Googleを所管するアルファベット社の2022年第三四半期決算によれば、収益は約10兆円規模(1ドル=145円換算)で、約8割が広告収益で占められています。その他事業でも収益の約1割をGoogle Cloud事業が叩き出すなど、順調な成長が続いています。Eコマースに代表される広告から購買行動までデジタル上で完結する商習慣は、多くの利用者に受け入れられ、すでに一般化したと筆者は感じています。
総務省統計局の労働力調査のデータによれば、我が国における就業者数の推移は、過去から比べて全年齢で拡大が続いており、2000年付近に起こった産業構造の大きな変化以降も増加傾向です(図1)。インターネットやクラウド、その他産業の構造変化の中で、私たちの生活様式や働き方も大きく変化してきました。このような中で現在を起点として未来を正確に見通すためには、広い視点から俯瞰的に物事をとらえる必要があります。
経済産業省がまとめる電子商取引に関する市場調査報告書を題材にして、その考え方を見ていきましょう(図2)。株式会社電通によればインターネット広告は昨年、テレビ・ラジオ・新聞などの媒体を合わせた広告よりも市場規模が上回り、その影響力の大きさが顕著になりました。オンライン上での購買行動に目を移せば、生活を豊かにするため、もしくは体験を楽しむための消費が拡大を続けており、ひとつひとつがすでに大きな産業になっています。これらは、今後も続くデータセンター建設によりまかなわれる計算機資源により処理されていきますが、利用者の感情や行動をデジタル上から把握する技術は、今も再発見のある領域として存在し続けています。ソフトウェアによって起こる、デバイスを通じたほんの少しのユーザー体験の変化が、大きな産業を生む可能性のある世界に私たちは現在いるのです。誰のために、どんなサービスを行うか、その選択肢も無限にあります。本稿で最終回となりますが、読者のみなさんにより、今後もクラウドを通じた産業変革が続くことを期待します。