も可能です
sudo add-apt-repository ppa:davidc3/books-lens
sudo apt-get update
sudo apt-get install unity-lens-books

ユーティリティ系

電卓

One Hundred Scopesが開発しているunity-scope-calculatorは、Dash上で電卓が使えるツールです。GNOMEの電卓をバックエンドとして使うので、三角関数や指数計算といった数値計算もできます。

Scopeとして提供されているため、他のLensのように画面下にアイコンは表示されません。汎用のDash(Superキーをタップして表示されるホームアイコンのDash)で使用します。

図7 円周率の計算もこれこのとおり
図7 円周率の計算もこれこのとおり
sudo add-apt-repository ppa:scopes-packagers/ppa
sudo apt-get update
sudo apt-get install unity-scope-calculator

Cities

電卓と同じくOne Hundred Scopesが開発しているunity-scope-citiesは、世界の街を検索し、地図上の場所や現在時刻、天気を表示するツールです。

これもScopeとして提供されているため、汎用のDashで使用します。

図8 汎用のDashで検索するため、Google DocsやGwibberの検索結果もヒットしていますが、一番下がCitiesの結果です
図8 汎用のDashで検索するため、Google DocsやGwibberの検索結果もヒットしていますが、一番下がCitiesの結果です
sudo add-apt-repository ppa:scopes-packagers/ppa
sudo apt-get update
sudo apt-get install unity-scope-cities

Tomboy Lens

Tomboy Lensは、ノートアプリであるTomboyで保存したデータを検索するLensです。

図9 Tomboyのノートは編集中のものをリアルタイム検索できず、一度ログアウトする必要があるようです
図9 Tomboyのノートは編集中のものをリアルタイム検索できず、一度ログアウトする必要があるようです
sudo add-apt-repository ppa:remi.rerolle/unity-lens-tomboy
sudo apt-get update
sudo apt-get install unity-lens-tomboy

Simple Applications Lens for Unity

Simple Applications Lens for Unity(Bliss)は、UnityのApplication Lensを、GNOME 2のアプリケーションメニューと同様のカテゴリを使った階層構造で表示するLensです。

図10 アプリケーションカテゴリを一覧表示した例。他のカテゴリを表示したい場合は、Backを選択して一度戻ります
図10 アプリケーションカテゴリを一覧表示した例。他のカテゴリを表示したい場合は、Backを選択して一度戻ります

単純にカテゴリごとにアプリケーションを検索・一覧表示したいだけなら、既存のApplication Lensと右側の絞り込みを併用すれば実現可能です。それに対してBlissは、階層構造の移動も含めて左側のUIだけで行えるため、キーボードだけで操作を完結できるというメリットがあります。

開発自体はUnity Teamが行っていますが、パッケージはWEB UPD8のリポジトリからインストールできます。

sudo add-apt-repository ppa:nilarimogard/webupd8
sudo apt-get update
sudo apt-get install unity-bliss-lens

RunLens

RunLensは、インストールされたアプリケーションに、説明文をつけて表示するLensです。

図11 通常のApplication LensはSoftware Centerにあるインストール可能なものも表示されますが、これはインストール済みのものだけ表示します
図11 通常のApplication LensはSoftware Centerにあるインストール可能なものも表示されますが、これはインストール済みのものだけ表示します

説明文も検索対象になるため、アプリケーション名がよくわからなくても検索しやすくなります。

sudo add-apt-repository ppa:diesch/testing
sudo apt-get update
sudo apt-get install runlens

その他

上記のように、UnityのLensはさまざまなアプリケーションやウェブサービスと連携することで、多種多様な「検索結果」を提供してくれます。

さらに比較的シンプルなコードで機能追加をできるため、今回紹介できなかったいろいろなLensが登場しています。

例えばクリップボードマネージャであるDiodonは、プラグイン機能としてLens対応を提供しています。Evolutionをインストールしているなら、そのカレンダー機能と連携するLensも存在します。

まだパッケージとしては提供されていないものの、辞書機能を提供するDictionary Lensや、連絡先を検索するContact Lensを開発している人もいます。最近だとちょっと扱いが難しい変り種のLensとして、紳士な大人向けのAdult Lensなども登場してきました。

現在開発中のPrecise Pangolinでは、これらのLens/Scopeをできるだけたくさん、ソフトウェアセンターからインストールできるよう、まとめる計画も立ち上がっています

ちなみに、日本のウェブサービスに対応したLensはまだないに等しい状態です。冬休みの課題として、Lensを作ってみるのはいかがでしょうか?

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