今回は古いCPUでUbuntuを動作させ、現在のCPUと比較してどの程度の速度で動作するのかを検証します。
Windows 10のサポート終了
Windows 10のサポートが10月14日で終了しました。正確には10月の
ただし、1年間のサポート延長が可能な拡張セキュリティ更新
今更述べるまでもなく、Windows 11は動作要件が厳しめで、Windows 10からアップグレードできないPCがたくさん排出されることになりました。
ではWindowsではないOSにしてみましょう……ということで、本連載ではUbuntuになるわけですが、そもそも、そんな古いPCでUbuntuが快適に動作するのかが気になります。
Ubuntuが快適に動作するかどうかを定量的に計測するのは難しいので、最近のPCと比較してどの程度の速度が出ているのかをベンチマークで計測することとします。
比較するCPU
とすると、次に考えるのは、どのCPUと比較するべきかということです。筆者宅にもいくつかWindows 11の基準に満たないCPUがありますが、果たしてそれを使用すればいいのか、それともギリギリ足切りに遭ってしまった第7世代のCore iシリーズを入手すればいいのか、あるいはもっと他に選択肢があるのか、なかなかに悩みどころです。
そこで思い出すのはAMDのSocket AM4です。最初に販売されたのが2016年で、現在はより新しいSocket AM5に移行しているものの、今年に入ってもまだSocket AM4対応CPUが新規に販売されている、現役のプラットフォームです。
せっかくなのでSocket AM4の初期に販売されたCPUと、最新かつスペックのよく似たCPUを対比させるのがわかりやすいでしょう。
というわけで、買ってしまいました。A12-9800Eを
国内の業者に発注したものの、中国から送られてきたので、そういう業者なのでしょう。ちなみに価格は3990円で、別途送料が1500円かかりました。
一方、スペックが似たCPUとなると、Ryzen 3 5300Gが適任でしょう。こちらは自宅に2つほどあるので、新規に購入はしていません。
Intelはというと、Core iシリーズではなく、N100と比較するのが妥当でしょう。本連載でも第761回や第785回などで登場しています。
使用するハードウェア
使用するハードウェアをまとめると、次のとおりです。
| 1台目 | 2台目 | 3台目 | |
|---|---|---|---|
| CPU | AMD A12-9800E | AMD Ryzen 3 5300G | Intel N100 |
| スレッド数 | 4コア4スレッド | 4コア8スレッド | 4コア4スレッド |
| TDP | 35W | 65W | 15W? |
| 発売年 | 2017年 | 2021年 | 2023年 |
| メモリー | SMD4-U16G48H-24R-D | SMD4-U16G48H-24R-D | KVR32N22S8/ |
| マザーボード | A320M-ITX | A320M-ITX | N100DC-ITX |
| UEFI バージョン | 5. |
10. |
2. |
| SSD | MZ-7PC128D/ |
MZ-7PC128D/ |
MZ-7PC128D/ |
| PCケース | BQ656S | BQ656S | BQ656S |
| 備考 | BIOSでSMTをオフに/TDPを35Wに |
A12-9800EはAMDのCPUにハイパースレッディング
マザーボードについて
Socket AM4のマザーボードについては注意が必要でしょう。
Socket AM4なので、対応CPUであればどのマザーボードに接続しても動作するのかというとそんなにシンプルでもありません。なにせチップセットが3世代あり、古いCPUは最新のチップセットでは対応せず、古いチップセットでも最新のCPUには対応するものその実力が活かせません。
そこで今回使用したのはA320M-ITXです。ただしこのマザーボード、UEFI BIOSのバージョンが7.
A320M-ITXはたまたま自宅にあった上、UEFI BIOSのバージョンが古いことは自明だったので、今回のような検証ができました。しかしマザーボードが手元にない状況でCPUと同時に入手するというのであれば、UEFI BIOSのバージョンが不明な場合がほとんどでしょうから、A12-9800Eが動作するかどうかは完全に未知数であり、ギャンブル要素が強くなります
またベンチマークは通常、一発でうまくいくことは少なく、数度繰り返すことになります。そのような場合、まずA12 9800Eのベンチマークを実行後、UEFI BIOSをアップデートしてRyzen 3 5300Gのベンチマークを実行となると不都合が生じます。よって今回、図2の方法で解決しました。
自宅に2枚あったわけではなく、1枚は某所から廃棄予定だったものをいただいてきました。
Ubuntuのインストール
インストールしたUbuntuのバージョンは24.
Ryzenより前の、AMDの内蔵グラフィック搭載PCにUbuntuをインストールする機会というのもなかなかないと思いますが
図3が
ベンチマーク
ようやく本題のベンチマークの結果を見ていきます。とはいえ、複数のベンチマークの結果を見て傾向にはほぼ違いはありませんでした。ベンチマークソフトは、いつものPhoronix Test Suiteです。
CPU
CPUのベンチマークは図4と図5の2つです。
こうして見るとA12-9800Eは遅いなと感じますが、あくまでCPUの使用率を100%にしてぶん回した結果で、普段遣いはまた違ったものとなります。それにしてもN100の速さには驚かされます。
GPU
GPUのベンチマークは図6と図7の2つです。
Vulkanですが、N100よりも速いのは少し驚きでした。それにしてもRyzen 3 5300Gの速度には驚かされます。CPUを変更しただけでこれだけ速くなります。
結論
ベンチマークの数値だけを見ると、A12-9800Eの実用性はあまりなさそうに思えます。しかし、気をつけておきたいのはA12-9800Eはリリース時点ですでに遅いCPUだったという事実です。この頃のAMDのCPUは本当に見るべきところがなく、ずっとAMDユーザーだった筆者も当時はIntelのCPUをメインで使用していました。
同年代のIntel Core iシリーズの6世代目
したがって、ギリギリWindows 11をサポートしないくらいのCPUであればN100と同程度の性能で、Ubuntuは充分な速度で動作する、といえます。ただしインストールするストレージがHDDだと遅く感じるので、そこはSSDにするのがいいでしょう。それだけで使用感に格段の差が出ます。