今回の「明後日のコンピューティングを知ろう」では、技術革新により手頃に実現できるようになった水中調査の「いま」と「これから」を解説します。
漁業やレジャーフィッシングでは、水中の魚の様子を調べるために魚群探知機が昔から使われてきました。最近の魚群探知機はより高度に進化し、ソナーがとらえる水中の情報をデータとして保存できるようになっています。一般的にそれらは漁業やレジャーのために海図の作成に用いられてきましたが、その精度は瞠目 すべきものがあります。図1は市販されている魚群探知機を使用し、河川/湖沼の底面をデータ解析/変換して見える化したものです。
高頻度にスキャンし収集された湖底のデータを変換することで、普段見ることができない河川/湖沼を高精度に視覚的に再現できます。湖底にある堆積物、水棲生物の痕跡、放棄された構造物などがわかるようになります。その範囲は実に数十から百数十メートルにもなります。具体的にはサイドスキャンソナーと呼ばれる海底面状況調査向けのソナーを用います。発信/受信できるソナーの周波数によりますが――海底や湖底の構造物の見え方の精度には変化があります――おおむねこの手のソナーを使えば誰でも実施できます。さまざまな企業から魚群探知機が発売されていますが、これらにはサイドスキャンソナーのデータをMicroSDメモリカードに保存する機能がありますので、そのデータを解析/描画変換するソフトウェアで処理すると、前述の高精細地図が出力されます(図2)。
さらに最新の魚群探知機を使用すれば、ソナー情報をリアルタイム変換して描画できるようになるので、水中を立体的に可視化する製品もいくつか発売されています。いままで見ることができなかった水中の世界の把握と、そのデータ解析に1つの糸口が見えてきました(図3)。
水中の見える化技術の進化はまだまだ始まったばかりなので、今後の進展が楽しみです。