IoTのビルディングブロックをこれからも拡げていく ―ソラコム⁠4年ぶりのオンサイトカンファレンス「SORACOM Discovery」iSIM対応モジュールやデータウェアハウスサービスなどを発表

「4年ぶりに対面でカンファレンスを開催できることになって本当にうれしく思っている。皆さんに喜んでもらいたくて、今回は全部で9本のアップデートを用意した」― 7月5日、6日の2日間に渡り、オンラインと対面形式で開催されたソラコムの年次カンファレンス「SORACOM Discovery 2023 Connect/Reconnect」では、冒頭のソラコム 代表取締役社長 玉川憲氏のコメントの通り、実に9本ものリリースがカンファレンスにあわせて発表されました。本稿ではそのアップデートの概要を紹介するとともに、2015年9月の創業からまもなく8年を迎えようとしているソラコムが、IoTプラットフォーマーとしてどんなアプローチを取ろうとしているのかを見ていきたいと思います。

「SORACOM Discovery 2023 Connect/Reconnect」で挨拶するソラコム 代表取締役社長 玉川憲氏
ソラコム 代表取締役社長 玉川憲氏

ソラコムがDiscovery 23で新たに発表した内容は以下となります。

  • IoT通信プラットフォーム
    • ブラジル市場に特化した「planP2」
    • iSIMの商用化と対応モジュール
  • 衛星通信
    • Skyloと協業し、3GPPリリース17準拠のIoT向け衛星通信に参入
    • 「STARLINK BUSINESS」の取り扱いを開始
  • VPG(ネットワークサービス⁠
    • ルータ配下のIoTデバイスに直接閉域接続可能なSIMベースルーティング機能
  • 生成AI
    • ChatGPTを活用してIoTデータを分析する「SORACOM Harvest Data Intelligence」
    • 松尾研究所と「IoT × GenAI Lab」を設立
  • 新プラットフォームサービス
    • メディア転送サービス「SORACOM Relay」の提供開始
    • 分析基盤(DWH)サービス「SORACOM Query」の検証目的の受付開始

以下、それぞれのアップデートについて、簡単に紹介します。

IoT通信プラットフォーム

ソラコムが創業したのは約8年前の2015年9月のことです。そのとき最初のサービスとしてローンチされたIoT通信サービス「SORACOM Air」は、1枚から購入できるSIMカードとクラウド連携によるデータ転送機能やWeb/APIによる管理機能など、従来のIoTサービスには見られなかった使いやすさが高く評価され、現在でもソラコムのビジネスを象徴するサービスとして進化が続いています。

2015年9月から提供を続ける「SORACOM IoT SIM」カードはすでに170以上の国/地域をカバーするグローバルSIMに成長、回線数も500万を突破した
2015年9月から提供を続ける「SORACOM IoT SIM」カードはすでに170以上の国/地域をカバーするグローバルSIMに成長、回線数も500万を突破した

SORACOM Airのデフォルト回線は世界162ヵ国/328キャリアをカバーするグローバルIoT SIMカード「SORACOM IoT SIM」を使った「plan01s」で、ユーザはサブスクリプションコンテナ機能を活用することで、利用場所に応じたカバレッジや料金の最適化が可能になっています。

SORACOM IoT SIMカードのデフォルト回線プラン「plan01s」
SORACOM IoT SIMカードのデフォルト回線プラン「plan01s」
サブスクリプションコンテナを使うことで、plan01sに加えて、利用場所に適したサブスクプションプランを選択できる
サブスクリプションコンテナを使うことで、plan01sに加えて、利用場所に適したサブスクプションプランを選択できる

このサブスクリプションプランにはこれまで日本向けやアジア向け、米国向けが用意されていましたが、今回、ブラジル向けサブスクリプションプラン「planP2」の提供がLimited Previewとして開始されました(要問い合わせ⁠⁠。これはブラジルや中国、トルコなど「パーマネントローミング規制」⁠90日を超える、ローミング接続によるIoTサービスの提供が原則禁止)を適用している国や地域でビジネスを展開するユーザの要望を受けてのローンチで、ソラコムがユーザに代わって現地キャリア(TIM Brazil 2G/3G/4G/NB IoT)と契約することで、ユーザの負荷をオフロードしています。玉川氏は「世界には全部で196の国がある。そのすべてを⁠コンプリ⁠したい」とコメントしており、パーマネントローミング規制があるブラジル向けサブスクリプションのローンチはその⁠コンプリ⁠に向けた本格的な第一歩といえるでしょう。

パーマネントローミング規制の国への最初の対応としてブラジル向けのサブスクリプション「planP2」を提供開始
パーマネントローミング規制の国への最初の対応としてブラジル向けのサブスクリプション「planP2」を提供開始

IoT通信プラットフォームに関するもうひとつの発表が、SIMの次世代技術である「iSIM(integrated SIM⁠⁠」の商用化とその対応モジュールの提供開始です。iSIMは従来のセルラー通信において、独立したコンポーネントとして存在していた通信モジュールとSIMをワンチップに統合(integrated)もので、SIMがこれまで抱えてきた物理的な課題を解決し、IoTデバイスの省スペースや低消費電力、低コストなどを実現する技術としてウェアラブルデバイスなどでの実装が期待されています。

次世代SIMテクノロジとして注目されるiSIM。通信モジュールとSIMをワンチップで実装できるため、省スペースや低消費電力など、SIMの物理的課題の解決が期待される
次世代SIMテクノロジとして注目されるiSIM。通信モジュールとSIMをワンチップで実装できるため、省スペースや低消費電力など、SIMの物理的課題の解決が期待される

ソラコムは2017年からiSIMの実証実験を進めてきましたが、今回、iSIM対応モジュールとしてQuectel「BG773」および村田製作所のType 1SC」にplan01sをプリインストールし、サブスクリプションコンテナ機能にも対応させ、ソラコムの商用サービスとして提供することが決定しました。発売開始は2023年内を予定しており、ソラコム仕様のiSIMサービスとしての提供が待たれます。

2023年内にソラコムの製品としてplan01をプリインストールしたiSIM対応モジュールを発売する予定。デバイスパートナーはQuectelと村田製作所
2023年内にソラコムの製品としてplan01をプリインストールしたiSIM対応モジュールを発売する予定。デバイスパートナーはQuectelと村田製作所

衛星通信

ソラコムは創業時から「IoTの民主化」を掲げ、世界中のあらゆるデバイスをつなぐことにフォーカスして事業を展開してきました。1年前ののDiscovery 2022でテクノロジプレビューとして発表された衛星メッセージングサービスもその一環であり、セルラーでカバーできないエリアに対して衛星を利用したIoT通信を提供しようとする取り組みです。今回、このIoT向けの衛星通信を拡大する施策として、3GPPリリース17準拠のSkylo Technologiesとも協業を発表しました。これによりNB-IoT(Non Terrestrial Network: 非地上系ネットワーク)対応の衛星通信事業者であるSkyloのモジュールを使えるようになるので、セルラー通信と衛星通信の両方に対応できるようになり、衛星通信にソラコムのクラウド連携サービスを組み合わせることなども可能になります。このサービスに関しては現在、2023年度末に検証目的で利用可能なテクノロジプレビューの受付開始を準備中とのことです。

IoTデバイスのセルラー通信向けに開発されたLTE規格「NB-IoT」に対応した衛星通信事業者のSkyloと提携、セルラー通信も衛星通信も両方ともソラコムで対応可能に
IoTデバイスのセルラー通信向けに開発されたLTE規格「NB-IoT」に対応した衛星通信事業者のSkyloと提携、セルラー通信も衛星通信も両方ともソラコムで対応可能に

Skyloの共同創業者でありCTOのアンドリュー・ナトール(Andrew Nuttall)氏は「我々のミッションである⁠つながらないモノをつなぐ⁠という同じ志をもつソラコムと協業できることをうれしく思う」とエンドースを寄せていますが、この⁠同じ志をもつ⁠パートナーとともに世界をつないでいることも、ソラコムの創業以来から変わらない姿勢でもあります。

衛星通信のアップデートとしてはもうひとつ、SpaceXの衛星ブロードバンドインターネット「Starlink」の法人/自治体向けのパッケージ「SORACOM STARLINK Businessキット」も発表されました。これはソラコムの親会社であるKDDIが提供する「STARLINK BUSINESS」の再販パッケージですが、Starlinkの個人ユーザでもある玉川氏の「ただ再販するだけではおもしろくない」という意向で、Starlinkの標準キット「HPタイプStarlinkキット」にSORACOM対応のWi-Fiルータ機器とセキュアリンクサービス「SORACOM Arc」がパッケージングされています。これによりStarlinkの衛星通信サービスを使ったIoTシステムを構築すると、仮想SIMを通じてSORACOMの各種クラウドサービスと連携できるようになり、さらにStarlinkシステムとLTE/5Gとの冗長構成も可能になります。提供開始は2023年夏が予定されており、SORACOMとStarlinkの両方を使ったユースケースの登場も待たれるところです。

SpaceXの衛星ブロードバンドサービス「Starlink」の法人向けビジネス「STARLINK BUSINESS」(KDDI)をSORACOMサービスも利用できるようにして再販へ
SpaceXの衛星ブロードバンドサービス「Starlink」の法人向けビジネス「STARLINK BUSINESS」(KDDI)をSORACOMサービスも利用できるようにして再販へ

VPG(Virtual Private Network)

SIMカード1枚から購入できる手軽さが評価されてきたソラコムですが、一方で数千~数万回線を超える大規模接続ユーザ向けのサービスも拡充を続けており、そのひとつである閉域網接続サービスのVPG(Virtual Private Gateway)は、最近では10万回線を超える大規模な閉域網接続のリクエストも増えています。そうしたニーズに応えるため、ソラコムは今回、VPGのアップデートとして以下を発表しました。

  • 「VPG Type‐F」の収容回線数上限を1万から10万に
  • 回線数による料金テーブルを廃止(10万回線まで一律で月額4万920円に)
  • 10万回戦以上の大規模IoTシステムに対応した「Type‐G」を新設
  • VPGの情報表示(VPG IPアドレスレンジ、オンラインのセッション数)
IoTデバイスと自社システムを閉域で接続するソラコムの閉域網サービス「Virtual Private Gateway」は製造業や流通など、インターネットに接続できない環境にある業界でのニーズが高く、さらに大規模接続を望むユーザが多い
IoTデバイスと自社システムを閉域で接続するソラコムの閉域網サービス「Virtual Private Gateway」は製造業や流通など、インターネットに接続できない環境にある業界でのニーズが高く、さらに大規模接続を望むユーザが多い

さらにVPGのユースケースが多い製造業などに向けた新機能として「SIMベースルーティング」が追加されました。これは工場などローカルネットワーク(閉域網)のルータ(SORACOM IoT SIM入り)の配下にあるデバイスに対し、VPG経由で別の閉域網から直接アクセスできる機能で、ポートフォワードなどを再設定する必要がなくなります。プライベートIPアドレスが割り振られた大量のデバイスを一括でリモートメンテナンスしたり、ある工場のPCから別の生産現場のカメラをチェックするなどが簡単にできるようになり、大規模IoT通信のあり方を変えるケイパビリティとして今後の新しいユースケースが注目されます。

VPGの新機能「SIMベースルーティング」はNATの設定などを行うことなく、閉域網のデバイスに直接アクセスが可能に
VPGの新機能「SIMベースルーティング」はNATの設定などを行うことなく、閉域網のデバイスに直接アクセスが可能に

生成AI

「IoTはテクノロジの進化によって使い道が拡がってくる。そして現在、進化をドライブする存在のトップが生成AI(Generative AI)だと思っている」―2023年に入ってから世界中で急速に認知が拡大した生成AIについて玉川氏はこうコメントし、ソラコムとしても生成AIに投資していく姿勢を見せています。たとえば3月からの従業員の福利厚生として「ChatGPT Plus」の利用料金を全額補助しているのもそうした施策のひとつです。

Discovery 2023では生成AIのサービスへの機能実装として、IoTデバイスからのデータを時系列で収集/蓄積し、データの可視化までを実現する「SORACOM Harvest Data」に、AI(ChatGPT)によるワンクリック分析機能「SORACOM Harvest Data Intelligence」がパブリックベータとして発表されました。SORACOM Harvest Dataの画面に表示された「AIに聞く」ボタンをクリックするといくつかの質問(⁠⁠データについて説明してください」⁠このデータには欠損値がふくまれていますか」など)が表示されるので、それらの質問をクリックすると、AIによる時系列データ分析結果を自然言語で受け取ることができます。時系列データから読み取れる異常値、トレンド、欠損データなど、データに関する洞察をワンクリックで得ることができ、さらに分析結果に対して追加の質問を対話形式で行うことも可能です。なおAI部分には「Microsoft Azure OpenAI Service」で提供されるモデル「GPT-35-Turbo」が使用されています。

SORACOM Harvest Dataの画面にChatGPTをラップした「AIに聞く」ボタンがSORACOM Harvest Data Intelligenceとして実装、時系列データから解析したトレンドや異常を自然言語で説明する
SORACOM Harvest Dataの画面にChatGPTをラップした「AIに聞く」ボタンがSORACOM Harvest Data Intelligenceとして実装、時系列データから解析したトレンドや異常を自然言語で説明する

生成AIに関するもうひとつのアナウンスが、松尾研究所と共同で大規模言語モデル(LLM)の活用を研究/推進する「IoT x GenAI Lab」を設立したニュースです。松尾研究所は日本のAI研究の最先端を行く東京大学大学院工学系研究科松尾研究室とビジョンを共有し、 アカデミアで生み出された先端技術を社会実装しつつ、イノベーションのエコシステム創出を図る企業ですが、ソラコムとともにIoT × 生成AIに特化した研究/開発を継続し、LLMを用いた新たなプロダクトの開発やプロフェッショナルサービスの提供を図っていくとしています。

生成AIに対して「リスクを取ってコミットする」(玉川氏)として、松尾研究所と共同でIoT x GenAI Labを設立、生成AIによる新規プロダクトやプロフェッショナルサービスの開発を行う
生成AIに対して「リスクを取ってコミットする」(玉川氏)として、松尾研究所と共同でIoT x GenAI Labを設立、生成AIによる新規プロダクトやプロフェッショナルサービスの開発を行う

「生成AIはポテンシャルがすごすぎて、正直、これからどういう方向に進むのかがまったく見えない。だがソラコムとしてはリスクを取ってでもこのビッグウェーブに乗っていきたい」と生成AIの無限大の可能性にベットするという玉川氏。生成AIを実装した次のサービスの登場も遠くなさそうです。

新プラットフォームサービス ―IoTジャーニーが”Q”と”R"まで到達

ソラコムは毎年、Discoveryの開催にあわせて、同社にとって重要な新サービスをいくつか発表します。発表するのは米国で開発/研究を統括するCTOの安川健太氏で、今回もDiscovery 2023のために来日した同氏が2つの大きなアップデートを明らかにしました。

Discovery 2023のために帰国、新サービスを紹介するソラコム CTO 安川健太氏
ソラコム CTO 安川健太氏

ひとつはソラコムによるデータウェアハウス(DWH)サービス「SORACOM Query」です。これは時系列IoTデータの収集/蓄積を行う「SORACOM Harvest Data」のデータに対してSQLクエリで分析をできるようにするサービスで、現時点ではテクノロジプレビューでの提供ですが、リアルタイムデータの分析を得意としていたSORACOM Harvest Dataにはできなかった、大量のヒストリカルデータに対してクエリすることができるようになるため、IoTデータの活用シーンを拡げるサービスとして期待されます。

SORACOM QueryはSORACOM Harvest Dataに蓄積されたデータや、IoTエンドポイントのデータなどを「ソラコムの独自技術で効率的に」(安川氏)データウェアハウス(Amazon Redshift)に渡し、SQLによるクエリを可能にする。TableauやQuickSightなど使い慣れたBIツールでの高度な分析が可能に
SORACOM QueryはSORACOM Harvest Dataに蓄積されたデータや、IoTエンドポイントのデータなどを「ソラコムの独自技術で効率的に」(安川氏)データウェアハウス(Amazon Redshift)に渡し、SQLによるクエリを可能にする。TableauやQuickSightなど使い慣れたBIツールでの高度な分析が可能に

安川氏によればSORACOM QueryのバックエンドではAWSのクラウドDWHサービスである「Amazon Redshift」が動いており、RedshiftをサポートするTableauやAmazon QuickSightといった商用のBIツールと組み合わせることで、高度なデータ分析が実現します。データストアに関しては「現在はRedshiftを使っているが、今後は違う技術を使うことももちろんあり得る。HarvestのJSONデータを効率よくRedshiftに送り込むところは我々の独自技術で、この部分も顧客とともに検証を重ね、IoTデータにとって最良の分析環境を提供していきたい」と安川氏はコメントしており、玉川氏も「⁠⁠IoTサービスベンダの)ソラコムだからこそできるDWHサービスをこれから作っていくことに意義があると思っている。たとえば通信障害が起こったら、その理由はセルラーにあるのかそれともデバイスにあるのか、もしくは通信場所のせいなのか、そういう分析を速く正しく行えるのは⁠ソラコムのIoT分析サービスだから⁠と言ってもらえるようにしたい」とソラコムならではのDWHの進化を実現しようとしているようです。

安川氏から発表されたもうひとつの新サービスがネットワークカメラのメディア転送サービス「SORACOM Relay」です。これは既存のネットワークカメラの映像や音声をオンデマンドでクラウドに転送するサービスで、ユーザは使いたいときだけ、SORACOM Relayを経由して監視カメラ(IPカメラ)などを安全にクラウドに接続できるようになります。現時点ではリミテッドプレビューの提供であるため、利用を希望する場合はソラコムに申請する必要があります。

必要なときだけネットワークカメラを”IoTの目”として安全にクラウドに接続できる「SORACOM Relay」
必要なときだけネットワークカメラを”IoTの目”として安全にクラウドに接続できる「SORACOM Relay」

世の中には膨大な数のネットワークカメラがありますが、IPネットワークにはつながるものの、クラウドまではつながっていないカメラが多く、むしろインターネットにつながっているカメラの中にはパスワードが初期設定のままのものも少なくありません。ネットワークカメラを接続することがセキュリティリスクとならないよう、ネットワークカメラを必要なときだけインターネットを介さずにクラウドに接続できるようにすることで、安心/安全にカメラのデータをクラウドに⁠リレー⁠し、データの分析やバックアップに活かすことが可能になります。カメラ画像を解析するサービスは社会的にも高いニーズが見込まれていますが、セキュリティやクラウド連携の部分がボトルネックとなることが多かったのですが、この新しい「IoTの目」⁠安川氏)が既存のIPカメラのポテンシャルを引き上げるケースは数多くありそうです。

ソラコムは創業時の2015年9月に発表した「SORACOM Air」⁠SORACOM Beam」に始まり、その後「SORACOM Canal」⁠SORACOM Direct」「SORACOM Orbit」⁠SORACOM Peek」と続いてきたことからもわかるように、主要サービスの頭文字はアルファベット順に付けられています。今回、SORACOM QueryとSORACOM Relayがアナウンスされ、残すアルファベットはあと8つとなりました。安川氏はこのアルファベットのネーミングを「ソラコムのIoTジャーニー」と呼んでおり、8年かけてこのIoTジャーニーが"S"まで到達できたことに対して「非常に感慨深いものがある」と振り返っています。

もっとも、ソラコムのIoTジャーニーはたとえサービスの頭文字が⁠Z⁠まで達しても終わることはないように思えます。名付けられたサービスのひとつひとつがいまやグローバルなIoTの世界でビルディングブロックとして機能していますが、安川氏は「IoTのビルディングブロックは多岐に渡る。そのひとつひとつをこれからも埋めていく」とイノベーションの継続にあらためて意欲を見せています。

ソラコムが8年かけて続けてきた”IoTジャーニー”はついに”R”まで到達。次の”S”はどんなサービスに!?
ソラコムが8年かけて続けてきた”IoTジャーニー”はついに”R”まで到達。次の”S”はどんなサービスに!?

通信回線数は500万を突破、170以上の国と地域をカバーし、380のキャリアカバレッジを達成するなど、8年前と比べて企業規模もエコシステムも大きく成長したソラコムですが、創業時から掲げる「IoTの民主化」実現のため、IoTプラットフォーマーとしてやるべきことはまだ多く残っています。Discoveryの基調講演で玉川氏は「創業時にメンバーと⁠孫の代まで誇れる仕事をしよう⁠と約束した」と振り返っていましたが、ひとつのマイルストーンを達成するたびにまた次のマイルストーンへと向かい、IoTのイノベーションを通して社会課題に挑み続ける姿勢は8年前から変わらず、これからも変わらないことをあらためて確認できたDiscoveryだったように思います。

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