DroidKaigi 2022 開催レポート

DroidKaigi 2022は10月5日から7日までの3日間にわたり開催され、盛況のうちに終了しました。本記事ではDroidKaigi 2022の概要と現地会場の模様をレポートします。

DroidKaigi 2022はオフラインとオンライン両方での開催に

DroidKaigi 2022はAndroid技術情報の共有とコミュニケーションが目的のカンファレンスです。7回目の開催となった今年はオフラインとオンライン両方での開催となりました。オフライン会場での開催はDroidKaigi 2019以来3年ぶりとなります。

会場入ってすぐのウェルカムボードでは7匹のドロイド君たちが出迎えた
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Live配信ブースからWelcome TalkやSpeaker InterviewをYouTubeに配信した
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セッション紹介

1日目と2日目はセッションの発表が行われました。オフライン・オンライン同時開催に伴い、スピーカーの皆さんのスタイルにそれぞれ合わせた形式を取りました。会場での発表はもちろん、発表を事前収録した映像の放映、リモート越しのリアルタイムな発表もありました。

本記事では、いくつかのセッションを紹介します。

「Getting started with Dagger and Hilt」

Zach Westlakeさんは「Getting started with Dagger and Hilt」のタイトルで発表しました。このセッションはオフライン会場で発表され、同時通訳により日本語訳も提供されました。

Zachさんは「Getting started」のタイトル通り、DaggerとHiltがなぜ便利なのか、そしてその基本的な使い方を解説しました。

3年ぶりのオフライン発表
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Android Developersに掲載されているDaggerの基本Android アプリで Dagger を使用するを学ぶときに、GooglerであるZachさんの今回の説明もあわせると、Daggerのメリットや各アノテーションの役割・使い所をしっかり整理できそうです。

Daggerの題材はImageCacheクラスのinject
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Daggerに続いてHiltも説明がありました。Dependency Injectionがテストを含めてさらに簡単に行えるHiltのありがたみを改めて実感しました。

Hiltの力を借りたくなる冗長なソースコード
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Zachさんのようにオフライン会場で発表したスピーカーの皆さんは、Ask the Speakerのエリアでセッションの質問に回答する時間が設けられていました。

「エンジニア駆動でデザインツールの刷新ができた」

bamiさんは「エンジニア駆動でデザインツールの刷新ができた」のタイトルで発表しました。セッションは事前に収録した映像を配信し、その後Live会場にてSpeaker Interviewを中継しました。

bamiさんの関わっているプロジェクトでは、開発手法やメンバーの作業環境・コラボレーションにおける問題点から、採用すべきデザインツールと利用方法を選定したそうです。

bamiさんが関わっているプロジェクトにおけるデザインツールの問題点
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デザインツール変更の提案はすぐに受け入れられたわけではなく、PoC開発など小さい新規開発での実績づくりから始めたといいます。積極的な⁠布教⁠を行った末、変更の提案が受け入れられ、開発プロセスにも良い影響を与えたそうです。当時のメッセージのやり取りから積極的に推進していくことの大切さがわかります。

デザインツールの変更のための入念な布教活動
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デザインツールはデザイナーだけでなくエンジニアを含むチーム全員が使うもので、私も日々デザインツールを片手に開発している1人です。デザインツールに大いに助けられたこともあれば、問題に直面して改善に悩むこともあり、エンジニア駆動での提案・刷新はとても興味深い発表でした。

発表後はbamiさんへのSpeaker Interviewを行いました。デザインツール変更後のプロジェクトの様子や、改善の今後の展望について伺うこともできました。

招待セッション

DroidKaigiにとって初めての試みとして、スピーカーを招いたセッションを行いました。働き方やユーザの観点から多様性を考え、参加者の皆さんに自身やDroidKaigiコミュニティのあり方について考えるきっかけとなることを目的としています。

今回実施された2つの招待セッションはどちらもオフライン会場での発表となり、発表後には早速参加者の皆さんがAsk the Speakerへ集まり質問をしていました。

今回は、この招待セッションについても取り上げます。

「あらゆる変化を受け入れながら働きつづける 〜 介護・学業編」

micchieさんは「あらゆる変化を受け入れながら働きつづける 〜 介護・学業編」というタイトルで発表しました。遠距離介護の経験のほか、社会人として大学院に通っている状況が語られました。

micchieさんは、父親の介護を行っていた経験があります。病院からの急な呼び出し、ともに介護を担った母親との関わり、不安やストレスの解消など、介護によって直面した困難とそれに対する工夫についての話を取り上げました。

micchieさんと父親に関して
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平成29年度の調査によれば、627万6千人が介護をしていて、仕事をしながら介護をする人は346万3千人だそうです。DroidKaigiコミュニティは20代や30代といった若い世代が多くを占めていますが、既に介護を行なっている当事者を含め多くの参加者からコメントが寄せられていました。自分自身や同僚が介護を行うことになった日のことを、より具体的に考えることができるようになったと感じます。

またmicchieさんからは、社会人大学院生としての生活についての話もありました。社会人としての経験を踏まえつつ多様性に溢れた仲間と共に取り組んでいるそうです。社会人になってからの学び直しがとても魅力的なものであることが伝わってきました。

「学ぶことって楽しい」
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「アクセシビリティは向上させる物 ~視覚障害当事者の立場で私が目指している理想的な社会~」

maverickさんは「アクセシビリティは向上させる物 ~視覚障害当事者の立場で私が目指している理想的な社会~」というタイトルで発表し、視覚障害者が直面している問題とサービス開発におけるアクセシビリティへの姿勢について話しました。

maverickさん自身が全盲の視覚障害を持っているため、この発表ではスクリーンリーダーを使用しプレゼンテーションアプリを操作していました。また、⁠ご自身が関わっている製品やサービスが好きですか?」といった参加者へのアンケートでは拍手による音量を聞いていました。

テクノロジーの進歩とアクセシビリティの向上により視覚障害者のできることが増えたことは喜ばしい一方で、⁠開発者自身が関わっている)その製品やサービスは視覚障害者にも使えますか?」というアンケートには耳が痛い思いをしました。

手伝ってくれる人がいるとは限らない、手伝ってもらっている、という誤解
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maverickさんは、開発の初期段階からアクセシビリティを考慮する、技術で解決できることを運用でカバーしない、などの数々の指摘を取り上げました。アクセシビリティに関する多くの学びを得られたセッションでした。

「社会を変えるためのメッセージ」
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Meetupの開催

セッションとは別に、参加者同士のコミュニケーションの場として全4回のMeetupを開催しました。⁠初心者」⁠女性」⁠1人で開発」「Jetpack Compose」⁠キャリア」などをテーマに、同じ属性・興味を持つ参加者が集まって交流を深めました。2020年・2021年は直接顔を合わせて交流する機会を設けられなかったため、新しい仲間や友人との交流を楽しんでいる様子をたくさん見かけました。

大盛り上がりしているテーブル
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ドロイド君のネイルアートができるコーナーでは、参加者の皆さんに好評で順番待ちができていました。ネイルをきっかけに大いに会話が弾んだようです。

私の人生初ネイルアートは、爪先にかわいらしいドロイド君
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展示ルーム

展示ルームはスポンサー各社によるブースが並び大盛況でした。どのスポンサーも工夫を凝らした展示企画で参加者の皆さんを迎えていました。

展示ルームの賑わい
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スポンサーブースやMeetupを訪ねた数に応じてグッズと交換できるスタンプラリーの企画も開催されました。

スタンプで満杯になった台紙
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Codelabs & Pathways、Fireside Chat

3日目は会場を移して、Codelabs & PathwaysとFireside Chatが行われました。

Codelabsではそれぞれ興味のある分野にわかれて、チュートリアルやDroidKaigi 2022 official appの開発などに取り組みました。

お互いに助け合いながらのもくもくCodelabs
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Google Developer ExpertsやGooglerの方々への相談会も開催されました。どの時間もたくさんの申し込みで満員となり大盛況でした。

ソースコードを囲んで議論中
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Fireside Chatでは、DroidKaigi 2022の運営や裏話、そしてDroidKaigi 2022 official appの開発体制や実装について取り上げました。

開発を率いたスタッフたちがそれぞれの担当について解説した
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まとめ

3年ぶりのオフライン開催となったDroidKaigi 2022では、従来行ってきた会場でのイベントはもちろん、DroidKaigi 2021に続いてのオンライン発表に加え、招待セッションや相談会といった新しい取り組みが行われました。参加者の皆様のそれぞれに合ったスタイルで楽しめたのではないかと思います。

各セッションの録画は、YouTubeのDroidKaigi公式チャンネルにて順次公開しています。また、DroidKaigiコミュニティのメンバー同士が交流する場も随時開催予定です。DroidKaigi公式Twitterをフォローしてお待ちください!

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