RemNoteで実践する知的な情報整理術

複雑な思考はアウトラインで構造化! ~RemNoteの高度な使い方を可能にする「テンプレート」機能と「検索ポータル」機能

RemNoteを利用するのに慣れてくると、日々思いついたこと、目にしたウェブサイトのリンク、覚えておきたい用語や概念といったものがしだいにそこに降り積もっていきます。アウトラインを使って思考するのにも慣れてくるはずです。

そうすると、もっと情報を構造化して整理できると便利だと気づきます。繰り返し利用する似た情報は常に同じ形式で記述したり、すでに作成した項目を別の場所で引用したりといったようにです。

今回はこうした情報の構造化に役立つRemNoteの高度な使い方、⁠テンプレート」「ポータル」について、そしてそれを検索する方法についてみてみましょう。

考えを「構造化」するとは?

多少抽象的な機能の解説に入る前に、RemNoteを使って情報を構造化している実例についてみてみましょう。たとえば以下は、私が最近読んだ本についてメモをとっているRemNoteのドキュメントです。

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一般的な読書ノートとも、紙の手帳やレポート用紙を使ってメモをとるのとも、様子がちょっと違いますね。

まず、ドキュメントの表題には本の著者とタイトルが入っていて検索して探しやすくしてあります。その下には「書誌情報」⁠登場人物」⁠あらすじ(この本の場合は旅のルート⁠⁠感想」といったように項目が設けられ、その下にそれぞれ箇条書きで情報がぶらさがっています。

情報の整理の仕方は自由ですのでこれが唯一の方法ではありませんが、構造化している状態についてのヒントとしてわかりやすいかと思います。これは私が本を読んだあとで半年もすると登場人物や基本的なあらすじすら思い出せないという悩みを解消するためにまとめているものですので、こうした構造をとっているのです。

本ならばこのような形ですが、会議の議事録、企画書のブレインストーミング、とりかかっているToDoの一覧表、講義録といったように、目的に応じてドキュメントの形はさまざまになります。

それではこうしたドキュメントを効率的に作ったり、そこから情報を取り出すことを念頭において、RemNoteで情報を整理するのに便利な機能をご紹介しましょう。

情報をオブジェクトのように扱う「テンプレート」機能

プログラミングをする人ならば「オブジェクト指向」の考え方に馴染んでいると思います。ある機能や概念を「オブジェクト」として抽象化しておき、あとでそれを何度も具体化して利用するプログラミング上の仕組みを指す言葉です。

RemNoteのようなPKMツールでも、オブジェクトに似たような構造をあらかじめ定義し、繰り返し再利用ができます。それが「テンプレート」です。

たとえば本について繰り返しノートを取ることが多く、その都度「タイトル」⁠著者名」⁠出版社名」といった項目をつくるような場合は、⁠書籍」の概念を表現するテンプレートを作り、それを毎回呼び出せます。さきほどの本の例で「書誌情報」の下にまとめられていた項目はこの機能を利用していました。

テンプレートを作るには、まずテンプレートの題名にしたい項目(この例では「書籍⁠⁠)を作り、その下に子供の項目(この例では「著者名」⁠原題」⁠出版社名」⁠訳者」⁠出版年⁠⁠)を入力していきます。

これらの子供の項目は具体的な情報の入力欄に置き換える必要があります。この入力欄は「スロット」と呼ばれていて、カーソルをその項目に移動してCtrl + Alt + Sのショートカットか、/キーでメニューを呼び出してから「Slot」コマンドを呼び出して設定できます。

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それではこうして作ったテンプレートを実際に使用してみましょう。たとえば『族長の秋』という本について書いた項目に「書籍」のテンプレートを適用するには、その項目にこの定義した「書籍」のタグを付けます。

タグを付けるには/キーでメニューを呼び出し、tキーでタグ機能を呼び出します。入力欄にテンプレート名「書籍」と入力すれば完了です。

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一見、なにも起こっていないようにみえますが、項目に「書籍」のタグがつくとともに数字が点灯しているのが見えるでしょうか。この数字をクリックすると、上で定義したスロットが表示され、追加できるようになります。ひとつずつ選択してもいいですし、すべてのスロットを追加したいならば「Add All Slots」を選択します。

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テンプレートを適用したあとで、すべての欄に情報を入れた様子が次のようになります。こうした項目が100個、200個と増えていくと、⁠書籍」のタグで検索しただけで本に関わる項目がすべて表示されますし、そこから「著者名」⁠出版年」で絞り込みをかけることも可能です。

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書名をただ書いておくだけでなく、こうした関連情報をぶら下げておけば情報に「コンテキスト」= 文脈が生まれます。そうした情報が増えてくると「推理小説に言及したすべての箇所を探す」といった、文脈を意識した情報の深堀りが可能になるのです。

情報への抜け穴を用意する「ポータル」

RemNoteにはある場所に書かれている情報を別の場所に表示するための機能もあります。

たとえば定義をなかなか思い出せない専門用語を忘れないようにするために、普段からRemNoteに箇条書きのメモを残していたとします。あとでその用語にふれる話題についてのメモを書いていたとして、その意味を注釈のように用語集のほうから呼び出せると、いちいち用語集のドキュメントといったりきたりする必要がありません。こうしたときに使うのが「ポータル」機能です。

たとえば、もともと「魔術的リアリズム」の話題についてメモをとっている項目が次のように存在したとしましょう。

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さきほど入力した書籍『族長の秋』はこの「魔術的リアリズム」で書かれた作品として有名ですので、そうした話題にそのメモで触れたいとします。そのとき、この「魔術的リアリズム」の項目にポータルを開いておいて、すぐに見えるようにしておきます。

ポータルの項目を追加するには、任意の場所で括弧を二重に入力した((のキー入力をおこないます。すると入力欄が表示されますので、任意の項目をここから呼び出します。

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すると次のように、最初に用意してあった「魔術的リアリズム」の項目が書籍についての説明から見えるようになります。RemNote内の別の場所にまるで「ポータル = 扉」を開いているのでこの名前が付いている機能です。ポータルであることを示すために、青い枠が表示されているのでわかりやすいですね。

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ポータル機能が面白いのは、ポータルに対する編集は元データに対する編集と同じである点です。ポータル内の記述を書き換えれば、元データも、同じ項目を参照しているポータルも、すべて変更されます。

ポータルにはさまざまな利用方法があります。たとえば連続している講義に出席しているとして、一回目の講義をとあるドキュメントにまとめたとしましょう。二回目はその続きになりますが、このとき二回目のドキュメントの冒頭に一回目のドキュメントへのポータルを作っておけば、話題を連続して見られるようになります。

また、非常に長いプロジェクトリストを維持しているひとが、ブレインストーミング用に編集しているメモにその一部だけをポータルとして参照して、ポータル越しにタスクを追加していくといった利用方法もあります。

検索ポータルで情報を絞り込む

RemNoteに入れた情報はどのように検索して取り出せばいいのでしょうか。

PKMツールの良さは、情報がどのように整理されていたりつながっていたりするのかをふだんはあまり意識せずに入力していても、他のメモに対するリンクやバックリンクを作っているうちに自然に情報の網目が生まれるところです。こうしたつながりを検索で取り出せれば、それはRemNoteを使って記憶を呼び起こしているのと同じで、とても強力な利用方法になります。

まず、単純なテキスト検索から始めてみましょう。RemNoteの左上にある検索窓か、Ctrl + Pのショートカットを利用すれば、入力した全データに対する検索を行えます。シートカットがよくあるCtrl + Fではないことに注意してください。Ctrl + Fのショートカットを使っても検索窓は開きますが、こちらはいま開いているドキュメントの中だけの検索になります。

たとえば次のように「SNS」といったキーワード検索をしてみると、⁠Mastodon」「Twitter」といったドキュメントにテキストが存在しているのを見つけられます。この表示順はアルゴリズムによって決まっており、検索ワードが表題となっているドキュメントや最近更新されたものなど、重要性が高いものが高い順位で表示されるようになっています。

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より高度な検索をおこなうには、⁠検索ポータル」の機能を使います。これはいくつかの条件で情報の絞り込みができるだけでなく、情報の参照関係を使った検索も可能です。

例として、次のような参照関係をもっている複数のドキュメントがあると考えてみましょう。たとえば「Twitter」というドキュメント内には「ツイッターは短文を投稿できるSNSである」といったようにメモが書かれていて、⁠SNS」がその項目へのリンクになっている関係です。

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ではまず、検索ポータルを作ってドキュメントに埋め込んでみましょう。それには/キーを押してコマンドを検索できるようにしてからsearch portalと入力するかispと略号を打ってからエンターキーを押してみます。

すると、次のような検索欄がドキュメントに埋め込まれます。この欄は検索結果が表示されるポータルになっていて、結果は常に動的に変化します。いちいち検索し直さなくても、結果の表示が常に最新に更新されるわけです。

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では実際に検索をしてみましょう。フィルターアイコンをクリックして、⁠Has Reference To」「SNS」を指定すると、⁠SNS」というドキュメントを参照しているドキュメントがすべて表示されます。

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利用できるフィルターはさまざまにあります。例えば「〜でタグ付けされている」⁠〜と関連している」⁠〜の子供項目である」といったように、ドキュメント同士の関係で情報を絞り込めます。

フィルターは複数用意して、⁠AND/OR」で論理的な包含関係も作成できます。また、フィルターした結果に対して二次的なクエリーを設定したり、さきほど登場したテンプレートのスロットに対する検索で絞り込んだりもできます。次の例の場合、⁠SNS」に対して参照がある項目を絞り込んでから、それらのうち「分散化」への参照がある項目を絞り込んでいます。

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検索クエリーは非常に強力ですが、まだまだ開発中の機能でもありますので、期待通りに動かないケースも多少あります。うまく動作する組み合わせを模索しつつ、明らかに期待通りに動かないケースについては開発元に報告すると反応をもらえるはずです。

RemNoteで知識の網目を作っていく

これらの機能を駆使すれば、ふだん扱っている情報を構造化し、あとで利用しやすし形で蓄積できます。たとえば卒業論文や研究論文を書いている人ならば、情報の単位は書籍や論文です。その場合はたとえば:

  • 論文や書籍の題名
  • 論文の書籍の著者
  • 書誌情報
  • 気になった箇所と抜き書き

といった情報の断片を数多く蓄積するはずです。最初の3つは今回みてきたテンプレート機能で実現できますし、ある程度情報があつまってきたら抜き書きだけが並んでいる検索ポータルを作って、情報を横に串刺しして調べられます。

ふだんから「Twitter? それはSNSに関連しているはずだ」⁠Mastodon? それは分散化に関係している」といったように情報が他のどの情報に関係しているのかをリンクしていれば、情報を利用する段階で逆に「分散化に関係するメモをすべて表示せよ」と検索すれば「Twitter」「Mastodon」が互いに関連している様子が浮かび上がります。

こうして常に情報をリンクし、繰り返している部分があったらテンプレートを用意し、検索ポータルで情報を絞り込むことを意識するようになると、RemNoteの高度な使い方ができるようになってくるでしょう。

では次回、最終回ではここまでみたさまざまな機能を使って、実際にある程度大きな情報のデータベースを作り出すためのワークフローについてご紹介します。また、RemNoteを効率的に使うのに便利なプラグインについてもみていきましょう。

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