Ubuntu Weekly Recipe

第882回Ubuntu 25.10の変更点

今回は10月9日にリリースされる予定のUbuntu 25.10の特徴的な変更点をお知らせします。

Ubuntu 25.10 “Questing Quokka”

Ubuntu 25.10のコードネームは「Questing Quokka」で、⁠探求するクオッカ」という意味です図1⁠。Ubuntu Weekly Topics 4月25日号によると、埼玉県こども動物自然公園でクオッカを生育しているとのことです。Ubuntuのマスコットキャラが日本で見られる機会があるのは稀なので、これを期に見に行くのもいいかもしれません。もっとも、そもそも架空の動物であって世界のどこにも存在していないこともよくあるのですが。

図1 Ubuntu 25.10のデフォルトデスクトップ

Ubuntu Weekly Topicsの読者であれば、25.10はかなりアグレッシブな変更があることに気づいていることでしょう。全部は難しいのですが、一部の特徴的な変更をかいつまんでお知らせします。

リリースノート

25.10をインストールする前に、必ずリリースノートに目を通してください。リリースノートはすでに公開されていますが、日本語訳などの詳細な情報はリリース後に公開される(予定の)Ubuntu Weekly Topicsに掲載されます。

sudoとcoreutilsのRust化

Ubuntu Weekly Topics 9月5日号9月12日号で既報のとおり、sudoパッケージとcoreutilsパッケージがRustで再実装されたものに置き換えられています。

sudoとcoreutils、ともに既存の実装とそっくり同じように動いてくれるのが理想的でありますが、現実的にはなかなか難しく、VirtualBoxのGuest Additionsがインストールできませんでした図2⁠。あくまで本記事の執筆中のことであり、現在は修正されている可能性はあります。

図2 MD5のチェックサムに失敗してGuest Additionsが実行できない

詳細な解説は割愛しますが、lp:2125535としてバグ報告されていました。

このように、今まで動作していたシェルスクリプトが動作しなくなるということは充分に考えられることなので、26.04 LTSのリリースを前にこの25.10で動作確認を行い、不具合を見つけた場合は速やかに報告するのがいいのではないでしょうか。

カーネル6.17

こちらはUbuntu Weekly Topics 8月15日号で既報のとおり、Ubuntu 25.10のカーネルフリーズ後にリリースされた6.17を採用するという初の試みが行われています。

ユーザーが気にすることはあまり多くないのですが、カーネルモジュールをビルドして使用しているような場合には、問題となる可能性があります。そのような場合には、25.10の新規インストールやアップデートを少し延期することになるでしょう。

インストーラー

Ubuntu Weekly Topics 8月1日号で既報ですが、25.10ではFull Disk Encryption(ハードウェアベースのディスク全体暗号化)が、少なくともVirtualBoxで試す限りでは何ら問題なく使用できるところまで品質が向上しています。

重要なのは(WindowsのBitlockerと同じく)リカバリーキーを大切に保存しておくことです図3⁠。

図3 リカバリーキーを保存するところ。⁠どこか安全なところにリカバリーキーを保存します」「どこか安全なところにリカバリーキーを保存しました」が正しい(修正済)

ただしリカバリーキーの入力が求められることがあるというバグを手元では確認しています図4⁠。

図4 TPMにリカバリーキーを保存していても起動時に尋ねられることがある

X.Orgセッション

Ubuntu Weelky Topics 6月13日号で既報のとおり、UbuntuではX.Orgセッションが選択できなくなっています。別パッケージに分離されたということもなく、選択肢が消滅しています。

もしX.Orgセッションが必要であれば、フレーバーを使用してください。XubuntuUbuntu Cinnamonあたりがお勧めです。

25.10 = GNOME 49

25.10のGNOMEはおおむねGNOME 49になっています。いつもの表を見ていきましょう。

バージョン コンポーネント(パッケージ名)
3.36.x gnome-menus
3.41.x gcr
3.54.x gnome-online-accounts
42.x yelp
43.x gnome-power-manager
45.x gnome-logs
46.x gnome-disk-utility
47.x gnome-bluetooth-3-common, seahorse
48.x qbaobab, gnome-calculator, gnome-characters, gnome-clocks, gnome-font-viewer, gnome-keyring, gnome-system-monitor, gnome-user-docs, gnome-text-editor, papers, tecla
49.x adwaita-icon-theme, gdm3, gnome-control-center, gnome-initial-setup, gnome-remote-desktop, gnome-session-bin, gnome-settings-daemon, gnome-shell, loupe, mutter-common, nautilus, orca, ptyxis, ubuntu-session

今回はアップデートしていないアプリケーションが多いようです。

新顔は端末アプリの「ターミナル」⁠パッケージ名はptyxis⁠⁠、画像ビューアーの「画像ビューアー」⁠パッケージ名はloupe)です図5図6⁠。

図5 ⁠ターミナル」のスクリーンショット
図6「画像ビューアー」のスクリーンショット

一方、端末アプリの「端末」⁠パッケージ名はgnome-terminal⁠⁠、画像ビューアーの「画像ビューアー」⁠パッケージ名はeog)がそれぞれデフォルトから外されています。いずれもUbuntuの最初のリリースである4.10にはインストールされていた名門でした。

Ubuntuに影響があるGNOME 49の変更点はあまり多くはないのですが、新たに翻訳されたところが多数見受けられます。新しい翻訳者にこの場を借りて御礼を申し上げます。

サーバーのパッケージ

Ubuntu Weekly Topics 6月27日号で既報ですが、Ubuntu Serverにインストールされるパッケージも大幅に見直されています。

byobu、screen、wgetパッケージがインストールされなくなり、curlパッケージにはwgetと似たふるまいのwcurlが追加されています。

またサーバーだけではなくデスクトップにも影響していますが、NTPサーバーとしてChronyがインストールされるようになっています。時計が合わなくなったらsystemd-timesyncdを再起動するという手が使えなくなっています。詳細はUbuntu Weelky Topics 5月30日号をご覧ください。

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