Androidに関わる人たちのための祭典 DroidKaigi 2023参加レポート

2023年9月14日から9月16日にかけて、ベルサール渋谷ガーデンにおいてDroidKaigi 2023が開催されました。参加者は約1,000人に達するカンファレンスです。

2022年に引き続き、オフラインとオンラインのハイブリッド開催となった今回のDroidKaigi。本記事では、主にオフライン会場の様子をレポートします。

Welcome Talk

オープニングとなるWelcome Talkでは主催のmhidakaさんやCo-organizerのスタッフから、カンファレンスの内容や公式アプリについての紹介がありました。

Welcome Talkの様子
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「DroidKaigiへの参加は何回目ですか?」という質問では、DroidKaigiに初めて参加したという人たちが半分程度を占めていました。約3年ぶりにオフラインが用意されたDroidKaigi 2022からさらに会場が拡大され、多くの人たちがオフライン会場へ参加している様子が伺えました。

また、Welcome Talk中にYouTube上でスーパーチャットが行われるなど、オンラインでもオフラインでも盛況な様子を見せました。

セッション紹介

DroidKaigi 2023では合計46本のセッションの発表がありました。ここではその中から2本をピックアップして紹介します。

Androidの『音』を制御する

Nishimyさんは「Androidの『音』を制御する」というタイトルで発表しました。

Androidは端末ごとにさまざまな挙動差異があります。音量の制御についても例外ではなく、本セッションでは、アプリ側から音量を制御する基本的な方法に加え、音量を制御する場合の端末ごとの挙動差異や、注意すべき事項を紹介しています。

発表スライド「Androidの音を制御する
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セッションは、Androidには複数のStreamTypeが存在し、用途別に音量を細かく設定できると機能の解説から始まり、オーディオに関する詳細情報をシステムに提供するAudioAttributesの宣言方法や各設定項目の意味、AudioFocusを使った出力Stream制御の説明と続きます。

また、アプリで音声を再生するためにAndroidに標準で用意されているライブラリやSoundPool、MediaPlayerの使い方についても、実際に動作するソースコードを交えて紹介していました。

印象的だったのは、Androidに特有の「サイレントモード」機能の制御についてです。⁠サイレントモード」はマナーモードにおける各種音量の消音に加え、バイブレーションや視覚的な通知もオフにできる機能で、マナーモードのパワーアップ版と言えます。

サイレントモードを制御する権限を取得した場合、アプリのソースコード上ではAudioManagerクラスにある「ringerMode」の設定にて、サイレントモードの状態を制御できます。そもそも「サイレントモード」という名称を使っている製品だけでなく異なる独自名称を使っている製品もあり、さらには「ringerMode」を変更した時の挙動も製造メーカーのAndroidデバイスによって差異があることを紹介しています。デバイスごとの挙動調査の重要性を感じました。

Jetpack ComposeのSide-effectを使いこなす

Kenji Abeさんは「Jetpack ComposeのSide-effectを使いこなす」というタイトルで発表しました。

Side-effect(副作用)とは、一般的なプログラミングにおいて、関数や処理などが実行された際に、主たる効果以外に発生する効果のことを「Side-effect⁠⁠、日本語では「副作用」と呼んでいます。例えば足し算の結果を返す関数があったとして実行時に関数の外側にある値を書き換える場合には、この関数はSide-effect(副作用)のある関数といいます。

本セッションは、Jetpack ComposeにおけるSide-effectにフォーカスを当てています。UIフレームワークであるJetpack Composeの場合、副作用とは「コンポーズ可能な関数の範囲外で発生するアプリの状態変化」を指しています。UIを構築する役割をもっているComposable関数ではSide-effectが発生しないようにすることが理想と述べた上で、それでもSide-effectを発生させざるを得ない状況になったときに安全に実行する方法を紹介しています。

Jetpack Composeでアプリを作っている人であれば、誰でも一度は触ったことがあるであろう「LaunchedEffect」の振る舞いや、⁠LaunchedEffect」「DisposableEffect」の違いから始まり、UIのComposition(構築)に注目した「produceState」などKenji Abeさん本人もほとんど使ったことがないという希少性の高い情報に触れ、Side-effectを使いこなすためのAPIや、その動作原理を解説していました。

Jetpack Composeを扱う上では、副作用が発生する箇所と対処方法を把握しておかないと、不用意なRecomposition(再構築)が発生しパフォーマンスの悪化に直結します。Composeで実装する場合には一度は目を通しておきたい内容だと感じました。

イベント紹介

DroidKaigi 2023では、セッション以外にも参加者が楽しめる企画が複数用意されていました。その中からいくつか紹介します。

属性別Meetup

参加者が特定のテーマを元にコミュニケーションを図れる「属性別Meetup」が昼のランチタイムや午後のおやつタイムに開催されました。

おやつタイムには軽食も用意された
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属性別Meetupのテーマは「Android初学者」⁠女性」などの参加者の特性にあわせたものや「子育てと仕事」⁠若手エンジニアのキャリア」など「誰かと悩みを話し合ってみたいけど話す場があまりない」テーマまで幅広く用意され、参加者はオフラインならではの交流を楽しんでいました。

ネイル体験

ネイル体験では、DroidKaigiのロゴやドロイド君のネイルアートを体験できました。2022年に引き続いて開催されており、企画の人気が伺えます。

かわいいネイルアート
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多様な価値観を尊重するDroidKaigiでは、ネイルアートは女性のものという固定観念を取り払い、参加者誰にでもネイルを体験してもらえることを重視しており、実施にも工夫が見えました。

初心者にも選びやすいメニュー表
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実際のネイル体験の様子
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筆者自身も初めてネイルを体験しましたが、自分の手元を見るだけでウキウキとした気持ちになり、新鮮な体験ができました。

バリスタによるコーヒー提供

会場では軽食やバリスタによるコーヒーの提供も無償で行われていました。バリスタによるコーヒーコーナーではDroidKaigiオリジナルブレンドも用意されました。コーヒーを飲むために、たくさんの参加者が列に並び、提供場所である協賛ブースのあたりにはコーヒーのいい香りが漂っていました。

アイスとホットが用意された
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3日目の参加型企画

3日目は、1日目や2日目とはうってかわって参加者がソースコードを書くCodelabsやキャリアパネルトーク、キャリア相談会など、参加型の企画がメインとなりました。

Codelabs

Codelabsでは「Jetpack Compose」「Hilt」などのテーマにそって挑戦します。Android公式のCodelabsを最後までクリアすることでDroidkKaigiのグッズを手に入れる参加型のコンテンツです。参加者は思い思いのテーブルに座り、同じ席に座った人と交流も楽しみながらCodelabsやDroidKaigi公式アプリへのコントリビュートなどに挑戦していました。

キャリアパネルトーク⁠相談会

キャリアパネルトークでは、Androidの技術分野にゆかりのあるゲストを招いてキャリアにまつわるパネルトークが行われました。

左からmhidakaさん、Yuki Anzaiさん、Atsuko Fukuiさん、Konifarさん
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パネルトークはゲストのキャリア紹介から始まり、⁠今のキャリアには目標を立てて辿り着きましたか? それとも成り行きですか?」⁠会社の評価基準・評価制度にどのように向き合ってきましたか?」などのテーマで盛り上がりました。またイベントでは参加者からの質問を随時受け付け、リアルタイム投票ツールSlidoを使って人気のある質問に回答していました。

キャリアパネルトークの後にはゲストの人たちと少人数のグループトーク形式でのキャリア相談会もあり、自身のキャリアの悩みなどを相談できる機会が設けられました。どのゲストの相談会も予約が埋まっており、キャリアへの関心が高いことがうかがわれました。

まとめ

DroidKaigi 2023はオンラインとオフラインのハイブリッド開催ですが、昨年に比べて会場も広くなり、イベントや企画も趣向を凝らしたものが多く用意されていました。

DroidKaigiでは「すべての参加者にとって安全で歓迎される場を提供する」ことをモットーに掲げている背景があり、だれもが楽しめることを意識したさまざまな企画を実施しています。本記事では詳しく述べませんでしたが、セッションの同時通訳を提供したり、学生向けのスカラーシッププログラムを用意したりするなど、カンファレンスに連動した企画内容は多岐にわたっています。Androidに関わる一人として、DroidKaigiは様々な年齢・国籍の人が集まって楽しめる素敵なコミュニティだと感じましたし、今後もっと多様な人たちが楽しめるコミュニティとなっていって欲しいと強く感じたイベントでした。

YouTubeのDroidKaigi公式チャンネルでは、セッションの録画を順次公開予定です。またスライド資料へのリンクなども準備予定ですので、見られなかったセッションを見たり、一度見たセッションを見返すなど、楽しみにお待ちください!

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