この連載はOSSコンソーシアム データベース部会のメンバーがオープンソースデータベースの毎月の出来事をお伝えしています。
次世代高速RDB 劔“Tsurugi”のOSS版が遂にリリース
前回にお知らせした次世代の高速RDBである劔
OSS版リリースと同時に解説本も発売されました。またWebでの連載記事も始まっています。本格的に劔
なお、この連載ではこれまでも劔
[MySQL]2023年10月の主な出来事
10月にはMySQLのイノベーション・
MySQLのライフサイクル・ポリシー
MySQL 5.
MySQLの製品ライフサイクルはオラクルのLifetime Supportに準拠しています。下記はMySQLのライフサイクル・
Lifetime Supportステージ | 期間 | 問い合わせ対応およびパッチ提供 |
---|---|---|
Premier Support | 5年 | 新規を含め全て提供 |
Extended Support | 3年 | 新規を含め全て提供 |
Sustaining Support | 無期限 | 既存のもののみ提供 |
オラクルの多くの製品はExtended Supportでは追加のサポート料金が必要となりますが、商用版MySQLのサブスクリプションには追加料金は発生しません。このため実質的にメジャーバージョンのリリースから8年間は、同様のサポートとパッチ提供を受けることが可能です。
なおMySQLのイノベーション・
MySQL 8.2.0の新機能と変更点
主な変更点は下記の通りです。
- 機能変更
- MySQL 8.
0.34で非推奨 (deprecated) となったmysql_ native_ となり、MySQLサーバーの起動時に無効にしておくことが可能にpasswordがプラグイン - [Enterprise Edition] スマートカードやセキュリティキー、生体認証用デバイスなど利用するFIDOおよびFIDO2に準拠したWebAuthnに対応
- STR_
TO_ 関数が不正な日付をエラーで返すように (韓国情報通信技術協会のGS認定への対応)DATE()
- MySQL 8.
- 非推奨となる主なパラメータや機能
- システム変数oldとnew
(MySQL 4. 0など古いバージョンでの互換性確保のためのパラメータ) - --character-set-client-handshake
(古いバージョンからのバージョンアップ用) - マルチスレッド・
レプリケーションでの 並列処理方式を設定するbinlog_ transaction_ dependency_ tracking (MySQL 8. 0.35でも同様) - 権限付与の際などのワイルドカードである
“%” と “_” がデータベース名としては非推奨、ホスト名は従来通り利用可能だが仕様変更に - INFORMATION_
SCHEMA. PROCESSLIST (Performance Schemaに変更)
- システム変数oldとnew
- 削除された主なパラメータや機能
- expire_
logs_ days (8. 0で非推奨)→ binlog_ expire_ を利用logs_ seconds - --abort-slave-event-count
(8. 0.29で非推奨)
- expire_
8年にわたる長期サポートを提供するLTSリリースに向けて、レガシーな機能の削除と各種パラメータの整理が進められています。
[PostgreSQL]2023年10月の主な出来事
秋はOSSに限らずさまざまなイベントが開催されます。10月末までEDB Postgres Vision Tokyo 2023がオンライン配信されていました。そして11月はもうひとつの代表的イベントであるPostgreSQL Conference Japan 2023がオンサイト
11月24日、PostgreSQL Conference Japan 2023が開催
PostgreSQL Conference Japanは、国内で開催されるPostgreSQL関連の代表的なイベントで、今年は11月24日の金曜日に東京・
- PostgreSQL and SQL:2023 - Property Graph Queriesの話題と各RDBの実装
- Neo4jなどでもご活躍の案浦浩二さんによるProperty Graph Queries (SQL/
PGQ) についての発表です。Property Graph Queries (SQL/ PGQ) はSQL:2023で追加され、PostgreSQLでは将来の機能となるであろうものです。他のRDBでも実装が始まっており、それぞれ実装はどう違っているのかについてお話されるとのことです。 - 正規表現で行パターンを検索する
「行パターン認識」 をPostgreSQLに実装しよう! - SRA OSSの石井達夫さんと陳寧イさんの発表です。行パターン認識はSQL標準の機能で、今までの問い合わせ機能では難しかった検索が可能です。この発表では、行パターン認識の概要の説明と、行パターン認識をPostgreSQLに実装する試みについて紹介されます。
- pgvectorを使ってChatGPTとPostgreSQLを連携してみよう!
- NTTデータグループ、石井愛弓さんの発表です。ChatGPTから外部データとしてPostgreSQL の情報を参照させる方法についての発表です。ChatGPTとPostgreSQLを連携するライブラリの紹介、連携の手順、性能向上のヒントなどについてお話しされる模様です。
EDB Postgres Vision Tokyo 2023報告
EDB Postgres Vision Tokyo 2023が10月末までオンデマンド配信で実施されていました。前回記事で国内3社の事例については簡単に触れましたので、ここではその他の発表から筆者が興味を持ったセッションについて報告します。今回の記事では紹介していませんが、EDBのアジア太平洋地域Field CTOであるAjit Gadge氏とエンタープライズDBの執行役員セールスエンジニアリング本部長である村川了氏は、11月20日開催のセミナー
- Postgresの今後に向けて
- EDB Chief Product Engineering OfficerであるJozef de Vries氏の発表です。ご存知のようにPostgreSQLはコミュニティが開発のコアになっています。この発表では開発コミュニティと共にPostgreSQLを進化させると同時に、ミッションクリティカル領域や、複雑化するエンタープライズ領域に適した製品に取り組んでいる現状と今後の方向性について発表されました。この取り組みの成果として、バージョンアップに伴い性能改善が進んでいる様子や、多様なデータ形式やワークロードにも対応できるようになりつつある状況が示されました。
- EDB Postgresで99.
999%の高可用性を実現するEDB Postgres Distributed - エンタープライズDB、執行役員サービス事業部長の高鶴勝治氏の発表です。上述のVries氏の発表ともつながりますが、ミッションクリティカル領域に適用する際に求められることとして、何らかの障害があっても可能な限り停止時間を作らない高可用性が挙げられます。この発表では、EDB Postgresでマルチマスターレプリケーションを実現すること、そして構成の仕方によってどのような差異があるかなどについて解説されました。
PostgreSQL関連のリリース情報など
10月はPostgreSQL本体のリリースはありませんでしたが、関連ツールでは、pgAdmin 4のバージョン7.
また、9月にリリースされた新メジャーバージョン16の日本語での技術解説が、10月2日にSRA OSSから公開になっています。新バージョンについて理解する有益な情報源です。
NECがPostgreSQL 11のサポート終了後も修正パッチを提供へ
本連載の過去回にて大手ITベンダがPostgreSQLサポートを強化している件を紹介しました。NECではコミュニティでのサポートが終了した後のバージョンについての修正パッチを提供するサービスを発表していましたが、まもなくサポートが終了してしまうPostgreSQL 11をこのサービスの対象にすることが発表されました。以前はバージョン12以降が対象でしたが、拡大されました。
Google Cloud のPostgreSQL互換AlloyDB OmniとCloud Spanner情報
クラウドサービス各社が自社サービスの中でPostgreSQLやMySQL、その他のOSSデータベースを提供することは今では当たり前になっています。標準的なOSSプロダクトそのままを提供するだけではなく、独自の改善や機能追加を行ったサービス製品でも激しい競争をしています。10月にはGoogle Cloudから2件の発表がありました。
- AlloyDB Omni正式版リリース
- 4月にテクニカルプレビューの発表があったAlloyDB Omniが正式リリースになりました。冒頭で
「クラウドサービス各社が自社サービスの中でOSSデータベースを提供」 と書きましたが、このAlloyDB OmniはクラウドサービスであるAlloyDB for PostgreSQLをクラウド環境ではなくオンプレミス環境で稼働させるものです。しかし、クラウドにおけるマネージドデータベースサービスでの激しい競争の一面であると言っていいでしょう。 - Cloud Spannerの性能向上
- 既存サービスであるCloud Spannerのコストパフォーマンスの大幅な向上の発表です。以前と比べてスループットが最大50%向上し、ノードあたりのストレージが2.
5倍になったと発表されています。 「Amazon DynamoDBの半分のコストで、強力な一貫性と1桁ミリ秒のレイテンシを備えています」 と、挑戦的なメッセージが添えられています。
2023年11月以降開催予定のセミナーやイベント、ユーザ会の活動
オンサイト
Tsurugi本勉強会
日程 | 〔第1回〕2023年11月7日 〔第2回〕2023年11月21日 ※第3回以降も予定されています。 ※初回 |
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場所 | オンライン開催 |
内容 | Tsurugiの解説本の主に第三部を読んで議論し、理解を深めることを目的として、解説本の16〜23章+αが対象です。なお、参加条件として、Tsurugi解説本を持っており、内容に興味があり、健全な議論を心掛けることが求められています。 |
主催 | Tsurugi本勉強会 |
オープンソースカンファレンス2023 Hiroshima、Niigata、Fukuoka
日程 | 〔Hiroshima〕2023年11月12日 〔Niigata〕2023年11月25日 〔Fukuoka〕2023年12月9日 |
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場所 | 〔Hiroshima〕サテライトキャンパスひろしま 〔Niigata〕新潟市立中央図書館 〔Fukuoka〕福岡SRPセンタービル 2F |
内容 | オンサイト |
主催 | オープンソースカンファレンス実行委員会 |
PostgreSQLユーザーに捧ぐ、EDBを使ったDB機能向上とコスト削減の両立
日程 | 2023年11月20日 ※申込期限:2023年11月17日 |
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場所 | 株式会社アシスト 市ヶ谷本社 |
内容 | PostgreSQLにさまざまな機能と保守も付加したEDBの製品戦略とユースケース、機能を紹介します。本セミナーはエンタープライズDBとアシストの講演に加え、エンタープライズDBのアジア太平洋地域 Field CTOであるAjit Gadge氏がグローバル視点でのDB市場やトレンドについて講演します。また、セミナー後に懇親会も開催されます。 |
主催 | 株式会社アシスト 協賛:エンタープライズDB株式会社 |
PostgreSQL Conference Japan 2023
日程 | 2023年11月24日 |
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場所 | AP日本橋 |
内容 | 記事本編でも紹介した、日本PostgreSQLユーザ会 |
主催 | 日本PostgreSQLユーザ会 |
db tech showcase 2023
日程 | 2023年12月6日 |
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場所 | ベルサール六本木 グランドコンファレンスセンター |
内容 | 国内で開催されるデータベース関連の主要なカンファレンスのひとつです。OSSデータベース専門のセミナーではありませんが、MySQLやPostgreSQLをはじめさまざまなOSSデータベースについての多数のセッションが毎年設けられています。 |
主催 | 株式会社インサイトテクノロジー |