OSSデータベース取り取り時報

第91回「デジタル変革にはOSSをこう使ってくれ!」セミナー開催、MySQL日本語版公式ブログ開設、PostgreSQLアラカルト

この連載はOSSコンソーシアム データベース部会のメンバーがオープンソースデータベースの毎月の出来事をお伝えしています。

「デジタル変革にはOSSをこう使ってくれ!」をオープンソースカンファレンス2023 Online/Springにて開催

3月10日(金)と11日(土)の2日間、オープンソースカンファレンスがオンラインで開催されます。OSSコンソーシアムでは昨年の3月にも参加しました。今年もデータベース部会と他の部会とで参加し、1日目の3月10日に3枠連続のセミナーを実施します。OSSコンソーシアムのメンバの他、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)にも講演いただきます。また、この他にもOSSデータベース関連の発表が多数予定されています。

OSSコンソーシアム企画「デジタル変革にはOSSをこう使ってくれ!」

DXブームの中でデジタル化やIT活用は進みつつあるようです。しかし目指すべきはDXの本来の意味である「デジタル変革」を進めること。そして、ITのプロである私たちは、デジタル変革のためにOSSを含むITをどう役立てるかを理解し社会に提案していきたいものです。

この企画の第1部~第2部では、まずはDX(デジタル変革)に資する企業ITが満たすべき条件を踏まえ、その後にコンソーシアムメンバが取り組むOSSがデジタル変革にどの様に役立つのかを順番にお話しします。そして第3部では、取り組むOSS製品やジャンルを超えた講師陣により推進上の課題や将来像についてざっくばらんに議論します。

第1部から第3部の内容を簡単にお知らせします。

【第1部】レガシー刷新と攻めの変革の両立を目指して
前半は、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)によるDX推進施策とDX推進のためのコミュニティ活動であるDXITフォーラムを紹介いただきます。後半はオープンCOBOLソリューション部会メンバでもある東京システムハウスがopensource COBOLの活用やITモダナイゼーションサービスについて説明します。
【第2部】2大OSSデータベース: MySQLとPostgres
OSSデータベースのツートップであるMySQLとPostgreSQLがそろい踏みです。日本オラクルでMySQLを推進するメンバと、EDB Postgresを提供するEnterpriseDB(EDB)の代表に講演していただきます。
【第3部】座談会
第1部と第2部の発表者を中心にOSSコンソーシアムのメンバが加わって、デジタル変革が求められる中でOSSをどう活用したら良いか、どの様なOSS活用の提案をしたら良いのかなどを、座談会形式で議論します。

その他のOSSデータベース関連発表

オープンソースカンファレンス2023 Online/Springでは、その他にもOSSデータベース関連の発表が多数予定されています。この中で最大の注目は、この連載でも過去に経過をお知らせしてきた新データベースエンジン開発プロジェクト Project Tsurugi(劔)です。プロジェクトの成果である劔(Tsurugi)がいよいよリリース目前となり、今回2枠を使って説明されます。1日目の3月10日(金⁠⁠、上記の私たちOSSコンソーシアムの企画の前と後に2枠が配置されています。OSSコンソーシアムのセミナーとセットでお昼から連続してご聴講いただくことをお薦めします。

2日間にOSSデータベース関連ではざっと次の様なセッションが予定されています。

  • MySQL 8.0.32とMySQL HeatWave サービスアップデートご紹介
  • データベース劔(Tsurugi)について(2枠)
  • NoSQL/SQLデュアルインターフェースを備えた IoT向けデータベースGridDB ~ クラウドでGridDBを使ってみましょう ~
  • PostgreSQL最新動向 - 最新バージョン機能と開発動向について -

詳細はオープンソースカンファレンスのサイトをご覧ください。

なお、こちらの Online/Spring は3月10日~11日のオンライン開催ですが、別途4月1日には展示中心で会場開催されるTokyo/Springも予定されていますのでそちらにはぜひ足を運んでみてください。

[MySQL]2023年2月の主な出来事

2023年2月のMySQLの製品リリースはありませんでした。1月にリリースされたMySQL 8.0.32がMySQLのクラウドサービスであるMySQL HeatWaveでも利用できるようになりました。またMySQL Enterprise Editionで提供されている非対称暗号関数もMySQL HeatWaveで利用可能になりました。

これまでも技術情報や製品リリースを掲載していたMySQLの公式ブログに新たに日本語版のブログ⁠The Oracle MySQL Japan Blog⁠が登場しました。

MySQL日本語版ブログの画面
MySQL日本語版ブログ

英語版ブログの翻訳記事だけではなく日本語版独自のコンテンツも用意され今後も記事が増えていく予定です。

2023年2月掲載の日本語版の独自コンテンツ

NTTデータ先端技術がMySQL HeatWaveやMySQL製品の導入と運用保守を支援するサービスを開始

NTTデータグループにおける技術スペシャリスト集団であるNTTデータ先端技術株式会社がMySQL HeatWaveおよびMySQL製品の導入支援や運用支援をサービスとして提供開始することを2月13日に発表しました。

同社ではこれまでもオラクルとのパートナーシップの元でOracle DatabaseやOracle Cloud Infrastructureのお客様での導入支援や保守運用を支えるサービスを展開していましたが、これをMySQL HeatWaveをはじめとするMySQL製品に拡張したものとなります。ミッションクリティカルなシステムの運用も増えているMySQL製品を利用するお客様にとって、迅速な導入と効率的な運用につながるサービスとなっています。

MySQL HeatWaveのリードレプリカの利用に関するチュートリアル

2022年12月にMySQL HeatWaveに追加されたリードレプリカ(管理コンソール上の名称は読み取りレプリカ)Wordpressとを組み合わせた利用例がMySQLの日本語版ブログに掲載されています。このブログではOCIのTerraformプロバイダを利用してMySQL HeatWaveにあらかじめ必要なネットワーク設定やWordpressを動作させるVMの設定を行った上で、ユーザーがMySQL HeatWaveの構築やリードレプリカの設定を進められるようになっています。

ブログ記事の内容で構築されるWordpress+リードレプリカありのMySQL HeatWave構成
ブログ記事の内容で構築されるWordpress+リードレプリカありのMySQL HeatWave構成

MySQLのレプリケーションをベースとしたリードレプリカの機能を解説するウェビナーが3月2日に開催されます。このウェビナーでは他にもオンプレミスのMySQLや各クラウドのMySQL系のクラウドデータベースからのレプリケーションを可能とするインバウンド・レプリケーション、さらにレプリケーション対象のスキーマやテーブルのフィルタリングを行うレプリケーション・フィルターなどを紹介予定です。このウェビナーの内容をもとに、実際にOCI上のMySQL HeatWaveのリードレプリカなどの構築の体験ができるハンズオンも3月9日に開催されます。

[PostgreSQL]2023年2月の主な出来事

今回のPostgreSQLパートはアラカルト的にいろんな話題を盛り込んでみました。最新のバージョン15を含めてサポート対象であるすべてのメジャーバージョンのマイナーリリースが公開されましたので、まずこのリリースのお知らせをします。次に大手IT企業がPostgreSQLサポートを強化しているニュース。そして2月に開催されたコミュニティイベントを簡単に報告します。最後にOSSとDXの親和性について気になるブログ記事を見つけたので紹介したいと思います。

セキュリティ脆弱性の修正を含むPostgreSQL 15.2他がリリース

サポート対象であるすべてのメジャーバージョンのマイナーリリースが公開されました。このリリースでは60件を超えるバグの修正がされていますが、セキュリティ面の脆弱性の修正も1件入っています日本PostgreSQLユーザ会の情報⁠。修正されたセキュリティ脆弱性は「CVE-2022-41862: Client memory disclosure when connecting, with Kerberos, to modified server 」で、Kerberos接続の際にクライアント側のメモリ内容がサーバ側から露出させられる恐れがありました。なお、この脆弱性修正の対象はバージョン12から15とのことです。

なお、以前にもお知らせしましたが、バージョン10はサポート対象期間を終了していますので、バージョン10のバグ修正版は公開されなくなっています。ご注意ください。

NECがPostgreSQLの長期利用を可能にするサポートサービスを開始

現在、PostgreSQLは大手ITベンダの多くからサポートサービスや独自に機能拡張した製品が提供されていて、PostgreSQLが業界横断で共通して取り扱われているデータベースになっています。次のセクションで紹介するPostgreSQLエンタープライズ・コンソーシアム(PGECons)で活動している企業群を見てもそのことがわかります。今回、日本電気(NEC)からPostgreSQLのサポートサービス強化の発表がありました。

本番運用しているサービスで使用しているデータベースシステム(DBMS)のバージョンアップは、PostgreSQLに限らず常に悩ましい課題です。安定稼働していて新しい機能を特に必要としていない場合には、使用中のメジャーバージョンを使い続けたいと考えるケースは少なくありません。しかし、バグやセキュリティ脆弱性などの修正プログラムが提供されるサポート期間はいつかは終了することになります。

NECでは、PostgreSQLの開発コミュニティのサポート期間の終了後にも、パッチ(修正プログラム)を提供するサービスを2月17日に発表しました。また、後続のバージョンでセキュリティに関する情報が出た際にはその前のバージョンへのバックポートも行われるとのことです。提供サービスにはいくつかの種類(レベル)があり、対象となるPostgreSQLのバージョンや稼働環境などが決まっているので、詳細はNECの「PostgreSQLサポートサービス(パッチサービス⁠⁠」のWebページを参照してください。

2月10日のPGEConsセミナー『IT/デジタル化の変革を理解し、次世代に生き残れる企業を確立する為には』より

この連載の前回にお知らせしたPostgreSQLエンタープライズ・コンソーシアム(PGECons)セミナーが2月10日に開催されました。PGEConsの冬のイベントでは、テーマを設定して講師をお招きして講演をしていただきます。ここでは今年のセミナーで印象に残った点をいくつかピックアップして報告します。

IT/デジタル化の変革を理解し、次世代に生き残れる企業を確立する為には
CIO Lounge 矢島理事長による特別講演です。PostgreSQLに特化した内容ではありませんが、DX(デジタル変革)が求められる現在に求められることや、見直すべきことを改めて考えさせられる講演でした。講演全体を通して流れるメッセージは、⁠ITが企業経営の役に立っているのか/経営者はITを役立てることができているのか」ということかと思います。コロナ禍の中でIT活用やデジタル化が進んだ面もたしかにあるのですが、これも経営主導とは言えずに結局は新型コロナという外圧で進んだだけでは無いのかという指摘が印象に残りました。また、企業ITの分野では過去30年とか40年とかの中でいろいろな統一が叫ばれてきましたが、統一したいのがデータなのかプロセスなのかちゃんと考えているのかという指摘にもハッとさせられます。
普段はPostgreSQLなどのDB技術に主に取り組んでいるエンジニアの皆さんも、ひとつ上のレイヤ(層)のことを考える良い機会だったのではないかと思います。この特別講演の資料はPGEConsのWebサイトで公開されていますので、是非ご参照されることをお薦めします。
関電システムズ様に訊く!聖域なきPostgreSQL普及への取り組み内容について!
PGEConsメンバとの対談で進められました。対談形式であったからこそ現場で苦労されているご担当の奮闘ぶりが感じられたセッションです。電力という公共サービス特有のコスト抑制の必要性。そしてコストとトレードオフにならざるをえない機能や性能への確実さにも対応しながら、商用DBからPostgreSQLへの切替を進められた際の苦労と工夫を、臨場感あるお話として聞くことができました。このセッションについては一般に公開になっていませんので詳しくご報告することはできません。次回以降のPGEConsのイベントには実際にご参加いただくことをお勧めします。

EDBブログ「政府がオープンソースソフトウェアで選択肢を拡大する方法」

2月20日、EDBブログに「政府がオープンソースソフトウェアで選択肢を拡大する方法」という記事が掲載されました。これはウェビナー(英語)の開催後の要約記事です。ちょうど、前述のPGEConsイベントで公共サービスでのPostgreSQL活用の講演を聴講した後でもあり、電力事業と政府とは同じではないものの通じる点がありそうに感じて関心を持ちました。⁠なぜ政府はオープンソースソリューションの採用をためらってきたのか」という観点は、OSSを推進する立場として気になる点です。またウェビナーの中で「デジタル変革に取り組んでいる組織にOSSが適している理由」を述べている点は、冒頭で紹介したオープンソースカンファレンスでのセミナー企画「デジタル変革にはOSSをこう使ってくれ!」と通じています。よろしければ、上記のブログ記事とそこからリンクしているウェビナーなどをご参照ください。

2023年3月以降開催予定のセミナーやイベント、ユーザ会の活動

オンサイト(会場)開催が復活しつつあります。また、利便性のあるオンライン開催もこの3年間で定着しつつあり、オンサイト/オンライン/ハイブリットが混在するようになってきました。興味を持たれて参加したいイベントの開催形態にご注意ください。

高可用性・性能がアップデート!MySQL HeatWave最新情報

日程 2023年3月2日(木)16:00~17:00
場所 オンライン(Zoom)
内容 MySQLのクラウド・データベースであるMySQL HeatWaveの高可用性と性能を向上させるレプリケーションに関する機能をご紹介するウェビナーです。MySQL HeatWaveの高可用性構成の根幹となる技術はMySQLのグループレプリケーションです。
またMySQL HeatWaveには複数ノードによる負荷分散によって参照処理性能を向上させるリード・レプリカが2022年12月に追加されました。
オンプレミスやクラウド上のMySQLサーバーをレプリケーション元として利用できるインバウンド・レプリケーションやMySQLから派生したクラウド・データベースからのレプリケーションのためのレプリケーション・フィルターも利用可能となっています。
主催 日本オラクル株式会社 MySQL Global Business Unit

レガシーUNIXやデータベースからの脱却! DX/モダナイゼーションの第一歩

日程 2023年3月8日(水)14:00~15:00
場所 オンライン開催
内容 俊敏性を欠くITインフラストラクチャーからの脱却とその上で利用されてきたアプリケーション、データを現代のビジネスが求めるスピードの中で活用するためのモダナイゼーションの方向性とその手法にフォーカスを当て、アプリケーションのモダナイゼーション、データベースアセットの移行とオープンソースDB化、インフラストラクチャーとデータベース運用のクラウド化のノウハウ・ツールについてご紹介します。
主催 エンタープライズDB株式会社、ニュータニックス・ジャパン合同会社、レッドハット株式会社 による共催

MySQL HeatWaveハンズオン「MySQL HeatWaveのレプリケーション機能を使ってみよう」

日程 2023年3月9日(木)15:30~18:00
場所 オンライン(Zoom)
内容 3月2日のウェビナーで解説した内容を実際に構築して体験するイベントです。
⁠MySQL HeatWaveのレプリケーション機能を使ってみよう」をテーマにMySQL HeatWaveの高可用性構成や参照処理性能の負荷分散を従来型のレプリケーションで実現したリード・レプリカなどをOCI上で構築するハンズオンとなっています。
ご参加のお客様には無料でMySQL HeatWaveやOCIのサービスをご利用いただけるトライアル用のクレジットをご提供いたします。
主催 日本オラクル株式会社 MySQL Global Business Unit

オープンソースカンファレンス 2023 Online Spring

日程 2023年3月10日(金⁠⁠・11日(土)10:00~18:00
場所 オンライン開催(ZoomおよびYouTube Live)
内容 オープンソースカンファレンスは、オープンソースの「今」を伝える総合イベントとして、東京だけでなく、北は北海道、南は沖縄まで全国各地で開催しています。2020年春からオンライン中心で開催しており、この2023Online/Springはその名のとおりオンラインです。
記事本編で紹介したように、OSSコンソーシアムでは企画セミナー「デジタル変革にはOSSをこう使ってくれ!」を開催します。また、その他にもOSSデータベース関連セッションが多数予定されています。また、2日目のライトニングトーク終了後にはオンライン交流会&懇親会も開催されます。
なお、この「Online/Spring」とは別に、4月1日には会場開催の ⁠Tokyo/Spring」が予定されていますのでお気を付けください。
主催 オープンソースカンファレンス実行委員会

オープンソースカンファレンス2023 Tokyo/Spring

日程 2023年4月1日(土)10:00~16:00
場所 東京都立産業貿易センター台東館 7階(東京都台東区)
内容 3年ぶりで待望のオープンソースカンファレンスのオンサイト(会場)開催です。上述の「Online/Spring」はセミナー中心ですが、こちらの「Tokyo/Spring」はセミナーは設けられていません。ブース展示のみです。また公式の懇親会もありません。けれど久しぶりに対面で顔の見える交流が行えます。ぜひ会場に足を運んでください。
主催 オープンソースカンファレンス実行委員会

MySQL TechXchange Japan vol.2: なぜMySQL Enterprise Firewallを導入するのか

日程 2023年3月16日(木)16:00~17:00
場所 オンライン(Zoom)
内容 MySQLや各種のデータベースをお使いのお客様の課題をテーマにMySQLのエンジニアが営業チームとの対話形式で進めるウェビナー。第2回のテーマは「なぜMySQL Enterprise Firewallを導入するのか」です。重要なデータが蓄積されたデータベースに対する代表的な攻撃であるSQLインジェクション対策となるMySQLのデータベース・ファイアウォール機能のビジネス的な重要性について解説します。
主催 日本オラクル株式会社 MySQL Global Business Unit

第40回 PostgreSQLアンカンファレンス@オンライン

日程 2023月3月16日(木)20:30~23:00
場所 オンライン開催
内容
  • 初心者による「使ってみた/動かしてみた」
  • 中級者による「こういうノウハウ使ってる」
  • 上級者(?)による「こういう拡張してみた」
その他、PostgreSQLに関連する話題であれば何でもOK!アンカンファレンス形式なので、何が出るかは当日参加してのお楽しみ。
主催 PostgreSQLアンカンファレンス

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