インターネットって何だろう?

第15回tracerouteで世界を知る研究

前回は、ネットワーク管理には書かせないtracert(traceroute)コマンドを紹介しましたが、今回はtracerouteと同様の処理を行うことでインターネット全体に関して知ろうとしている人々を紹介します。

さまざまな観測地点からのtraceroute

この話題は多少マニアックになってしまいますが、全体としては漠然と「tracerouteをいろいろなところからすると見えてくるものがありそうだ」という視点を持っていただければ幸いです。

多くの場合、自分のホストからtracerouteをする以上のことはしませんが、自分が居ない場所からtracerouteをしてみるという発想を持つと、それまで見えなかったものが見える場合もあります。

たとえば、どこかのASが不正な経路を流していることによって到達不能な場所が発生している場合、影響を受ける場所から計測しなければ影響が発生しているときの状況を知る事はできません。

また、ロードバランサやCDN(Contents Delivery Network)によって負荷分散が行われている環境では、ネットワークの位置によって見ているサーバが違う場合があります。そのようなときに、遠隔にいる知人だけがWebサーバの情報を見られないと言っている場合、その知人が見ているWebサーバは、自分が見ているものと異なっている場合があります。

その他、さまざまな組織のネットワークトポロジを第三者が調べようと思った時等に、多くの観測地点からtracerouteができると非常に便利です。

tracerouteデータの公開

世界中でのtracerouteデータを、CAIDA(The Cooperative Association for Internet Data Analysis)という組織が無償公開しています。データ収集は毎日行われており、ユーザは数ギガバイトのデータファイルをダウンロードすることでtraceroute結果を取得することができます。

iPlane
URL:http://iplane.cs.washington.edu/
Archipelago Measurement Infrastructure
URL:http://www.caida.org/projects/ark/

これらのデータは主に研究目的で利用されていますが、漠然と興味を持っていろいろ調べてみるのも面白いと思います。ただし、これらのデータは独自バイナリフォーマットで保存されているため、いろいろと調べるにはプログラミングができなくてはならないかも知れません。

実際にデータを扱って面白いことをするには、多少苦労してしまうかも知れません。個人的には、その苦労も楽しさのうちだと思っているので、たとえば、⁠奇特な方は)これを期にプログラミングを学んでみるというのも良いのかも知れません。

視覚化

CAIDAによるデータを利用して、インターネットトポロジの可視化を行っている研究がいろいろあります。

たとえば、CAIDAで公開されているサンプル画像は非常に奇麗です図1:ただし、サンプル画像そのものは現在のインターネットの状態を反映しているわけではありませんのでご注意ください⁠⁠。

図1 ビジュアライジングツールWalrusを使ったネットトポロジの視覚化サンプル
図1 ビジュアライジングツールWalrusを使ったネットトポロジの視覚化サンプル
その他、BGPの経路情報も活用したASトポロジマップも奇麗です。執筆時点での最新データでは、2009年1月時点でのIPv4とIPv6インターネットが可視化されています。
図2 IPv4 & IPv6 INTERNET TOPOLOGY MAP JANUARY 2009 : CAIDAより
図2 IPv

最後に

今回は、世界中で分散してtracerouteを行うことによって、インターネット全体の形や状態を把握しようとする研究を紹介しました。

この話はあまり一般的な話とは言えず実用的ではありませんが、世界各所からtracerouteを行うことで、より大きな情報を得られるという視点が何となく伝われば幸いです。

次回は、世界各地から一般ユーザがリアルタイムにtracerouteしながらネットワークの状態や経路を把握する方法を紹介したいと思います。

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