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Debianプロジェクト、ノンフリーファームウェアへの対応変更を審議中

数あるLinuxディストリビューションの中でも、フリーソフトウェアであることにとりわけ厳格なスタンスを取り続けているのがDebianだ。周知の通り、Debianに含まれるすべてのパッケージはDebianフリーソフトウェアガイドライン(DFSG)に従って収録され、Debian公式ディストリビューション(main)にはいっさいのノンフリー(non-free)パッケージは含めることはできない(ノンフリーのパッケージを収録した「non-free」ディレクトリがmainとは別に用意されている⁠⁠。近年ではクローズドのバイナリソフトウェア(ファームウェア)に重要なセキュリティアップデートやハードウェアアクセラレーションアップデートが含まれることが多く、ユーザビリティに深刻な影響が出るケースも増えるようになってきた。

Debianプロジェクト内では2022年に入ってから、著名な開発者であるSteve McIntyreを中心に、ノンフリーのファームウェアに対する扱いを変更し、ユーザが必要に応じてノンフリーのファームウェアを使えるようにするべきという意見が目立つようになってきた。そして現在、Debianプロジェクトはこの問題の一般的な解決(General Resolution)をはかるため、8月18日から9月3日かけて、ノンフリー(non-free)のファームウェアの扱いに関して議論を重ねており、最終的な決定へのプロセスを進行中だ。

General Resolution: non-free firmware -debian voting information -debian.org

ノンフリーファームウェアの扱いに関する3つの提案

提案されている3つのプロポーザルの概要は以下の通り。

プロポーザルA
現在Debianアーカイブの「non-free-firmware」セクションに含まれるノンフリーのファームウェアを公式メディア(インストーライメージ/ライブイメージ)に含める。収録されたバイナリはデフォルトで通常は有効とできるが、必要に応じて起動時に無効とする選択をユーザに提供する。インストーラ/ライブシステムの実行中、ユーザに対して(フリー/ノンフリーにかかわらず)どのファームウェアがロードされているかを通知し、さらにそれらの情報を保存しておいてあとからユーザが検索できるようにする。ユーザのシステムはノンフリーのファームウェアコンポーネントをデフォルトで利用できるように設定され、他のソフトウェアと同様に重要なセキュリティアップデートや修正を受け取れるようにする。これらのイメージを公式なDebianメディアとして収録し、ノンフリーのファームウェアパッケージを含まない現在のメディアセットを置き換える。
プロポーザルB
基本的にはプロポーザルAと同じだが、現在のメディアセットを置き換えるのではなく、別のイメージとして提供する。ノンフリーのファームウェアを含む新しいイメージのほうがよりユーザに見つけやすい存在になり、従来のノンフリーを含まないイメージは同じプロジェクトページからリンクされるが、あまり目立たなくなる。
プロポーザルC
Debianプロジェクトはnon-freeセクションにあるパッケージを含むディストリビューションメディア(インストーライメージ/ライブイメージ)を作成し、freeメディア(ノンフリーを含まないイメージ)と同様にダウンロードすることが可能、ユーザにはダウンロード前にインストールしようとするメディアがフリーであるかどうかが通知される。

現時点ではSteve McIntyreが提案したプロポーザルAへの支持者がもっとも多いようだ。どの案が採用されるにせよ、Debianがこれまで厳格に維持してきた⁠non-free⁠なパッケージへのサポートがが大きく変わることは間違いない。

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