ノートアプリ「Obsidian」を使いこなす

標準機能でも便利な「Obsidian」プラグインで使いやすくする

前回のObsidianの紹介を見て、⁠Obsidianを使ってみたい」と感じた方はダウンロードしてインストールしてみましょう。今回は、Obsidianの初期設定に加え、プラグインの導入について紹介します。

Obsidianを使ってみる

インストールするには

Obsidianはローカルで動くアプリなので、インストールが必要です。Windowsの場合は、通常のアプリと同じように公式サイトからダウンロードしてインストールします。以下のサイトにアクセスして、⁠Get Obsidian for Windows」を押すとダウンロードできます。

ダウンロードした実行ファイルを開くと、次のような画面が表示されます。英語で表示されていますが、画面下にある言語を選択する部分で「日本語」を選択すると、表示が日本語に変わります。文字が中国語のフォントで表示されますが、設定画面にてフォントを選択できるので、このまま進めます。

図1

macOSの場合は、公式サイトからダウンロードしてインストールする方法の他に、Homebrewなどでインストールする方法もあります。iOSやiPadOSの場合はApp Storeから導入できますし、Androidの場合もGoogle Playストアから導入できます。

初期設定

最初に「保管庫(vault⁠⁠」を指定します。といってもただのフォルダで、Obsidianではこの保管庫というフォルダに含まれるファイルだけを管理し、その他のフォルダにあるファイルは操作できません。設定ファイルなどもこのフォルダに格納されるため、Obsidian用のフォルダを作成するとよいでしょう。

上図の「Create new vault(日本語では「保管庫を新規作成する⁠⁠」というメニューの「Create(作成⁠⁠」ボタンを押すと、次のような画面が表示され、保管庫の名前と作成する場所を指定します。プライベートと仕事を分けたい、といった場合には複数の保管庫を作成することもできますので、この保管庫にわかりやすい名前をつけておきましょう。たとえば「memo」という名前をつけておきます。

図2

複数のパソコンやスマートフォンで共有したい場合は、この保管庫をiCloudやGoogle Driveなどのファイル共有サービス上に作成するとよいでしょう。なお、iPhoneやiPadとiCloudで共有する場合には、保管庫を作成できる場所が決まっていますので、先にiPhone上でアプリをインストールして保管庫を作成しておくとよいでしょう(もちろん、保管庫はただのフォルダなので、あとからファイルをコピーすることもできます⁠⁠。

保管庫を作成すると、次のような画面が表示されます。これで起動は完了です。

図3

この画面の左下にある歯車のアイコンを押すと、設定画面が開きます。ここでフォントを変更できますので、Windowsの場合は変更しておきましょう(macOSの場合は標準でも問題ありません⁠⁠。設定画面を開き、⁠外観」の中にある「フォント」から好きなフォントを指定します。フォント以外にも、ダークモードやライトモードなども選択できますので、好みに合わせて変更してください。

図4

基本操作

設定画面を閉じると、最初の画面に戻ります。ここで、左端にアイコンが並んでおり、さまざまな操作ができます(マウスカーソルを当てると、どのような意味があるのか表示されます⁠⁠。アイコンの右隣には保管庫内にあるファイルの一覧が表示されます。ノートを作成すると、そのファイルの一覧が表示されますし、フォルダを作成すると階層的に表示されます。そして、右の広い部分がノートを作成するエリアです。

まずは新しいノートを作成しましょう。ファイル一覧画面の上に表示されているアイコンから「新規ノート」を選んでも構いませんし、右側のノートを作成するエリアに表示されている「新規ファイルを作成」を押しても構いません。キーボードからCtrl+Nのショートカットキーを押す方法もあります。

これで「無題のファイル」が作成されます。ここを書き換えると、ファイル名も変わります。

図5

右側のノートを作成するエリアでは、Markdown記法で自由にノートを記述できます。Markdown記法については、インターネット上に多くの記事がありますので、調べてみてください。

図6

どのようにノートを作成していけばうまく管理できるのかについては、次回に紹介します。

バージョン1.0で導入された新機能と改善

本記事は執筆時点で最新である1.0.3というバージョンの画面で解説しています。Obsidianの画面を見ると(上記の図を参照⁠⁠、ノートを作成するエリアがWebブラウザのタブのように表示されていることがわかります。これは、2022年10月にリリースされたバージョン1.0で追加された機能です。このように、新しい機能が次々追加されているのもObsidianの特徴です。

ここでは、バージョン1.0で導入された「タブ」「モバイルアプリの改善」について紹介します。

タブとタブスタック

現在では、多くのアプリが、複数のファイルをタブで切り替えて表示できます。Obsidianでも同様で、複数のノートをタブで切り替えられるようになりました。また、タブを右クリックして「ピン」を選ぶことで、特定のタブを固定することもできます。よく使うノートについては、タブを固定しておくと便利です。

図7

タブを切り替える部分の右端にある下向きの矢印アイコンを押すと、⁠Stack tabs」というメニューが表示されます。これを使うと、次の図のようにタブを縦に並べて表示できます。これにより、タブをスライドさせながら切り替えることも可能になりました。

図8

モバイルアプリの改善

バージョン1.0が出る前も、iOSやAndroid向けのアプリが提供されていましたが、日本語の入力などに少し不具合がありました。しかし、バージョン1.0にて大幅に改善され、スマートフォンやタブレット端末からもスムーズにノートを作成できるようになりました。

Markdownの入力を支援する機能もあり、スマートフォンの小さなキーボードでも入力しやすくなっています。上記で紹介したタブ機能も使えるため、複数のノートを開いて切り替えることもできます。

もし、モバイルアプリが問題でObsidianを避けていた方、スマートフォンでのメモアプリを探している方も、使い勝手を体験してみてください。

プラグインの導入

前回の記事では、他のMarkdownエディタが備える機能と比較したObsidianの特徴として「プラグインで拡張できること」を紹介しました。ここでは、どのようなプラグインが使えるのか、デフォルトで有効になっているものや私がよく使うものを紹介します。

コアプラグイン

Obsidianには「コアプラグイン」「コミュニティプラグイン」が用意されています。この「コアプラグイン」は標準でインストールされており、有効にするかどうかを利用者が選べるものです(デフォルトで有効になっているものもあります⁠⁠。どのプラグインが有効になっているかは、設定画面から確認できます。ここでは、デフォルトで有効になっているプラグインについて、その使い方を紹介します。

クイックスイッチャー

ノートを切り替える機能で、Ctrl+OCommand+O⁠」というショートカットキーで動作します(画面左端のアイコンにも表示されています⁠⁠。このショートカットキーを押すと、ファイル名を入力する画面が表示されます。ファイル名の一部を入力するだけで、ファイルが絞り込まれ、キーボードの上下キーで選択できます。また、最近使ったファイルから順に表示されるため、複数のファイルを交互に編集するときも便利です。

コマンドパレット

Obsidianが備える機能をキー操作で呼び出せる機能で、Ctrl+PCommand+P⁠」で動作します(画面左端のアイコンにも表示されています⁠⁠。よく使う機能はショートカットキーを覚えている人が多いものですが、普段使わない機能でも、コマンド名の一部を入力するだけで実行できます。

図9

デイリーノート

ファイル名として当日の日付を使ったノートを作成する機能で、画面左端のカレンダーアイコンで「今日のデイリーノート」を開けます。設定画面でファイル名の書式を変更できますが、デフォルトでは「YYYY-MM-DD」形式のファイル名で作成されます。日記のように使うこともできますし、当日のタスクを朝の時点で書き出しておいて、チェックリストとして作業の進捗を管理することもできます。詳しい使い方は次回に紹介します。

スター

お気に入りのノートを登録できる機能です。ファイル一覧の一番上に表示されている星のアイコンを押すと、登録したノートの一覧を表示できます。また、現在開いているノートを登録したり、解除したりすることもできます。よく使うノートを登録しておくと、ファイルの数が増えてもすぐにアクセスできます。

バックリンク

前回の記事でも紹介した、現在のノートにリンクしているノートの一覧を表示する機能です。ノート部分の右上にある「展開」アイコンを押すと、右端にバックリンクやアウトゴーイングリンクなどがあり、その「バックリンク」を押すと表示できます。

タグペイン

前回の記事では「階層的なタグ」を使えることを紹介しました。ノート中に使用したタグの一覧を表示する機能で、そのタグ名をクリックすると、そのタグを使ったノートの一覧を検索できます。これも上記のバックリンクと同様に、ノート部分の右上にある「展開」アイコンを押すと、その中の「タグペイン」で使えます。

テンプレート

統一感のあるノートを作成するときに有効な、テンプレートを作成できる機能です。たとえば、打ち合わせの議事録を作成するのであれば、場所や時間、参加者、内容など必ず記載すべき項目があります。この書式を定めておくと、効率よくノートを作成できます。

コミュニティプラグインとは

コアプラグインのように標準ではインストールされていませんが、追加でダウンロードして導入できるプラグインが「コミュニティプラグイン」です。世界中の開発者がオープンソースで開発しているもので、プログラミングの知識があれば自分で開発することもできます。

導入するには、設定画面から「コミュニティプラグイン」を選び、⁠コミュニティプラグインを有効化」を押します。

図10

そして、コミュニティプラグインの「閲覧」ボタンを押すと、公開されているさまざまなプラグインを一覧で表示できます。導入したいプラグインを選んで「インストール」を押すとインストールできます。インストールが完了すると、⁠有効化」というボタンを押すことで有効にできます。プラグインによっては設定が必要なものがありますので、その場合は設定画面の「コミュニティプラグイン」の一覧から設定を変更します。

便利なコミュニティプラグイン

Obsidianには膨大なプラグインが公開されていますが、ここでは私がよく使っているコミュニティプラグインをいくつか紹介します。

Calendar

上記で紹介したデイリーノートを作成すると、当日のノートにはアイコンをクリックするだけで移動できますが、特定の日付のノートに移動するには日付を指定してノートを開く必要があります。ここで便利なのが「Calendar」プラグインです。次の図のように月間カレンダーを表示でき、日付をクリックすることでその日のデイリーノートを開けます。

図11

また、デイリーノートにチェックリスト形式でタスクなどが記入されていると、その処理状況を日付の下に表示できることも特徴です。上記では右端にカレンダーを表示していますが、Obsidianではマウスでドラッグすることで配置を変更できるため、左のファイル一覧の部分などに移動することもできます。

Dataview

Obsidianで作成したノートをデータベースのように検索できる機能です。ノートの一覧などをSQLに似た構文で検索でき、箇条書きや表として結果を表示できます。

たとえば、ノート部分に次のように記述すると、⁠#keyword」というタグをつけたノートの一覧を箇条書きで表示できます。

```dataview
LIST FROM #keyword
```

また次のように記述すると、タイトルに含まれる日付で降順に並べ替えて上位10件を表形式で表示するといったことも可能です。また、SQLのようにWHEREを指定して条件をつけることもできます。

```dataview
TABLE file.day FROM #keyword SORT file.day DESC LIMIT 10
```

さらに、JavaScriptを使ってより高度な処理を記述することもできます。詳しくは開発者によるサイトをご覧ください。

Excalidraw

ノートに図を入れたいとき、一般的には画像を埋め込む方法が使われます。しかし、画像を作成してしまうと、少しだけ変更したいと思っても編集が面倒です。

Obsidianは標準でmermaid.jsが使えるため、フローチャートや円グラフなどであれば簡単に埋め込めますが、手書きで描いた図を埋め込めると便利です。

Excalidrawはオンラインホワイトボードのサービスで、Webブラウザさえあれば図を簡単に描けます。これをObsidianに埋め込めるのがExcalidrawのプラグインです。作成した図をMarkdownのノート内に埋め込むことで、Obsidianだけで編集もできます。次の図では、真ん中で編集したものを右側のノートに埋め込んで表示しています。

図12

Map View

ライフログのようなノートを作成するとき、訪問した場所に位置情報をつけて記録できると便利です。写真であればそのEXIF情報を使って撮影した場所を地図上にプロットできますが、これと同じことをノートでも実現したいものです。

このときに使えるのがMap Viewプラグインです。ノートの先頭(Markdownのフロントマター部分)に次のように位置情報を記入します。

---
location: [35.65863500945653, 139.74549799827892]
---

# 東京タワー

そして、左端に表示されるアイコンからMap Viewを開くと、地図にピンを表示してくれます。タグの内容などに合わせてピンのアイコンや色を変えることもできますので、ぜひ試してみてください。

図13

Obsidian Charts

標準で用意されているmermaid.jsを使っても簡単なグラフを描けますが、Markdownで書いた表からグラフを描いてくれると便利です。ここで役立つのがObsidian Chartsプラグインです。

たとえば、次のような表を用意します。そして、表のあとに「^」に続けて「sales」のように書くと、この表に「sales」という名前をつけられます。

|       | A支店  | B支店  | C支店  |
| ----- | ----- | ----- | ----- |
| 第1Q  | 12000 | 19000 | 8000  |
| 第2Q  | 14000 | 21000 | 10000 |
| 第3Q  | 13500 | 20500 | 12000 |
| 第4Q  | 15500 | 23000 | 14000 |
^sales

そして、次のように書くと、この表から図のようなグラフを生成できます。

```chart
type: bar
id: sales
layout: rows
beginAtZero: true
```
図14

このように、Obsidianを使うとMarkdownでノートを作成するだけでなく、プラグインでの拡張により機能を追加できることがわかります。次回は、Obisidianの本質であるノートについて、どのように作成していけばよいのか、その考え方を紹介します。

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