iOSDC Japan 2023カンファレンスレポート

iOSDC Japan 2023とは?

iOSDC Japan 2023はiOS関連技術をコアのテーマとしたソフトウェア技術者のためのカンファレンスです。日本中、世界中から公募した知的好奇心を刺激するトークの他にも、パンフレットに掲載された技術記事、参加者であれば誰でも作れる即興のトーク・アンカンファレンスなど、初心者から上級者まで楽しめるコンテンツが盛りだくさん。

今年もリアル会場とオンライン配信のハイブリッド開催で、9月1日(金)〜3日(日)の3日間にわたって催されました。リアル会場は東京・早稲田大学西早稲田キャンパスです。参加者は3日間でオフラインが2,006人、オンラインが2,271人。過去最高の参加人数だそうです!

私はiOSDCの参加が初めてでした。スタッフとしても参加したため、運営ができるのかやきちんと会話ができるか心配していましたが、当日はとても楽しいイベントとなりました。

この記事では、私なりにiOSDC Japan 2023をレポートしていきます。

ノベルティ

iOSDCのノベルティ付きチケットを購入すると、パンフレットやTシャツ、タオルマフラーなどのノベルティが届きます。

図1

素直な感想としては、こんな豪華なノベルティをもらってもいいのか!?と思いました。具体的な内容は公式ブログをご覧ください。

会場の様子

会場に入ったら、まずは受付をすることで名札当日のタイムテーブルがもらえます。

図2

受付が完了したら、あとは自由に楽しむことができます。

スポンサーブース

今年は、84社のスポンサーに協賛いただきました。そして31社のスポンサーブースの出店がありました。様々な種類のブースがあり、Apple HIG正式名称クイズや好きなアーキテクチャアンケート、射的などとても盛り上がっていました。

Pixivさんのブース
図3

展示ブース

展示ブースでは、ポスターセッションを見ることができたり、お菓子だけでなく軽食などがありました。また、トークセッションが終わった後のトークについての質問や討論なども展示ブースで行われていました。

図4

トークセッション

トークセッションの発表がトラックA〜Dの会場で行われました。最大で同じ時間に4種類のトークセッションがありましたが、どのトークも人気でした!

図5

私が個人的に気になったトークをいくつか紹介します。

「旅行アプリにおけるLive Activitiesを用いたフライト追跡」

Keisuke Yoshida氏@y0shikei_による、旅行アプリにおけるLive Activitiesを用いたフライト追跡についてのトークです。

Keisuke Yoshida氏
図6

Live Activitiesとは、ロック画面とDynamic Islandにリアルタイムでアプリの最新情報を表示することができる機能であり、iOS16.1から新しく追加されたActivityKit Frameworkを利用することで実装できます。

図7

Live Activitiesは、表示に関してロック画面においては最大で同時に5件まで表示が可能で、2件目以降はPush通知同様折りたたまれる仕様になっています。また、Dynamic Islandにおいては、基本的に最新1件のみを表示する仕様になっています。表示後に8時間でシステムが自動更新が終了します。ロック画面には最大4時間非アクティブな状態で残り、Dynamic Islandからは即削除されます。

Keisuke Yoshida氏が開発に携わっているアプリ「NEWT」では、フライト情報の追跡などでLive Activitiesが使用されています。

図8

「メタバースプラットフォームを支えるiOS開発と運用」

TAAT氏(@TAAT626)による、メタバースプラットフォームを支えるiOS開発と運用についてのトークです。

TAAT氏
図9

TAAT氏が開発に携わっている「cluster」は、VRからスマホまで遊べるメタバースプラットフォームです。iOS/Android/macOS/Windows Desktop/VR/Meta Quest2で、ユーザーが同じ空間を共有できるアプリになります。

「cluster」では、チームのバーチャル仕事部屋で雑談ができたり、アバターでWeb会議ができます。このアプリの構成として、⁠outroom」「inroom」の2つに分けられます。⁠outroom」では、SwiftUIとUIKit、⁠inroom」ではUnityで開発されています。

図10

個人的に一番気になった話はリポジトリの運用についてです。基本的には、Monorepo(単一リポジトリ)で運用しています。単一リポジトリにするメリットとして、構成や依存関係がシンプルでマルチプラットフォーム向けのリリースが行いやすい点やチーム編成が変わってもリポジトリを統合・分割する必要がないなどがあります。

図11

ルーキーズLT大会

2日目と3日目は、⁠ルーキーズLT大会」が開催されました。ルーキーズLT大会は、初めてiOSDC Japanに登壇するスピーカーが、5分間という短い時間で発表をしていくイベントです。

会場に入る前に、ペンライトが配布されました。最初に受け取った時に、⁠これは何に使うのか?ライブが始まるのか?」などという不思議な気持ちになりながら開始を待っていました。

イベントが始まり、運営の方がルーキーズLT大会の主旨を説明する中で、⁠残り時間が1分前になりましたら、みんなでペンライトを振ってください。また、30秒前になりましたら、大きくペンライトを振ってください」と説明がありました。

その後、各登壇者による発表が行われまた。残り時間がわずかになった時に、スクリーン上に「ペンライトを激しく振れ!!!」という文字が表示されると、会場全体でペンライトを振っていました。とても面白かったです。

図12

その中でもルーキーズLT大会で気になったセッションを紹介します。

「マウスポインターを掴む?! 〜標準フレームワークで作る非接触でMacを操作する技術〜」

なかおかれい氏@rei_nakaokaによる、非接触でMacを操作する技術についてのトークです。

なかおかれい氏
図13

WWDC23でApple Vision Proが発表され、Apple Vision Proでは高精度センサーやカメラによる行動認識、非接触での操作が可能となっています。

実はMacでも同様のことができ、Appleデバイスと標準フレームワークで実装が可能です。

図14

非接触でMacを操作する技術をいろいろと紹介していましたが、この中でも個人的に一番気になったのが「手の動きに応じてマウス操作」です。VisionのVNDetectHumanHandPoseRequestで手を認識し、Core Graphicsのイベントをトリガーすることで、掴む動作をするとマウスが移動できたり、人差し指と中指を重ねると、スクロールできたりする操作ができます。

図15

「アプリの終活 〜その後〜」

久利龍義氏@kuritatu18による、アプリの終活についてのトークです。

久利龍義氏
図16

会社統合によるサービスの終了により、⁠Japan Taxi」のアプリの終活をすることになったことを経緯を取り上げ、アプリでの終活において、クローズに向けた機能の構築や次のアプリへの相続などが必要になることを紹介しました。

図17

終活後からサービス終了までの対応として、以下のものを挙げていました。

  • アカウント登録機能の削除
  • 強制アップデート機能でクラッシュする問題の解消
  • 「JapanTaxi Wallet」機能の停止
  • 非開発でのお知らせの出し分け
  • 汎用的な注文停止機能の追加
図18

アプリの終活についての話は聞いたことがなかったので、とても貴重でした。

終わりに

今回のiOSDC Japan 2023はスピーカーの皆様、協賛いただいたスポンサーの皆様、たくさんの拍手やコメントで盛り上げていただきました皆様、イベントを陰で支えていただたきましたスタッフの皆様のおかげで大成功しました。

来年は今年以上に一般参加者、スピーカー、スポンサー、スタッフ、すべての方と一緒に最高なiOSDC Japanを作り上げられたらなと思っています。

最後に、iOSDC Japan 2023に参加してくださったみなさん、ご参加いただきありがとうございました!

図19

※この記事に掲載された写真は、八木竜馬氏、加我貴志氏に提供いただきました。

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