インターネットそのものに関する調査は、研究機関だけではなく、さまざまな企業によっても行われています。たとえば、世界中の約15%~20%のインターネットトラフィックと関わっていると発表しているAkamai Technologiesは、四半期ごとに「The State of the Internet」というホワイトペーパーを発表しています。
このホワイトペーパーは、Akamai社が保有し世界中に分散配置されたサーバから得られる統計情報を元に書かれています。今回は2009年第4四半期に発表されたバージョンを紹介します。
インターネットの成長
The State of the Internet Q4 2009では、Akamai Technologiesが観測したユニークIPアドレス数の推移が示されています。それによると、ユニークIPアドレス数は2008年末よりも2009年末は16%成長したそうです。2007年末と2009年末を比べると、約54%の増加とのことでした。
この調査を読んで面白いと思ったのが、最近2年間に観測されたユニークIPアドレス数の推移を四半期単位で分析している部分です。観測数が毎回増加しているのですが、増加のペースが徐々に落ちているのがわかります。
調査結果では、「 増加率」は母数が大きくなるほど同じような増加率を維持するのが困難になる点を指摘しつつも、IPv4アドレス枯渇などの対策のためにモバイルネットワークなどがNATやプロキシ技術を活用し始めているのではないかと推測しています(IPv4アドレス枯渇に関しても、そのうち解説を書かないとですね…) 。
なお、2009年第4四半期でのユニークIPアドレス観測国ランキングは以下のようになっていました。
1位 アメリカ 124,953,865
2位 中国 52,113,869
3位 日本 32,259,547
4位 ドイツ 30,912,466
5位 フランス 21,477,486
6位 イギリス 20,008,664
7位 韓国 16,108,106
8位 カナダ 11,402,213
9位 スペイン 10,822,929
10位 ブラジル 10,779,132
高速な接続を持つ国
Akamai Technologiesのホワイトペーパーには、世界のブロードバンド速度ランキングも公表されています。速度平均値ランキングで日本は3位に入っていました。
速度(Mbps)
1位 韓国 11.7
2位 香港 8.6
3位 日本 7.6
ホワイトペーパーを見ると、アメリカがナローバンドの国であることもわかります。2009年第3四半期の調査結果でアメリカは18位でしたが、今回は22位に落ちています。アメリカの平均速度は3.8Mbpsであり、日本の半分です。
アメリカと言えば、バリバリ速い高速インターネットを想像する人が多いと思いますが、一般家庭への回線は日本の方がアメリカよりも高速であると言えます。
モバイル端末
2009年第4四半期のホワイトペーパーには、ブロードバンド速度の低下とモバイル端末増加に関して述べられていました。大きく速度が低下している国は、モバイル端末が急激に普及していることが一因である場合もあるようです。
たとえば、2009年11月に韓国でAppleのiPhoneが発売されると、韓国で観測されるユニークIPアドレス数は増加し、全体的なブロードバンド速度は低下したようです。
2010年第1四半期のホワイトペーパーでは、明確にモバイル端末とわかるものに関しては区別して扱われるそうです。
最後に
さまざまな企業が「インターネット」に関連するホワイトペーパーを発表しています。今回はAkamai Technologiesが公表している調査結果の一部を紹介してみましたが、他の企業が公表しているホワイトペーパーもいろいろと見ると楽しいと思います。
各企業が公表している調査結果は、それぞれ、自分にとって有利となる情報を強調した内容になりがちなので、注意は必要ですが、複数の情報を組み合わせることで、大まかな流れは見えやすくなるのではないでしょうか。
次回は、今回紹介したホワイトペーパーを公表しているAkamai Technologiesについて解説します。