前回に続き、国別のIPv4アドレス枯渇の影響を紹介します。
前回はIPv4アドレス枯渇問題による影響が大きく出そうな国としてプラジルと中国の例を挙げましたが、今回は日本に関してです。
日本国内での影響は限定的
個人的には、日本国内においては、IPv4アドレス枯渇による一般ユーザへの影響は限定的になると予想しています。
IPv4アドレス枯渇問題は、インターネットが拡大するのが困難になるという問題であるため、「成長」が大きな要素です。すでにある程度の成長を達成し、ユーザ増加による急激な成長フェーズを過ぎてしまった日本での影響は、いままさに拡大を続ける国よりは軽いものと思われます。
総務省による「平成21年「通信利用動向調査」の結果」を見ると、企業におけるインターネット利用率は99%、個人普及率は平成21年末で78.0%で増加に関しても数年前から緩やかなものとなっています。回線もブロードバンド回線が76.8%(ただし複数回答可)です。
このため、今後、国内でインターネットユーザが急激に増えることに起因するIPv4アドレス需要の急激な増加が発生するわけではないと思われます。さらに、ISPではLSN(Large Scale NAT,別名CGN:Carrier Grade NAT、LSNに関しては今後紹介します)導入が検討されているため、一般家庭用のIPv4アドレス利用は圧縮される可能性が高いです。
日本でIPv4アドレス枯渇によって苦労すると思われる組織
IPv4アドレスが枯渇したときに、日本国内で苦労するであろうと推測される組織としては、外部からのアクセスが必要になるようなサービスを行うために新規立ち上げを行いたいサービス事業者などが挙げられます。
たとえば、データセンターのような事業を立ち上げたくても、IPv4アドレスが無いのでできないという可能性があります。さらに、IPv4アドレス枯渇が発生してから一定期間が経過すると「IPv4アドレスを顧客に割り当てられない」という既存事業者も登場する可能性があります。そのとき、「IPv6でしかサービスが提供されない」というホスティングサービスが登場するかも知れません。
P2Pへの影響
LSNによってISP全体がNATを行うと、外部からの接続が困難になる可能性があります。
その影響により、IPv4によるP2P、VPNサービス、IP電話なども影響を受けるかも知れませ(SkypeやWinnyやBittorrentなどは恐らくLSNの影響を受けるでしょう。そのような背景からBittorrentは早期にIPv6対応しています)。
「興味がない」人が多そう
影響を受ける人が限定的だからこそ大きな問題もあります。
日本国内の多くの一般ユーザにとってはIPv4アドレス枯渇は自分とは関係無い問題に映ってしまいがちです。そのため、ISPなどはIPv6のための大規模な追加投資を行いづらく、腰は重いけど危機が確実に近づいているのはわかっているのでツライという状況がここ数年続いていました。
実際にIPv4アドレス枯渇が発生(次回はIPv4アドレスのIANAプール枯渇に関してです)したことによって、この状況がどのように変化するのかは、今後の推移を見なければわかりません。
最後に
今回は、日本におけるIPv4アドレス枯渇の影響を紹介しました。次回は、昨年2月に入ってから発生したIPv4アドレスのIANAプール枯渇に関して紹介します。