OKR運用指南

第3章チームにOKRを導入する ~メンバー内の整合性を保ち、設定と評価を繰り返す

第2章では、OKRを設定する具体的な流れを解説しました。OKRを設定する際の考え方や、注意すべき落とし穴を知ることで、適切に個人のOKRが設定できるようになりました。しかし、チームにOKRを導入するとなると、OKRを設定する知識だけでなく、強いリーダーシップが求められます。

そこで第3章では、新規プロジェクトのチームリーダーを主人公に設定し、⁠チームにOKRを導入する」という具体的なシナリオを通じて、OKRの導入の流れを解説します。

あなたは新規プロジェクトのチームリーダー

あなたの会社では、チョコレート販売のECサイト『チョコショップ』の開発、運営を行っています(チョコショップは架空のECサイトです⁠⁠。あなたは会社でベテランの開発者で、チョコショップの開発にも長らく携わってきました。

新規プロジェクトの発足

チョコショップは、一般消費者向けに順調に売上を伸ばしてきました。しかし、最近になって法人からの需要が高まっていることがわかりました。多くの会社で、会議室や休憩室用に大量のチョコレートを定期購入するニーズが見つかったのです。

そこであなたの会社は、法人向けにチョコレートのサブスクリプションプランを提供する、チョコショップの新規プロジェクトを発足させました。そしてあなたは、そのプロジェクトを推進するチームリーダーを任されました。

初めてのOKR

あなたの会社では、これまでOKRを採用してきませんでした。会社では年次評価が行われているだけで、従業員の自律性やモチベーションを高めるための目標管理は行われてきませんでした。そこであなたは、新規プロジェクトにOKRを導入することにしました。あなたは、ゆくゆくは会社全体にOKRを導入したいと考えていますが、まずは新規プロジェクトだけに注力することにしました。OKRは会社全体で実践することで、その効果を最大限に引き出すことができます。しかし、すべてを同時に始めようとすると多くの人を巻き込むことになり、そのために必要なコミュニケーションが足枷あしかせになってしまいます。

幸い、OKRは人事評価制度ではありません。そのため、一部の組織だけでOKRを運用したり、個人のOKRを後回しにして、組織のOKRから運用するといった、さまざまな流れでOKRを導入することができます。

導入の流れ

人は目標に納得すると、高いパフォーマンスを発揮できるようになります。そのため、関係者全員が納得できるまで、時間をかけてOKRとは何か、なぜ有用なのか、どれぐらいの期間で、どのように運用すればよいのかについて説明し、疑問を1つずつ解消することが大切です。

また、OKRに慣れるまで時間がかかることを、あらかじめ理解してもらう必要があります。どのようなプロセスにも、試行錯誤はつきものだからです。1度目のOKRでうまくいかなかったとしても、2度目のOKRに活かすためのデータとして、前向きに捉えるようにします。

OKRとは何かを説明する

OKRは、目標と成果指標を数珠つなぎに接続しただけのものです。しかし、実際に初めてOKRを設定してもらうと、何が目標にあたり、何が成果指標にあたるのかがわからず、混乱を招いてしまうケースがあります。そのほかにも、チームの成果指標と個人の目標を紐付けるにはどうすればよいかわからないといった疑問も発生しがちです。こうした疑問を解消するためにも、根気強く説明を行うことが大切です。

目標と成果指標の違い

まずは、目標と成果指標の違いについて説明します。たとえば、⁠サービスを安定化させたい」「技術的負債を減らしたい」というニーズに対して、どのような目標や成果指標を設定すればよいでしょうか。アンディ・グローブは、前述した『HIGH OUTPUT MANAGEMENT─⁠─人を育て、成果を最大にするマネジメント』[1]の中で、目標と成果指標を適切に設定するためには、以下の2つの質問に答える必要があると述べています。

  1. わたしはどこへ行きたいか?(その答えが「目標」になる)
  2. そこへ到達するためには自分のペースをどう決めるか(その答えが「成果指標」になる)

先ほどの「サービスを安定化させたい」や、⁠技術的負債を減らしたい」というニーズに対してこれら2つの質問を投げかけることで、図1で示されているとおり、目標と成果指標を設定することができます。

図1 目標と成果指標の設定
図1

成果指標と目標の紐付け

チームの成果指標と個人の目標を紐付ける際に最も簡単なのは、チームの成果指標をそのまま個人の目標として掲げてしまうことです。しかし、中には1人だけの力ではチームの成果指標を達成することはできず、チームメイトと協力し合わなければならないことがあります。チームの成果指標を2人のチームメイトで分担するのであれば、2人が掲げた目標を100%達成することで、チームの成果指標の達成率も100%にならなければなりません。

具体例として、⁠モバイルアプリのテストカバー率を50%以上に引き上げる」というチームの成果指標を、Android開発者とiOS開発者の2人で分担する場合を考えます。その場合は、図2で示されているとおり、それぞれが「Androidアプリのテストカバー率を50%以上に引き上げる」と、⁠iOSアプリのテストカバー率を50%以上に引き上げる」といった、異なる目標を掲げることが考えられます。

図2 チームの成果指標の分担
図2

OKRの有用性を説明する

OKRがいかに有用かを説明するには、第1章で解説したフォーカス、アラインメント、トラッキング、ストレッチの4つの威力を説明するとよいでしょう。その際、最も引っかかりやすいのがストレッチです。これまで、挑戦的な目標を設定することの大切さを繰り返し説明してきました。しかし、業務ではこれまで現実的な目標を掲げ続けてきて、突然挑戦的な目標に切り替えるように言われても、慣れるまでにはどうしても時間がかかってしまいます。本特集では、挑戦的な目標は60~70%の達成度を目指すように伝えてきました。しかし実際のところは、どれだけ失敗のリスクが許容できるかは、会社や組織によって異なります。時間とリソースが潤沢にある会社であれば、いくらでも失敗を許容することができますが、すべての会社と組織にそれだけの余裕があるわけではありません。

チームリーダーとして大切なことは、あなたがどれだけの失敗を許容できるのかを示すことです。そのためには、挑戦的な目標であっても、達成率を70~80%に設定するなど、多少調整しても構いません。しかし、チームメイトが目標を達成できるか不安に感じているのであれば、ただ単に目標を下げるだけでなく、目標が達成可能だという強い信念を掲げ、その目標達成のために手を尽くす姿勢を見せることが大切です。

OKRの運用期間を定める

OKRについての理解が深まったら、次はOKRの運用期間を定めます。これまで、OKRを四半期ごとに運用する前提で説明してきました。しかし、OKRの運用期間について特定のルールは存在しません。また、組織全体で共通の期間を定める必要もありません。たとえば、会社全体のOKRは1年ごとに更新され、チームや個人のOKRは3ヵ月ごとに更新される会社もあります。ただし、上位の組織よりも長い期間を設定してしまうと、OKRが更新された際に会社全体で整合性が保てなくなってしまいます。そのため、必ず属している組織と同じか、それ未満の期間でOKRを運用する必要があります。

OKRの期間を定める際に大切なことは、適切なフィードバックを適切なタイミングで得られることです。たとえば、会社の事業が1年ごとに計画されているのであれば、その計画を遂行するためには、必ず1年か、それよりも短い期間でOKRを運用します。また、事業計画よりも短い期間でOKRを運用することで、その節目ごとに軌道修正を行えるようになります。こうした背景から、OKRは四半期ごとに運用されることが一般的になっています。

今回は、新規プロジェクトの目標管理にOKRを用います。新規プロジェクトでは、十分に短い期間でフィードバックを受け取り、方向修正を行う必要があります。よって、あなたのチームでは、通常どおり四半期ごとにOKRを運用することにしました。

OKRの運用方法を説明する

OKRの開始日と評価日については、運用を始める前に決定しておきます。よく見られる問題として、OKRの評価日について、会社全体やチーム内での合意が取れておらず、四半期が過ぎてもずるずると開発を続けてしまい、正確にOKRの達成度が評価できなくなってしまう場合があります。また、OKRは一般的に組織の上位から下位の順に設定されます。もし、会社全体のOKRに時間をかけ過ぎてしまい、そこからチームのOKRと個人のOKRも後ろ倒しになってしまうと、すべてのOKRが完成するころにはすでに1ヵ月近くが過ぎてしまっているという場合すらあります。

そのような混乱を生まないよう、事前に各組織と個人のOKRがいつまでに設定されいつ評価されるのかについて、図3で示されているとおり明確なスケジュールを定め、関係者全員と合意を得る必要があります。

図3 運用スケジュール
図3

疑問を取り払う

OKRとは何か、どのように有用なのか、またどのように運用されるのかを理解してもらえたら、次に質疑応答の時間を十分に取ります。質疑応答では、できるだけたくさんの疑問を受け付け、それらに対して1つずつ丁寧に回答する姿勢が求められます。

質問に答える際は、⁠クールエイドを飲むな」ということを意識します。クールエイドを飲むとは、成功者や成功している組織の手法を鵜呑うのみにしてしまうことを指す慣用句です。OKRにおいても、⁠Googleで採用しているから」⁠メルカリではこうしている」といった風に無批判にOKRを採用してしまったり、OKRの運用方法をそのまま持ち込んでしまったりすると、その組織に合わず失敗してしまうリスクがあります。

OKR自体はシンプルな目標管理手法です。よって、一般的に言われている「OKRを運用するためには1on1ミーティングが必須」「OKRの進捗はウィンセッションで確認すべき」といった運用方法についても、実際のところ決まりはありません。だからこそ、さまざまな批判を積極的に受け止め、疑問を1つずつ解消していくことで、その組織に本当にあったOKRに作り変える必要があります。

OKR 策定の流れ

OKRを策定する流れに特定の正解はありません。個人がまずOKRを設定し、それらを集約してチームのOKRとする方法もあれば、チームと個人が同時にOKRを設定し、話し合いを進めながら整合性を取る方法もあります。

しかし、チームリーダーが率先してOKRを設定することで、正しい意思決定を促し、団結力を高め、パフォーマンスを最大限に引き出しやすくなります。個人の仕事内容が組織に対してどれだけ貢献しているかが明確になり、従業員のエンゲージメント(会社への愛着や思い入れ)高まりやすくなるからです。

チームのOKRを設定する

チームのOKRは、チームで働く一人一人のコンパスとモチベーターになります。よって、チームリーダーは、チームメイトを奮い立たせるOKRを設定するために時間とエネルギーを注ぐ必要があります。チームのOKRを設定する際は、第2章で学んだ個人のOKRの設定方法に従うだけでは十分ではありません。グローブが示した「OKRの要綱」を意識することで、チームメイトの自律性やモチベーションを高めることができます[2]

  1. 絞り込む─⁠─重要でない目標を切り捨てる
  2. ボトムアップ─⁠─時にはチームのOKRを個人のOKRに合わせる
  3. 押し付けない─⁠─自律性やモチベーションを奪わない
  4. 常に柔軟な姿勢で─⁠─OKRは途中で変更してもよい
  5. 失敗を恐れない─⁠─野心的な目標を重視する
  6. 手段であって武器ではない─⁠─評価や報酬と切り離す
  7. 辛抱強く、決然と─⁠─失敗から学ぶ

これらの要項を踏まえて、あなたは図4で示されているとおり、チームのOKRを設定しました。

図4 チームのOKR
図4

チームリーダーのOKRを設定する

CEOChief Executive Officer、最高経営責任者)が会社全体のOKRとは別にCEO個人のOKRを設定するように、チームリーダーもチームのOKRとは別に、チームリーダー個人のOKRを設定することができます。確かに、1人で2つのOKRを設定するためには、多くの時間とエネルギーがかかります。しかし、そのコストを補って余りあるメリットもあります。

まず何よりも大きなメリットは、全力で目標に打ち込む姿勢を、言葉だけでなく行動で示せることです。チームリーダーも、チームの一員として会社に対してどのように貢献できるのかを、チームメイトと同じ目線に立って考えることができるため、チームに一体感を与えることができます。

さらに、チームリーダー自身も緊張感を持って目標達成に取り組むことができます。チームのOKRは個人でコントロールできる範囲を超えているため、その目標を達成しても失敗しても、個人として適切なフィードバックを得ることができません。しかし、チームリーダーに個人のOKRがあれば、チームリーダーがその目標達成に対してどれだけ貢献できたのかが可視化されます。

そこであなたは、図5で示されているとおり、チームリーダーのOKRを設定しました。

図5 チームリーダーのOKR
図5

チームメイトのOKRの設定をサポートする

チームとチームリーダーのOKRが完成したので、次にチームメイトに個人のOKRを設定してもらいます。チームのOKRが達成できるかは、OKR全体でどれだけ整合性が保たれているかにかかっています。もしチームの目標を達成するためのリソースが偏ってしまうと、高いチームワークを発揮することができません。

新規プロジェクトには、あなたのほかに3人のメンバーが加わりました。あなたは彼らにOKRを作成してもらうことになりますが、その際チームリーダーとして最も気を付けなければいけないことは、OKRを「押し付けない」ことです。目標を押し付けてしまうと、目標は容易にノルマに成り下がってしまいます。そうならないよう、チームリーダーであるあなたは、あくまでチームメイトのOKR設定のサポートに徹します。時には、チームリーダーであるあなたから、掲げるべき目標を提案する場面もあります。しかし、そのような場面であっても、少なくとも個人のOKRの半分以上は、チームメイト自身に設定してもらうよう促します。

以上の注意点に気を付けながら、チームメイトにOKRの作成してもらった結果、図6が完成しました。

図6 チームメイトのOKR
図6

慎重に擦り合わせる

チームメイトのOKRが完成したら、チーム全体でOKRの整合性が保たれているかを確認します。そこであなたは、図7で示されているとおり、チームの成果指標が個人の目標によって過不足なく網羅されているかを確認することにしました。

図7 チームOKRのカバレッジ
図7

今回は、チームの成果指標と個人の目標が一対一で紐付いていますが、チームの規模が大きくなると、チームメイト同士で協力して1つのチームの成果指標を分担しなければならない場面もでてきます。そうした場合に、誰がその成果指標の達成に対して責任を負うのかがあいまいになってしまい、チームワークが発揮しきれない可能性があります。

もしそのような問題にぶつかってしまった場合は、それぞれのチームの成果指標に対して、図8で示されているRACI(レイシー)を明確にする方法があります。RACIと は、⁠Responsible(実行責任者⁠⁠Accountable(説明責任者⁠⁠Consulted(協業先⁠⁠Informed(報告先⁠⁠」の頭文字をとったものです。

図8 RACI
図8

OKRの整合性を確認するためには、⁠Responsible(実行責任者⁠⁠Accountable(説明責任者⁠⁠」の2つの役割を分けることが大切です。よって、あまり形式的な運用を増やしたくない場合は、チームのそれぞれの成果指標に対して、この2つの役割だけを明確にするところから始めてもよいでしょう。

1つのチームの成果指標を複数のチームメイトで分担する場合は、そのタスクを分担するチームメイト全員が実行責任者にあたります。一方で、説明責任者はその成果指標に対して最終的な権限と責任を同時に負わなければならないため、原則1人に制限されます。実行責任者と説明責任者は兼任することができますが、説明責任者は実行責任者と適切にコミュニケーションを取り、その成果指標の進捗に対して責任を負わなければなりません。

評価の流れ

四半期が過ぎ、評価日になったら、OKRの達成率を計測します。OKRの成果指標は計測可能になっているため、それぞれの達成率を0~100%(または0~1)の間で計測することができます。目標の達成率は、その目標に紐付く成果指標の達成率の平均で計測されます。つまり、成果指標のすべてを100%達成することで初めて、目標も100%達成したことになります。

達成率を計測する

達成率を計測することで、組織および個人が価値のある目標を達成できたのかを明確に判断することができます。もし、達成率が低かったとすれば、進め方にどのような問題があったのか、次に向けて何を改善すべきなのかを振り返る材料になります。

達成率の計測方法に一貫性を持たせるためには、計測基準を設ける必要があります。たとえば、⁠自動テストのカバー率が50%以上」という成果指標に対して、テストカバー率が40%まで引き上げられたとすれば、単純に達成率を80%と評価してもよいかもしれません。

しかし、⁠満足度と要望に関するアンケートが設置される」という成果指標に対して、機能実装は完了したものの、リリースに至らなかった場合は達成率は0%とみなすべきでしょうか、あるいは全体の工程に対する進捗を考慮して、80%とみなすべきでしょうか。チームリーダーであるあなたは、達成率に大きなブレを生まないよう、図9のような基準を設ける必要があります。

図9 達成率の基準
図9

完成に70~100%の幅を持たせたのは、その完成の質に幅があるためです。たとえば、⁠平均応答時間が1秒以下」という成果指標を24時間の平均では達成できたとします。しかし、ピークタイムにおいて平均応答時間が1秒を超えてしまった場合に、達成率を100%とすべきでしょうか。こうした場合は、達成率を70%程度にとどめることが適切かもしれません。

このような基準を定めて、チームメイト❶のOKRの達成率を計測したところ、図10で示されているとおりになりました。

図10 チームメイト❶のOKRの達成率
図10

自己評価を行う

図10の低い達成率を見て、チームメイト❶の人事評価を下げてしまうのは軽率です。OKRでは達成率60~70%の挑戦的な目標が設定されます。確かに2つ目の目標の達成率17%は目につきますが、2つの目標の達成率の平均を求めると50%になるため、達成率から大きく外れていません。さらに、単純に目標の達成率をもとに人事評価を行ってしまうと、高い目標を立てた者が損をする組織になってしまいます。そのような組織では、誰も高い目標を設定しなくなってしまいます。

そもそも、OKRは人事評価に直接用いるべきではありません。確かに、評価を行う以上客観的な指標が求められるため、OKRがその材料として用いられることもあります。しかしそうした場合であっても、達成率をそのまま人事評価としてはいけません。OKRの達成率とは別に、OKR設定者本人の主観で補足した自己評価を行い、こちらを参考とする必要があります。

たとえば、⁠満足度と要望に関するアンケートが設置される」の成果指標が達成できなかった原因が外部要因にあるとしたらどうでしょうか。また、アンケート機能のリリースが遅れてしまった埋め合わせとしてユーザーインタビューを5社に対して実施した場合、その成果指標は完了以上とみなしてもよいのではないでしょうか。逆に、⁠要求仕様が100%満たされている」という成果指標が通常の業務の延長線上で達成できてしまったとしたら、自己評価は70%程度にとどめるべきかもしれません。

このように、情状酌量などのさまざまな要素を考慮して、チームメイト❶の自己評価を行った結果、図11のとおりになりました。

図11 チームメイト❶の自己評価
図11

振り返りを行う

目標の達成率の計測と自己評価が完了したら、それらの結果をもとに振り返りを行います。関係者全員と、設定した目標は適切だったか、進め方に問題はなかったかを振り返ります。チームのOKRの達成度は会社全体に公開し、チーム全員で振り返ります。一方で、個人のOKRは、チームリーダーとチームメイトの一対一で振り返ればよいでしょう。

たとえば、チームメイト❶のOKRでは、⁠アンケートの回答率が20%以上」という成果指標が「満足度と要望に関するアンケートが設置される」という成果指標に依存していたため、自動的に未達成になってしまいました。次のOKRではこのような問題を避けるため、より柔軟なOKRを設定すべきだったかもしれません。あるいは、四半期の途中に柔軟にOKRを修正すべきだったかもしれません。

また、チームメイトのOKRを振り返る際は、達成できなかったOKR だけでなく、達成率の高すぎるOKRにも目を向ける必要があります。初めから最適な難易度を設定することは難しいため、一度や二度高い達成率になっただけであればひとまず達成を賞賛し、次回からより高い目標を掲げるよう促せばよいでしょう。しかし、それ以上に高い達成率が続いているのであれば、OKRの中に現状維持の目標が含まれていたり、実力を十分に引き出せていない可能性があります。そのような場合は、厳しい評価を行う姿勢もチームリーダーには求められます。

振り返りにおいて大切なことは、OKRの達成率および自己評価をデータとして捉えることです。すべてが数値化されているため、何が問題だったのか、次は何を改善すべきなのかを客観的に判断できるのがOKRの大きな強みの1つだと言えます。

まとめ

第3章では、⁠チームにOKRを導入する」というシナリオを通じて、OKRを導入、策定、および評価の流れを解説しました。最後となる第4章では、OKRの運用方法を詳しく解説します。

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