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今のインターネットはほとんどIP version 4(以後IPv4)で構築されています。
しかし,2010年末の時点で,IPv4アドレスの残りは既に実質2.7%となり,枯渇までのカウントダウンが開始されたと言えます。すでに日本も含まれるアジア太平洋地域のNIC(APNIC)によるIPv4アドレスの割り当て分は枯渇しており,組織などへの新規アドレス割り振りも近いうちに終了するだろうと思われます。10年前には半信半疑の人が多かったIPv4アドレス枯渇が,急速に現実味を帯びてきました。
今まで成長を続けて来たIPv4によるインターネットは,IPv4アドレス数の限界へと到達したことによって,それ以上の規模拡大が難しい時代へと突入します。IPv4アドレスが枯渇したからといって,いきなりインターネットが停止するわけではありませんが,ネット上で規模を拡大しようとするときの障害になります。
具体的には,たとえば以下のような変化が予想されます。
- IPv4よりもIPアドレス空間が大きいIPv6の運用が増加し,IPv4とIPv6のデュアルスタック環境が増える
- IPv4はIPv4アドレスが枯渇しても,かなり長い期間使われ続ける
- ISPによる個人へのインターネット接続環境が大きく変化する可能性が高い(大規模なNATなど)
- ホスティング事業者などが新しいサーバに対してIPv4アドレスを割り当てられなくなる
- 多くのソフトウェアがIPv4とIPv6の両方に対応しなければならなくなる
- Web屋さんにとっては,IPv6表記を考慮したアクセスログ解析が必須となる
この他にも様々な変化が予想されますが,いろいろと細かく書いていると長くなり過ぎるので,機会があったら別途紹介しようと思います。
32ビットの世界が限界に
IPv4アドレスの枯渇をもう少し具体的に言うと,32ビットで表現されるIPv4アドレスが全部使い切られてしまう状態です。
単純計算すると32ビットで約43億個のIPv4アドレスが表現できますが,いろいろと制約があるため,実際にはその全てを使えるわけではありません。
2010年時点では,インターネットはIPv4アドレス空間全体の1/256を毎月要求する勢いで拡大しています。
2010年11月時点で残っているのは,IPv4アドレス空間全体の12/256です(このうち5個は割り当て方針がすでに決まっているので,実質7個です)。
IPv6
IPv4アドレスが枯渇したあとに,IPv4の代替として利用するためのプロトコルがIPv6です。IPv6の標準化の過程では,アドレス長をどれぐらいにするのかでいろいろと議論がありましたが,最終的に,IPv6のアドレス長は128ビットという長さに決定しました。
これは,ビット長としてIPv4の4倍です。
ビット長が1増えると,表現できるアドレス空間が倍に増えるので,32ビットから128ビットになることによって,2の96乗という無限に近い大きさへと変化します。
しかし,実際には,IPv6は上位64ビットをネットワークアドレスとし,下位64ビットをその中での個別機器識別用に利用するという運用が行われるので,数えきれないほどの無限空間があるわけではありません。とはいえ,今のインターネット全体よりも,かなり大きなアドレス空間であることは間違いありません。
最後に
IPv4アドレスの枯渇が近づいています。これから,数回にわたってIPv4アドレス枯渇とは何かや,IPv6との関連を紹介して行きます。
次回は,IPv4アドレス枯渇の背景を紹介します。