Ubuntu Weekly Recipe

第342回デスクトップ環境Cinnamonを使用する

今回はUbuntu 14.04でCinnamonを使用する方法を紹介します。

Cinnamon

CinnamonはUbuntuの派生Linuxディストリビューションである、Linux Mintで採用されているデスクトップ環境です。UbuntuでCinnamonを使用するためには、長らく外部リポジトリを追加する必要がありました。しかし、Debianの開発版(不安定版)でCinnamon関連パッケージが利用できるようになり、それに伴ってUbuntu 14.10でもおおむね使用できるようになっています[1]⁠。

実のところ第335回第338回で取り上げたMATEと同じなのですが、CinnamonはMATEとは違ってフレーバーが用意されているようには見えません。そこで筆者が勉強を兼ねてCinnamonを14.04用にビルドしてみました[2]⁠。

Cinnamonの魅力は伝統的なデスクトップ、すなわちWindows 7以前と似たユーザーインターフェースであるところだと言われていますし、それを否定するものでもありませんが、実はかなり強力にカスタマイズができ、自分好みに仕立てることができる、というのがそれを上回る魅力だと感じています。というわけで、今回はその方法を紹介します。

インストールその1:Minimal CD

インストールは、今回も第335回と同じくMinimal CDから行います。第335回ではあまり詳しく紹介しなかったので、今回は少々詳しく紹介します。

まずは前述のMinimal CDに関するページから14.04のisoイメージをダウンロードしてください。32bitと64bitがあります。今回は64bitでインストールしましたが、32bitだからといって変わるところはないです。また、64bitではUEFI非対応なのも注意すべきところですが、今回はVirtualBoxを使用するので問題とはしません。

isoイメージをダウンロードし、仮想マシンにインストールする場合は新規にインストール用ゲストOSの設定を行ってください。メモリは2GB、HDD[3]の容量は12GBを割り当てます。もちろんisoイメージから起動する設定も忘れずに行ってください。VirutalBoxの場合は[設定][ストレージ]からダウンロードしたisoイメージを指定します[4]⁠。

isoイメージからの起動に成功すると、図1のようになります。このままEnterキーを押して継続してください。

ハマりどころとしては、言語の選択で日本語を選択するところです図2⁠。Jキーを押すと⁠Japanese⁠のところまで飛ぶので、覚えておくと便利でしょう。ソフトウェアの選択は、⁠OpenSSH server][印刷サーバ]にチェックを入れます図3⁠。Tabキーを押すと[続ける]に飛びます。あとは特に困るところはないと思います。

図1 Minimal CDが起動したところ
図1 Minimal CDが起動したところ
図2 ⁠Japanese]を選択する。Jキーを押すのがポイント
図2 [Japanese]を選択する。Jキーを押すのがポイント
図3 ⁠ソフトウェアの選択]では[OpenSSH server][印刷サーバ]にチェックを入れる
図3 [ソフトウェアの選択]では[OpenSSH server]と[印刷サーバ]にチェックを入れる

インストールその2:パッケージのインストール

インストール完了後、再起動してHDDから起動します。仮想マシンの場合、あるいは実機でもCD-RないしDVD-Rから起動した場合は、事前に取り出してください。Ubuntuのインストーラー(Ubiquity)と違って、再起動前にCDを排出してくれることはありませんでした。

起動後、ユーザー名とパスワードを入力してログインしてください。あるいは、すでにSSHサーバーが動作しているのでリモートからログインしても良いでしょう。印刷サーバーをインストールするとavahiもインストールされるので、IPアドレスがわからなくてもホスト名+localでのログインも可能です。ただし仮想マシンの場合はネットワークがブリッジ接続になっている必要があります。

続いてパッケージのインストールを行います。まずは最低限必要な、X関連パッケージと日本語フォントとインプットメソッドからです。

$ sudo apt-get install xserver-xorg xorg fonts-takao fcitx fcitx-mozc

fcitxとfcitx-mozcの代わりにibusとibus-mozcでもかまいません。

次にディスプレイマネージャーをインストールします。今回はlightdmにします。

$ sudo apt-get install lightdm lightdm-gtk-greeter --no-install-recommends

no-install-recommendsオプションを付けて、必要最低限なパッケージだけインストールしています。

PPAの登録を簡単に行うため、software-properties-commonパッケージをインストールします。

$ sudo apt-get install software-properties-common

CinnamonのPPAを登録します。

$ sudo add-apt-repository ppa:ikuya-fruitsbasket/cinnamon

VirtualBoxの仮想マシンとして動作している場合は、次のPPAも登録してください。リポジトリにあるVirtualBoxのGuest Additionsは、古すぎてCinnamonがソフトウェアレンダリングになってしまいます。

$ sudo add-apt-repository ppa:ikuya-fruitsbasket/virtualbox

リポジトリのアップデートをします。

$ sudo apt-get update

Cinnamonをインストールします。

$ sudo apt-get install cinnamon-desktop-environment

これでCinnamon関連のパッケージをすべてインストールします。必要最低限にしたい場合はcinnamon-coreをインストールしてください。また、更に減らしたい場合はno-install-recommendsオプションを付けることも検討して欲しいですが、正しく動作するかの検証はしていません。

VirtualBoxの仮想マシンとして動作している場合は、Guest Additionsもインストールします。

$ sudo apt-get install virtualbox-guest-x11

共有フォルダー機能を使用する場合は、ユーザーをグループに登録します。

$ sudo usermod -a -G vboxsf $USER

Cinnamonではネットワークの管理をNetwork Managerに任せたいので、/etc/network/interfacesファイルを変更します。

$ sudo editor /etc/network/interfaces

以下がinterfaceファイルの中身です。

# This file describes the network interfaces available on your system
# and how to activate them. For more information, see interfaces(5).

# The loopback network interface
auto lo
iface lo inet loopback

# The primary network interface
#auto eth0
#iface eth0 inet dhcp

このように、⁠auto eth0⁠⁠iface eth0 inet dhcp⁠をコメントアウトします。

ここまでできたら、一度再起動します。

Cinnamonの設定

再起動後はログイン画面(ligthdm)が起動し図4⁠、ログイン後はもちろんCinnamonが起動しています図5⁠。

図4 寂しいログイン画面が起動する
図4 寂しいログイン画面が起動する
図5 Debianの壁紙でちょっと驚く
図5 Debianの壁紙でちょっと驚く

テーマ(アイコン)

左下の[メニュー]をクリックするとメニューが表示されますが図6⁠、このアイコンはなんとかしたいところです。と言うわけでメニューの左上にあるドライバーとスパナのアイコンをクリックするとシステム設定が起動します。⁠テーマ]をクリックして[他の設定]タブを開き、⁠アイコン][Humanity]あるいは[Humanity-Dark]にします図7⁠。⁠オンラインでより詳しい情報を得る]タブから新しいテーマをダウンロードすることができますし、⁠インストール済]タブからはテーマの変更も可能です。今回は特に変更しませんでしたが、Windows XP風やWindows 7風のテーマもありました。

図6 Cinnamonのメニュー
図6 Cinnamonのメニュー
図7 ⁠アイコン][Humanity-Dark]にしたところ
図7 [アイコン]を[Humanity-Dark]にしたところ

壁紙

壁紙はデフォルトのDebianのものしかないため、どこからか入手するか、パッケージをインストールして追加する必要があります。今回は⁠ubuntu-wallpapers-trusty⁠パッケージをインストールしました。壁紙は/usr/share/backgrounds/にインストールされるので、壁紙を変更する場合はここを指定してください図8⁠。もちろんお好みの壁紙をダウンロードしても良いです。

図8 壁紙は/usr/share/backgrounds/に収録されている
図8 壁紙は/usr/share/backgrounds/に収録されている

アプレット

アプレットは画面下のバー[5]に表示するアイコンのことですが、これは任意に増減できます。設定ツールで[アプレット]を開いてください。当然いくつかのアプレットはデフォルトで設定されていますが、⁠オンラインでより詳しい情報を得る]タブを開くと、任意にインストールできます図9⁠。今回は一番人気の[Weather]アプレットを追加してみます。

図9 たくさんのアプレットがダウンロードできる
図9 たくさんのアプレットがダウンロードできる

左のチェックボックスにチェックを入れると[Install or update selected]ボタンが押せるようになるので、これをクリックします。あとは[インストール済]タブで[パネルに追加]をクリックして有効にしてください。設定画面を表示すると[WOEID]を入力するところがありますが、これが何なのかはわかりません。というわけで[Get WOEID]をクリックするとWebブラウザーが開き、WOEID検索ページが表示されます。ここでお住まいの地域を入力して[SEARCH]をクリックするとWOEIDが表示されるので図10⁠、これを入力します。これでアプレットに指定した地域の天気が表示されるようになりました図11⁠。

図10 WOEIDを検索したところ
図10 WOEIDを検索したところ
図11 大阪の天気が表示された
図11 大阪の天気が表示された

デスクレット

デスクレットはデスクトップに常駐する小さなアプリケーションです。これもシステム設定の[デスクレット]から任意に設定できます。方法は[アプレット]と同じく、⁠オンラインでより詳しい情報を得る]タブで選択してインストールし図12⁠、⁠インストール済]タブで有効にします。今回は一番人気の[AccuWeather Desklet]にしました。こちらは[WOEID]を入力しなくても天気を表示しましたが図13⁠、Weatherアプレットとは異なる結果を表示しました[6]図14⁠。

図12 ⁠デスクレット]もいろいろダウンロードできる
図12 [デスクレット]もいろいろダウンロードできる
図13 ⁠Location][OSAKA]と入力してみた
図13 [Location]に[OSAKA]と入力してみた
図14 大阪の天気が表示されるようになった
図14 大阪の天気が表示されるようになった

拡張機能

拡張機能はCinnamonの機能を拡張するものです。アプレットやデスクレットと比較すると数は少ないですが、それだけCinnamonの機能が豊富であるということなのでしょう。これもアプレットやデスクレットと同じくシステム設定の[拡張機能]を開き、⁠オンラインでより詳しい情報を得る]タブからインストールし、⁠インストール済]タブで有効にします。今回は[backgrounds]にしました図15⁠。指定したフォルダーにある壁紙を一定時間で切り替える拡張機能です。設定画面図16からフォルダーと切り替え時間を指定すれば動作します。ホットキーも使用するのであれば別のものに割り当てたほうが良いでしょう。

図15 ⁠拡張機能]もお手軽にダウンロードできる
図15 [拡張機能]もお手軽にダウンロードできる
図16 画像のあるフォルダーと、切り替え時間と、即座に切り替えるキーバインドを指定できる
図16 画像のあるフォルダーと、切り替え時間と、即座に切り替えるキーバインドを指定できる

ホットコーナー

システム設定で[ホットコーナー]の設定もできます図17⁠。その名のとおり4つ角にそれぞれ機能を割り当てることができるのですが、これの使い方がよくわかりませんでした。

図17 ホットコーナーの設定
図17 ホットコーナーの設定

しかし、調べてみるとデフォルトでは赤、すなわち機能が割り当たっていない状態です。⁠ホットコーナーアイコンを表示]にチェックを入れるとアイコンが表示されるので、これをクリックすれば割り当てた機能が動作するのでまだわかりやすいです。しかし正直なところ邪魔です。⁠Hover enabled]はチェックを入れても何かが変わるわけではありませんが、たとえば右下に割り当てた場合は右下の時計の近くでマウスの左ボタンをクリックする→そのまま右下に移動して四角を作る→左ボタンを離す、とすると割り当てた機能が動作しました。右上の場合は左下から右上にマウスを動かしました。これは使いこなせばとても便利のように思います。

デスクトップ

デスクトップには何もアイコンが表示されていませんが、システム設定の[デスクトップ]で表示するアイコンを選択できます図18⁠。

図18 デスクトップの設定。チェックを入れるとアイコンが表示される
図18 デスクトップの設定。チェックを入れるとアイコンが表示される

ワークスペース

ワークスペースはシステム設定に設定項目はありますが、どのように表示するのかはパッと見わかりません。調べてみると、Ctrl+Alt+上矢印キーでワークスペースの切り替えができました。

メニューのカスタマイズ

メニューの左側に縦に並んでいるアイコンをカスタマイズする方法もよくわからなかったのですが、調べてみるとこれは[お気に入り]を表示していて、たとえば上から2番めのアイコンはPidginですが、⁠インターネット][Pidgin インターネット・メッセンジャー]を右クリックすると[お気に入りから削除]という項目があります図19⁠。これをクリックすると削除されるので、代わりにFirefoxを[お気に入りに追加]すると良いように思いました。お気に入りの順番はアイコンのドラッグ&ドロップで変更できます。

図19 お気に入りに登録されているPidginには、⁠お気に入りから削除]がある
図19 お気に入りに登録されているPidginには、[お気に入りから削除]がある

ほかにもカスタマイズできることはありますので、興味があったら調査してみてください。

翻訳

Cinnamonの翻訳はLaunchpadで行われているようです。未訳も散見するので、挑戦してみてはいかがでしょうか。

注意

今回紹介したPPAは筆者が個人的な興味と勉強のために用意したものです。いつまでメンテナンスするかは未定で、おそらく16.04がリリースされるまで継続する、ということはないと思います。長期的にCinnamonを使用したい場合は、Ubuntu 14.10をインストールしてこのPPAを追加してください。14.10のMinimal CDがリリースされれば、同じ方法で行けるはずです。15.04からはPPAを追加しなくても大丈夫になるはずなので、以後半年ごとのアップデートを行ってください。

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