内閣官房小型無人機等対策推進室によれば、有人地帯における目視外飛行であるレベル4に向け、航空法改正が進められるなど活発な動きがあります。航空領域におけるドローン・サービス市場としては、インフラ点検、農業、物流、警備、航空撮影の順で拡大が予測されており、今後も日常的にドローンを目にする社会が近づいています。さくらインターネット研究所でも、その可能性をいち早く評価するため、水面領域での水上ドローンの試作・評価を行っています(図1)。
今まで見えていなかった水辺の環境を見える化・情報化することで、DX(デジタルトランスフォーメーション)で必要とされるシステム起動条件などの発見に期待があり、インフラ点検、水上輸送、水産業の高度化、水辺の観光資源化・注意喚起など、新たな社会を支える基盤作りに貢献できると筆者は感じています。航空分野でのドローンの活躍や技術革新に比べ、水辺の環境におけるドローンの技術革新や社会進出は、まだまだ発展途上であり、国内での研究活動等も多くはありません。たとえば、水中調査向けに水上ドローンを運用しようとする場合、水上ドローンの機械的な航行制御ロジックだけではなく、すでに存在する水辺の環境における法規やローカルルールに対応する必要性が考えられます(図2)。
水上ドローンという新たなデバイスができたことにより、さまざまなビジネス展開や活用性のアイデアは出てくるものですが、すでに存在するビジネス領域や商習慣などと整合性を図る必要性も考えられます。古くからあるアニメやSFの世界では、社会と共生するドローンやロボットの姿が描かれていますが、実現には社会からの好意的な受け入れ方、新たな商習慣の醸成が不可欠といえます。私たちエンジニアやリサーチャーは、システムの機械的な部分に着目しがちですが、「いままで世の中になかった事象」に着手するとき、視野を大きく広げて社会全体から俯瞰することも重要になっていくのだと筆者は考えます。