2024年5月11日、中野セントラルパークカンファレンスにてTSKaigi 2024が開催されました。TSKaigiは今年初めて開催されたTypeScriptに特化した技術カンファレンスです。前身もない、完全初開催にも関わらずチケットはタイムテーブル公開前に完売。オンライン参加者も含めると2000人を超えるなど、とても注目度が高いカンファレンスとなりました。
今回筆者は運営スタッフとして参加しました。この記事では、TSKaigiがどのようなイベントだったのかに触れたうえで、当日の模様をレポートします。
TSKaigiついて
TSKaigiは、日本最大級のTypeScriptをテーマとした技術カンファレンスです。コロナ禍で様々なオフラインイベントが打撃を受ける中、TypeScriptを扱うエンジニアが会場で集まる機会は失われていきました。新型コロナウイルスが落ち着いた今、各所で蓄積されたTypeScriptに関するノウハウが日の目を浴びられる場所を作ろうと、2023年10月にキックオフMTGが開催されました。
TSKaigi 2024の大反響をきっかけとして、これからも大型カンファレンスに限らない様々な活動を進めていく所存です。
基調講演
記念すべき初回の基調講演は、TypeScriptのPrincipal Product ManagerであるMicrosoft社のDaniel Rosenwasser氏が登壇しました。講演ではTypeScriptの成長についてと、5.
講演の前半ではGitHubが毎年公表しているGitHub Octoverseを参考にしながら、TypeScriptの盛り上がりの歴史を紹介しました。TypeScriptが初めて
後半ではTypeScript5.filter
関数でnull
チェックしたのに次のmap
関数で型推論が反映されず泣く泣くキャストやオプショナルチェーン演算子(?.)
を使っている方はたくさんいるのではないでしょうか。5.
セッション紹介
ここからは筆者が気になったセッションを2つピックアップして紹介します。
スタックチャン -TypeScriptで動くオープンソースロボット-
ひとつ目のピックアップはししかわさんによる
M5Stackというマイコンの上でコミュニケーションロボット、それがスタックチャンです。なんとこのスタックチャン、ほとんどのプログラムがTypeScriptで書けるそうです。TypeScriptというとWeb開発で使われるイメージがほとんどだと思うのですが、なんと組み込み開発でも使えるらしいので驚きです。
スタックチャンにはModdableという組み込み向けJavaScriptプラットフォームが使われているようで、これがTypeScriptに対応しています。このModdable、ECMA-419という組み込み開発向けのJavaScript標準規格を採用しており、ただただ独自路線を進んでいるわけでもなさそうです。
ユーザーが誰でもメンテナンス可能なロボットを作りたいという、ししかわさんの思いから、スタックチャンは基盤の設計や機能の規格、開発工程などすべてがオープンになって開発が進められています。そんな中でTypeScript
スタックチャンの仕様やソースコードはすべてGitHub上で公開されています。興味がある方は是非見てみてください。READMEなど各種ドキュメントは英語版と日本語版があるため、我々日本語話者にとっては非常にコントリビュートしやすいOSSだと思います。
余談ですがTSKaigiではスタックチャンのセッションを含めてハードウェアに関するセッションが3つもありました。趣味のハードウェア開発でもTypeScriptが採用されやすい世界が近づいているのかもしれません。
部分型の代数的模型
2つ目のピックアップはPADAoneさんによる
お恥ずかしながら筆者の数学知識は高校レベルで止まっているので、後半に出てきた圏論や環論、束論の話はちんぷんかんぷんでしたが、type aliasで用いることができるunion|
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PADAoneさんはZennで今回の発表についていくつか記事を投稿しており、それのまとめとしてセッションタイトルと同じ
今回はあえてWeb開発から離れた視点のセッションを2つ紹介しました。もちろん王道のフロントエンドやバックエンド、そして最近流行りのインフラ管理まで含めたフルスタック開発まで、様々なセッションがありました。興味がある方はぜひ公式のタイムテーブルや、有志が集めているスライド集をご覧ください。
会場の様子
その他、TSKaigiの会場にはスポンサーブースやリフレッシュメントブースがありました。以下はスポンサーブースの様子で、約10社のプラチナ・
リフレッシュメントブースではリフレッシュメントスポンサーのエムスリー様からお菓子が、コーヒースポンサーのKAKEHASHI様からコーヒーの提供がありました。特にコーヒーは喫茶店をされている方によって淹れられ、休憩時間には毎回待機列ができるほど大人気のエリアになっていました。
午後には基調講演登壇者であるDaniel氏と直接話ができる空間が自然とできあがっており、非常に貴重な時間となっていました。Daniel氏が話の途中で、それは重要だと言ってメモを取り始める場面も。TSKaigiにてTypeScriptの新機能もしくは改善案が伝えられたようです。技術カンファレンスで開発元へ直接フィードバックや相談ができるなんてとても素敵ですね。
懇親会
TSKaigiの最後には懇親会が行われました。運営の想定を上回る盛況ぶりで会場と人数が少しマッチしていない部分がありましたが、これは次回以降の宿題とさせてください。来年もTSKaigiはやります!
懇親会ではビールスポンサーであるCloudbase様よりオリジナルのクラフトビールが振る舞われ、大人気でした。
まとめ
昨年の10月に集まった有志によって、TSKaigi 2024は開催されました。そんなTSKaigiは運営メンバー全員が想定した以上の大盛況のまま、なんとか1日開催し切ることができました。当日はすべて計画通りにいったわけではありませんが、参加者皆様の温かいご声援もありスタッフ一同も楽しく運営を乗り切ることができました。スタッフの一人として、この場をお借りして御礼申し上げます。
Danielさんやししかわさんが発表内で触れられていたコミュニティの良さに私も触れられたような気がします。自分の好きな言語のコミュニティをリアルを通じて盛り上げていく、そんな運営スタッフに興味はありませか?
今回TSKaigiに来場してくださった方、オンラインで視聴してくださった方、予定が合わなかった方、今この瞬間にTSKaigiを知ってくださったあなた方と、来年も楽しく盛り上がれることを2024年のスタッフ一同楽しみにしています。