Ubuntu Weekly Recipe

第805回Ubnuntu 23.10時点でのSnapパッケージ最新事情

今回はUbuntu 24.04 LTSのリリースまでに知っておきたい最新のSnapパッケージ事情を、23.10をベースにして紹介します。

Snapパッケージ最新事情

なんであれ最新事情を追いかけるというのは難しいものですが、Snapパッケージのように個々のパッケージの事情からSnapそのものの更新情報、さらにUbuntuの開発動向と押さえるべきことが多岐にわたる場合はさらに難しくなります。

そのため、あくまで筆者が理解している出来事であるという注釈をつけ、きたる24.04 LTSリリース前に知っておくといいこととして、アプリセンターの機能やFirefox・Steam・Visual Studio CodeそれぞれのSnap版を取り上げます。

アプリセンターの機能

第783回でも紹介したように、23.10からはパッケージ管理ツールが「アプリセンター」になりました。

図1が起動直後のアプリセンターです。ジャンルは左側に、個別のパッケージは右側に表示されます。ジャンルからインストールできるのはすべてSnapパッケージです。

図1 アプリセンターの起動直後
図1

Debianパッケージをインストールしたい場合は、⁠アプリを検索」欄に検索キーワードを入力します。検索結果において「Filter by」をクリックすると、⁠Snapパッケージ」「Debianパッケージ」が選択できまます。後者をクリックするとDebianパッケージが表示される仕組みになっています(図2⁠⁠。

図2 ⁠Filter by」でDeibanパッケージを表示する
図2

おそらくこのユーザーインターフェースは24.04 LTSのアプリセンターでも変わりません。23.10を使用していない場合は頭の片隅に入れておくと戸惑わなくていいのではないでしょうか。

また左下の「管理」の横に数字が表示される場合があります。図3の例ではSnapパッケージに1つのアップデートがあることを示しています。特にFirefoxが顕著ですが、速やかにアップデートを適用するのが望ましいので、ここでアップデートをチェックするといいでしょう。

図3 左下の数字はアップデートが必要なSnapパッケージの数。ちなみにこれだけ24.04 LTS開発版で取得
図3

Snap版Firefoxの最新事情

そんなFirefoxも特にSnapのシステム自体に手を入れて、22.04 LTSの頃と比較するとずいぶんと使いやすくなりました。最近だと第783回で紹介したWaylandネイティブ化は目立つところでしょう。

地味なところでは、Firefoxから共有フォルダーへアクセスできるようになりました。

筆者が確認したところでは、事前にユーザー認証を通過しておく必要がありますが、NASサーバーにアクセスができています(図4⁠⁠。

図4 Firefoxから筆者のNASサーバーにアクセスできている
図4

とはいえ、正直なところ共有フォルダーへのアクセス機能の使いどころはよくわかりません。

メモ: より使いどころがありそうなLibreOfficeはこの機能に未対応のままです。共有フォルダーにアクセスできないオフィススイートの使いどころというのも率直なところよくわかりません。Flatpak版LibreOfficeにはこのような制限はないため、筆者はこちらを利用しています。

Snap版Firefoxに改善が見られるとはいえ、それでも何らかの事情で使いたくないという場合は、4 reasons to try Mozilla’s new Firefox Linux package for Ubuntu and Debian derivativesを参考に、メリットを理解した上で公式パッケージをインストールする手があります。

Firefoxの公式パッケージはリポジトリを登録した上で行います。24.04 LTSからはsources.listファイルの書き方がdeb822方式に変わるため注意が必要です。詳細は24.04 LTSのリリースが近づいたら連載記事で取り上げる予定です。

なお、もう2年近く前の記事ですが、第710回で解説したSnap版Firefoxを使用しないでやり過ごす方法もいまだ有効な手段です。

Snap版Steamのクオリティは?

アプリセンターはさておき、UbuntuソフトウェアではSnap版Steamの宣伝をよく見かけたものです(図5⁠⁠。最近はあまり見かけませんが、後述する出来事がその理由のように思われます。

図5 よく見かけたときに取得したUbuntuソフトウェアのスクリーンショット
図5

それはさておき、ではSnap版Steamで実際にゲームができるのでしょうか。もともとUbuntuというかLinuxで動作しているゲームであれば特に問題ありません。しかしWindows用のゲームがLinuxでも遊べるのがSteamの特徴であり、この特長を享受しようとすると問題が発覚します。

SteamではProtonという互換レイヤーを使用してDirectXのAPIをVulkanのAPIに変換しています。

Snap版SteamをインストールしてWindows用のゲームを起動してみますが、NVIDIAのプロプライエタリなドライバーを使用している場合は起動しません。libEGL_nvidia.so.0が見つからないというエラーが繰り返し出ています(図6⁠⁠。

図6 ⁠Dependencies of libEGL_nvidia.so.0 not found」というエラーが繰り返し出ている
図6

またバグ報告もされています。ゲームではDirectXが初期化できないというエラーが出ています(図7⁠⁠。

図7 とあるゲームで表示されたエラー
図7

あくまで筆者が試した限りですが、AMD RadeonとIntel Arcを追加のドライバーなしで使用した場合はゲームがプレイできます。

以前試したときはどのGPUでも起動しなかったので、状況は改善しているとはいえますが、シェアが高いNVIDIAのGPUだと非対応というのは、なかなかに厳しい状況です。もちろんRadeonやArcを買えば済む話ではあるのですが。

少し前にValve(Steamを提供する会社)にとってSnap版Steamは頭痛の種だなんてニュースが出たからか、Snap版Steamの宣伝をあまり見かけなくなりました。この件以外にもさまざまな報告が、本来無関係なValveに向かっており、それを迷惑に思っているのでしょう。

Steamはたくさんのライブラリが必要なアプリケーションであり、1つインストールするだけでいいSnap版は魅力的です。ただ問題が多いことも事実で、第627回で紹介したようにコンテナに閉じ込めるなど他の方法も検討したほうがいいでしょう。

Snap版Visual Studio Codeで日本語入力

Snap版Visual Studio Code(以下VS Code)は日本語入力ができない、正確にはインプットメソッドが起動しないので使用するのを避けるべきである、と長らくいわれてきました。これは以前の話であり、今は入力できるようになっています。しかし図7のようにプレエディット(確定前文字列)の扱いには問題があります。

図8 日本語の入力自体はできるが、プレエディットが左下に表示される
図8

最近は少なくなりましたが、システムにインストールされているプログラムを使用する拡張機能も少なからずあり、そういったものはSnap版VS Codeでは対応できません。

そう考えると、やはりオフィシャルパッケージ版を使うのがベストであるという結論に違いはなさそうです。

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