Ubuntu Weekly Recipe

第581回 Debian 10 "Buster"の紹介

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去る2019年7月6日に,Ubuntuの母であるDebianの新しいリリースであるDebian 10(コードネーム"Buster")がリリースされました。今回のUbuntu Weekly Recipeでは,このDebian 10 "Buster"について紹介します。

UbuntuとDebianの関係

Debian Project「フリーなオペレーティングシステムを作成するために連携した個人の集団」であり,OSとしてのDebianはその成果物です。Debianは開発初期から今まで一貫してフリーであることを重視しており,Debianとしてリリースされているパッケージ群はライセンスが明瞭であることで知られています。aptによるパッケージ群の扱いやすさも相まって,Debianは多くの派生ディストリビューションの母体となっています※1⁠。

※1
Linuxディストリビューションの系譜についてはFabioLolix/LinuxTimelineが作成している画像が参考になるでしょう。本記事執筆時点ではversion19.04がWikipediaにアップロードされています。

本連載のタイトルにもなっているUbuntuもDebianをベースにした派生ディストリビューションの一つです。Ubuntuは,Debianの開発者であったMark Shuttleworthが「誰にでも使いやすい最新かつ安定したOSを提供すること」を目指して作成したLinuxディストリビューションです。UbuntuはDebianから分離独立したわけではなく,母体であるDebianと成果を交換できる開発フローを用意しており,Ubuntuによる変更点はDebianのソースパッケージに対するパッチとして還元されています※2⁠。Ubuntu側は半年のリリースの度にDebianの最新開発版のパッケージリポジトリをリベースし,必要に応じて独自の変更点を適用しなおし,バイナリパッケージを再構築しています。

※2
あくまで「原則的には」であって,当然ながらディストリビュータ独自の開発部分といった例外もあります。

以上のことから,Debianの安定版の状況を知ることはUbuntuを上手く使う・次期リリースに向けた開発状況を理解するためにも有用です。

Debian 10: "Buster"

冒頭で触れたとおり,Debian 10 "Buster"は,2019年7月6日にリリースされました。前安定版Debian 9 "Stretch"のリリースが2017年6月17日でしたので,おおよそ2年ぶりのリリースとなります。Debian Projectではリリース作業のうち「フリーズ」という期間※3を2年毎に設けているため,安定版のリリースも約2年ごとに行なわれています。

※3
新規パッケージのアップロードや既存パッケージのバージョンアップを凍結し,開発版のバグ潰しに専念する期間のことです。

Debian 3.0のリリース(2002年7月19日)からDebian 3.1のリリース(2005年6月6日)まで約3年の月日を費したためか,もう15年程前の話なのに「Debianのリリースは遅い」という声が聞こえてきたりするのはなかなか寂しい限りなので,もう一度書いておきます※4⁠。

Debian 10 "Buster"はおおよそ2年ぶりのリリースとなります。

※4
大事なことなので二回言及しました。

Debianのコードネームは映画「Toy Story」のキャラクターからつけられており,Debian 10のコードネーム"Buster"はアンディの飼い犬です。なお,次期バージョンのコードネームは"Bullseye"であることが決まっていたりします。

サポートするアーキテクチャは,以下の10種類です。

  • 32bit PC: i386
  • 64bit PC: amd64
  • 64bit ARM: arm64
  • ARM EABI: armel
  • ARMv7: armhf
  • MIPS big endian: mips
  • MIPS little endian: mipsel
  • 64bit MIPS little endian: mips64el
  • 64bit PowerPC little endian: ppc64el
  • IBM System z: s390x

収録ソフトウェア等のバージョンは以下のとおりです。

パッケージ(アルファベット順) 10(buster)でのバージョン 9(stretch)でのバージョン
Apache 2.4.38 2.4.25
Nginx 1.14 1.10
Lighttpd 1.4.53 1.4.45
BIND DNSサーバ 9.11 9.10
OpenSSH 7.9p1 7.4p1
Exim(標準の電子メールサーバ) 4.92 4.89
Dovecot MTA 2.3.4 2.2.27
Postfix MTA 3.3.2 3.1.8
MariaDB 10.3 10.1
PostgreSQL 11 9.6
Samba 4.9 4.5
Linuxカーネルイメージ 4.19シリーズ 4.9シリーズ
GNU Cライブラリ 2.28 2.24
Cryptsetup 2.1 1.7
GNU Compiler Collection(デフォルトのコンパイラ) 7.4および8.3 6.3
LLVM/Clangツールチェイン 6.0.1および7.0.1(デフォルト) 3.7
OpenJDK 11 8
PHP 7.3 7.0
Perl 5.28 5.24
Python 3 3.7.3 3.5.3
Rustc 1.34 -
Emacs 26.1 24.5および25.1
Vim 8.1 8.0
GnuPG 2.2 2.1
GIMP 2.10.8 2.8.18
Inkscape 0.92.4 0.92.1
GNOME3 3.30 3.22
KDE Plasma 5.14 5.8
Cinnamon 3.8 3.2
MATE 1.20 1.16
Xfce 4.12 4.12
LXDE 0.99.2 0.99.0
LXQt 0.14 0.11

収録パッケージは前バージョンの頃から,新規に13,370増えて57,703となっています。一方で,前バージョンに収録されていたパッケージの約13%にあたる7,278以上のパッケージが,様々な理由(上流での開発中止やセキュリティ対応不足など)でディストリビューションから取り除かれました. いくつかのソフトウェアは現在upstreamが提供している最新版にくらべて1世代古い版となっています。この理由はDebianのFreezeのタイミングとupstreamのリリースのタイミングがズレてしまったからです。これらソフトウェアや悲しいことにリリース作業に間に合わなかったいくつかのパッケージは,今後backportsにて提供される予定です。

また,上記の表には載せませんでしたが,Python 2.x系列としてPython 2.7が収録されています。コマンドとしてpythonを実行するとpython 2.7が起動しますので,python3.x系列を利用したい場合には明示的にpython3を実行してください。ただし,今後のリリースにおいてはPython2.x系列はすべて削除される予定ですので,なるべく早めにPython3.x系列へ移行しておくのが良いでしょう。

著者プロフィール

佐々木洋平(ささきようへい)

Debian JP Project所属。毎月1回のペースで関西Debian勉強会を開催中(ネタも募集しております)。本業は大学教員。学内の計算機ネットワーク環境がすべてDebianとUbuntuであったらどんなに楽だろう,と考えつつ日々過ごしている。