今回はLibreOffice 5.2 CalcとMicrosoft Excel 2016の関数について、対応しているもの、していないものなどを詳細に確認していきます。

関数名の互換率は95%

LibreOffice 5.2 Calc（以下Calc）と、Microsoft Excel 2016（以下Excel）で、一致した関数のパーセントを計算すると、95%と出ました。厳密には関数名が同じでも互換性がない（使い方が異なる）ものもありますし、関数名が違っていても互換性がある（使い方が同じ）ものもありますので、実際はもう少し高い比率になることでしょう。

ちなみに5.1と比較すると93%、Apache OpenOffice 4.1.2（以下AOO）と比較すると79%でした。

なおExcelは同じ2016でも、市販のバージョンとサブスクリプションのバージョンで対応している関数の数が違うそうです。詳しくはMicrosoftのOffice Blogsをご覧ください。今回はこの6つの関数も含んで検証しています。結論から述べると、Calcはこのうちすべての関数に対応しています。ということは、この点においては市販のExcelよりも互換性が高いという奇妙なことになっています。そして実際に検証していくと奇妙なことはほかにもあったりします。具体的に見ていきましょう。

今回使用するLibreOffice

今回紹介するLibreOfficeは、第434回で取り上げたPPAからインストールしています。執筆段階で5.2.1としてリリースされたバージョンです。LibreOfficeはリリース後に関数を追加することはないので、5.2.xであれば同じであるはずです。

Excel関数の参考書籍

筆者は特にCalcに関する専門的な知識があるわけではなく、また最新のExcelも所有していないので[1]⁠、書籍を参考にしました。『今すぐ使えるかんたんmini Excel 全関数事典 ［⁠Excel 2016/2013/2010/2007対応版⁠］⁠』とその前の版の『今すぐ使えるかんたんmini Excel 関数小事典 【⁠Excel 2010/2007/2003 /2002/2000 対応⁠】⁠』です。いずれも技術評論社刊で、オススメです。

Excelの関数は全部で476個としていますが、これは前者の表紙に書いてある個数を参考にしました。

関数の区切り

基本的なことではありますが、AOO（とその前身であるOpenOffice.org）では関数の区切りは";"でした。しかし、LibreOfficeでは","がデフォルトです。この文字は変更することもできます（図1⁠）⁠。

Excel 2010以降でCalcが対応している関数

AOOはExcel 2007の関数には概ね対応していることがわかりました。そこで、Excel 2010以降に追加された関数のうち、Calcでは対応していて、AOOでは対応していないものを次の表に挙げました。全部で79個ありました。LibreOfficeが活発に開発されていることがあらためてよくわかります。

Excelにあり、Calcにない関数

次に、Excelにあり、Calcでは対応していない関数を次の表に挙げました。23個ありました。対応バージョンが空の関数は、Excel 2007以前からExcelに備わっていることを示しています。

FORECASTなんとか関数は、関数名は違いますがExcel形式のファイルをインポート/エクスポートするとうまく扱ってくれるので、互換性の上では問題ありません。

こうして見ると、日本以外では対応していなくて困る関数はほぼないと言っていいのが現状です。DATESTRING関数（西暦和暦変換）はとても便利そうです。NUMBERSTRING関数（漢数字変換）とPHONETIC関数（ふりがなを振る）は実装は難しそうですが、YEN関数（円マークをつけて整形する）はそうでもなさそうなので、このあたりは開発を始める狙い目かもしれません。

List of Spreadsheet Functions Currently Not Supported in LOも参考になります。もっとも、こちらはApple Numbersの情報が多いのですが。

Excel 2013でサポートされたCalcの関数

今回調査していて、AOOで対応しているExcel 2013の関数があることに気づきました。おそらくですがCalcとの互換性を高めるために実装されたのだと思います。少し調べた限りでは使い方も同じでした。AOOはExcel 2010と2016で新しく追加された関数には全く対応していませんが、2013で新しく追加された関数には対応しているという奇妙なことになっています。

Calc独自の関数

最後に、Calc独自の関数はどのくらいあるのかを調査しました。結果は、次の表のとおりです（FORECASTなんとか関数に関しては説明を省略しています⁠）⁠。

こうして見るとExcelとの互換性を確保するための関数がほとんどで、あとは過去のCalcとの互換性のために残っているものが多く、本当に独自のものはあまりないことに気づきます。可能な限りメニューやヘルプやソースコードを確認して正確を期したつもりですが、誤りや抜けがあるかもしれません。