インターネットって何だろう?

第41回インターネットと国境

インターネットが登場しはじめた頃から「インターネットには国境は無い」と言われてきました。しかし、インターネットも物理的な回線上に存在する以上、運用において実世界の影響を少なからず受けます。

インターネットの国境は、実世界の国境ほど厳密ではありません。全く気がつかずに複数の国を経由して通信を行っていることも普通にありますし、同じ国内の情報を見ているつもりでもサーバは外国に存在することもあります。⁠言語や文化による見えない壁」という意味では、サーバ等が設置されている物理的な位置よりも内容や運営主体にフォーカスが当たるなど曖昧に扱われる場合もあります。

しかし、インターネット上のコンテンツへのアクセスという側面で最近は徐々に「インターネットの国境」が鮮明になる事例が増えています。これから数回に分けて、⁠インターネットと国境」に関して紹介します。

著作権と国境

日本は、インターネットを利用して比較的に自由に通信が行えます。そのため、日本国内の多くのユーザが直面しているのは、国家が主体となって検閲が行われるような「インターネット上の国境」ではなく、著作権に関連して民間が主体で行われる「インターネット上の国境」かも知れません。

たとえば、iTunes Storeで購入できるものが国によって違います。テレビドラマがネット上の動画として公開されていたとしても放送が行われた国でしか見られないという事例もあります。アメリカのWebサイトであるHuluは、ABC、FOX、NBC、その他の多くのテレビ局および映画会社の動画を公開していますが、最近まで日本では利用できませんでした。

日本でHuluが利用できなかったころ、動画が見られないのではなく、そもそもWebサイトが表示できませんでした。このような制限は、視聴者側のIPアドレスを基に行われています(そのため、日本で制限があった場合もアメリカ国内にあるProxyを利用すると視聴できたりはします⁠⁠。

イギリスでもBBCがBBC iPlayerという専用のアプリケーションを使って、イギリス国内だけで見られる動画配信を行っています(世界版が登場する予定もあるようです⁠⁠。先のHuluと同様に、視聴制限はクライアントのIPアドレスを利用して行っています。

日本国内用のラジオサービスであるRadikoは、国境よりも細かく「地域」という単位で運用されています。Radikoは、地上波ラジオと同じ内容で配信されているため、地上波と同じ地域と認識されている日本国内のIPアドレスからのみ利用可能です。

技術の進歩と「見えること」の管理

インターネットの社会的意味が大きくなるにつれて、内容の制限や規制も増えて来ています。さらに、技術の進歩によって「できること」が増えるにつれて、技術的に内容を規制する方法も洗練されつつあります。

ネットワークとは関係がありませんが、技術の発展によって管理が強化される日本での身近な事例では、アナログビデオでできていたダビングがコピーワンスやムーブ(移動)という概念によって大幅に制限されてしまったというものがあります(現在はダビング10によって9回コピーが可能になってます⁠⁠。

インターネットのインフラでも「ネット上での規制」を実現する技術や製品が増えています。小規模なものでは、会社内LANにおいて社員が「みるべきではない」と判断されたものをフィルタリングするという「管理」の方法がありますが、それが大規模になってくると「国単位での管理」に近いものになっていきます。このような「国単位での管理」は、インターネット上に「国境」を作って行くような状況を作りつつあります。

実際の「管理」をする技術としてDPI(Deep Packet Inspection)が最近話題になりますが、現状では国単位の管理としてはフィルタリングやブロッキングという方法の方が多く利用されています。

日本のインターネットにも「制限」は存在している

日本でも2011年4月21日に児童ポルノを対象としたブロッキングが開始されました。これまであったフィルタリングは、各ユーザが内容を設定したり合意をすることが前提でしたが、ブロッキングは自動的に特定のサイトを見られなくするというものです。

このように、日本のインターネットにも技術的に「見られなくする」という仕組みが導入されています。

最後に

次回は、中東で行われたインターネット遮断に関して紹介したいと思います。

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