今回は第737回に引き続き、VirtualBox 7.0の新機能を中心に雑多な変更点を見ていくことにします。
諸注意
第737回ではVirtualBox 7.0の新機能である自動インストールについて、便利な場面とそうではない場面を紹介しました。今回は他にもたくさんある新機能や改善点について気になったものを紹介していきます。
第737回の注意点や検証環境は今回もそっくり当てはまるので、必ず事前に目を通してください。特に強調しておきますが、今の段階でVirtualBox 6.1から7.0へのアップデートを推奨するものではありません。新規の場合は7.0から使い始めるのもいいでしょう。
Extension PackなしでもUSB 2.0/3.0サポート
VirtualBox 6.1までは、仮想マシンで使用できるUSBは1.1まででした。Extension Pack(機能拡張パックあるいは機能拡張パッケージ)をインストールすると2.0と3.0に対応していました。
しかしこの7.0からは、Extension Packをインストールしなくても2.0/3.0に対応するようになりました(図1)。ということは、2.0/3.0サポート目当てでExtension Packをインストールしていた場合は今後不要になります。
いい機会なので、USB接続のSSDをホストOSと仮想マシンでベンチマークを取ってみました。同じテストを3回行い、3回目の結果です。図2がホストOS、図3が仮想マシンです。読み込みはちょうど半分、書き込みは1/3にも満たないという結果ではあるものの、用途にもよりますがまずまずの速度といえます。
アクティビティ
Changelogには「topやリソースモニターみたいなユーティリティ」と紹介されていますが、ゲストOSで使用しているリソースを表示するツールが追加されました。
ツールのリストに「Activity」があるので、ここをクリックすると表示されます(図4、図5)。おそらくですが同時に起動する仮想マシンが数個のような用途ではなく、2桁とかを同時に動作させた場合に便利な機能ではないでしょうか。
表示されている項目は多岐に渡るため、かなり横に長くなっています。表示できる項目は「カラム」(Columns)でカスタマイズできますので、適宜減らしてください。
通知機能の改善
7.0を使うとすぐに気づきますが、これまでダイアログやバルーンで表示されていた通知が「通知センター」(Notification Center)としてまとめられました(図6)。これまで複数個の通知が出て読めないうちに消えてしまったこともありましたが、これで読み落としはなくなります。通知センターを開くアイコンは仮想マシンのウィンドウ内に表示されますが、Ubuntuのように上部はよく使うけど下部はそうでもないという場合はこのアイコンを下に移動でき、あまり邪魔になりません(図7)。
通知の表示順を変更したり、終了した通知を一度に削除もできます。
Waylandセッションでも解像度が変更可能に
仮想マシンがWaylandセッションの場合、「表示」-「仮想スクリーン1」(スクリーンが1つしかない場合)で解像度を変更できませんでしたが、この7.0からは変更できるようになりました(図8)。ここからの解像度変更するためにわざわざX.Orgセッションに切り替えていた人(筆者とか)には朗報です。
もちろんGuest Additionsのインストールは必要です。ちなみにFedoraのVirtualBoxでは独自に変更を加えて6.1でも同様のことができていました。
ファイルマネージャーのデザイン変更
あまり使っている人は多くなさそうですが、「仮想マシン」-「ファイルマネージャー」でファイルマネージャーが起動し、Guest Additionsをインストールしている場合はホストOSと仮想マシンでファイルのやり取りができます。共有フォルダーを使う必要もなければ、いまいち安定しないドラッグ&ドロップを使用しなくていいので、わりと手軽にファイルやフォルダーのコピーができて便利です。
そんなファイルマネージャーですが、少しだけデザインが変更されました。図9が6.1の、図10が7.0のファイルマネージャーです。コンパクトなデザインになっているところを見ると、6.1のは少々大きすぎたということなのでしょうか。
グループに移動
VirtualBoxには仮想マシンをグループにまとめる機能があります。おおむねフォルダーだと思って間違いなく、新規に作成されるフォルダーに仮想マシンのファイルやフォルダー一式が移動するため、実態もフォルダーです。
それはさておき、これまでグループへの移動はVirtualBoxマネージャー上でのドラッグ&ドロップが基本で、狙ったところにドロップできない、不意に意図しない新しいグループを作成してしまうようなことがしばしば起こり、ストレスを感じる場面も少なくありませんでした。
7.0からは、仮想マシンを右クリックしたときに「Move to Group」(グループに移動)が追加され、任意のグループに簡単に移動できるようになりました。
デフォルトの表示状態
「設定」-「ユーザーインターフェース」で「Visual State」(表示状態)を設定できるようになりました(図11)。選択できるのは「Normal (Window)」(通常)、「Full-Screen」(フルスクリーン)、「Seamless」(シームレス)、「Scaled」(スケール)の4つで、VirtualBoxの表示機能を網羅しています。起動時点でフルスクリーンにしたいなどのニーズについてはよくわかりませんが、いちいち切り替える必要がなくなったのは便利でしょう。
デフォルトの表示倍率
デフォルトの表示状態だけではなく、「設定」-「ディスプレイ」で表示倍率(Scale Factor)も設定できるようになりました(図12)。解像度の高いディスプレイで昔のOSを起動すると、ウィンドウが小さすぎて文字が読めないようなこともありえますが、これまでは起動後に「表示」-「仮想スクリーン1」で設定するしかなかったので、便利になりました。なお表示倍率はGuest Additionsがインストールされていなくても変更できます。
Extension Packの管理
これまでExtension Packの管理は「環境設定」-「機能拡張」から行っていましたが、図4にもあるように「ツール」のリストに移動しました(図13)。
いちいち環境設定を開く必要がなくなったので手間はいかばかりか削減されました。とはいえExtension Packはかなりゆるいとはいえプロプライエタリなライセンスであり、またVirtualBoxに合わせてパージョンアップをしなくてはいけないため、手間がかかります。インストールしなくて済むのであれば、それに越したことはありません。