PyCon JP 2024 開催レポート

はじめに

こんにちは。PyCon JP 2024広報チームの筒井です。9月27日、28日開催されたPyCon JP 2024の開催後レポートをお届けします。

この記事では、4名の主催メンバーそれぞれの視点から、PyCon JP 2024の様子をお伝えします。参加した方はもちろん、参加できなかった方も、この記事を読んでイベントの雰囲気を感じていただければ幸いです。

キーノート(1日目)― James Powellさん

James Powellさんのkeynoteについて、広報チームのku-muが紹介します。

Jamesさんのプレゼンは「Details matter, but concepts matter more」という力強い言葉で幕を開けました。彼は、単に文法やライブラリを暗記するのではなく、それらの背景にある重要な原則を理解することが不可欠であると強調しました。

続いて、金融市場での取引戦略シミュレーターの実装を例に挙げ、豊富なコードを提示しながら具体的な説明を行いました。特に、ユーザーが陥りがちな間違いや、その間違いが結果に与える影響を多くの実例を通じて示しました。

PandasやNumPyといったデータ分析用の強力なライブラリについても使い方を単に覚えるのではなく、その設計や原則を理解することで、コードの品質を向上させ、より効果的な分析が可能になることを示しました。

写真 James Powellさん
James Powellさん

キーノート(2日目)―石本敦夫さん

石本敦夫さんによる「Python誕生から30年の歴史」について、ku-muが紹介します。

Pythonは日本で流行り始めたのはここ最近ですが、実は1994年に1.0がリリースされた歴史のあるプログラミング言語です。当時のスクリプト言語といえば、シェルスクリプトやPerlが広く使われていましたが、可読性を重視して開発されたPythonは独自の魅力をもち人気を獲得していきました。

また、当時はインターネットが普及していない時代でしたが、Pythonはスレッドやインターネットプロトコルなどの機能を標準ライブラリとして備えており、実験的なコードを書きやすい点が画期的でした。さらに、優れた拡張性やマルチプラットフォームへの対応も人気を高めた理由です。

世界的には2010年頃からPythonは非常に人気のある言語として認識されていましたが、日本国内ではPerlやRubyの人気が高く、あまり普及しませんでした。Python 2.3からは日本語のドキュメントも整備されましたが、当時のPythonは日本語を扱うのが難しいことも要因の1つでした。しかし、2015年以降のAIブームがきっかけで、Pythonの人気は急上昇し、日本でも広く使われるようになりました。特に、NumPyなどの数値計算系ライブラリは昔から開発されており、その基盤が今活かされています。

最後に、1つの技術を深く知ることで周辺の技術への応用が容易になるので、流行りだけを追うのではなく、お気に入りのテクノロジーに軸足をおいてじっくり学ぶことが大切だと締めくくりました。

写真 石本敦夫さん
石本敦夫さん

Pythonと相互運用可能な静的型付けプログラミング言語Erg ―芝山駿介さん

プログラムチームの川瀬です。ここでは、私が印象に残ったトークである、芝山駿介さんによる「Pythonと相互運用可能な静的型付けプログラミング言語Erg」スライドを紹介します。

写真 芝山駿介さん
芝山駿介さん

このトークでは、まずPythonの豊富なライブラリや高い連携性をといった利点を認めた上で、型付け、言語仕様、環境構築という3つの観点での弱点が指摘されました。そしてその解決策として、柴山さんが開発されているプログラミング言語Ergが紹介されました。Ergは高度な静的型付けや強力な型推論、開発ツールとの統合といった長所を持ちつつ、既存のPythonの資産を活かすこともできるとのことでした。

加えて、Pythonを使い続けたいユーザに対しても有用な、Pylyzerという型チェッカー/Language Serverも紹介されました。Pylyzerも柴山さんが開発しており、他の型チェッカーと比べて、より高度な型推論機能を有することや、ユーザフレンドリーなエラー報告などを特徴としているそうです。

私は、公開されていたトーク概要を読み、プログラミング言語や型チェッカーの開発といった話題に興味があるものの、あまり知見がないためついていくのが難しいかもしれないと考えていました。しかし、平易な言葉で、豊富な具体例を示しながらの発表であったため、終始興味深く聴くことができました。その結果、ご紹介いただいたErgやPylyzerについてはもちろん、プログラミング言語やLanguage Serverの開発についても興味が掻き立てられました。

発表後の質疑応答では聴講者から活発に質問が寄せられており、その後の休憩時間でも議論していました。多くの聴講者の関心を集めたトークだったのではないでしょうか。

Getting Started with Open Source Contributions ―Stefanie Molinさん

筒井です。ここでは、私が印象に残った英語のトークを紹介します。Stefanie MolinさんのGetting Started with Open Source Contributionsです。

発表資料は以下を参照してください。

写真 Stefanie Molinさん
Stefanie Molinさん

初心者がオープンソースへのコントリビュート(貢献)を始めるためのコツについて、わかりやすく説明していました。初心者でもできるコントリビュートの例として「初心者向けのラベルがついたIssueを解決する⁠⁠、⁠ドキュメントの修正⁠⁠、⁠バグレポートの提出」などを挙げ、それらを実施する上での注意点を説明していました。

また、スプリントに参加することで、コントリビュートのやり方を学ぶことができるというお話もありました。スプリントでは熟練者が初心者をサポートしてくれるので、1人で取り組むよりも学びが多いとのことでした。PyCon JPでもスプリントがありますが、私が初めてスプリントに参加したときも、周りにサポートしてくれる人がいて助かった経験を思い出しました。

印象に残った言葉は「No contribution is too small(小さすぎる貢献などない⁠⁠」です。コントリビュートと聞くと、ハードルが高いと感じる方が多いかもしれませんが、初心者でもできることがたくさんあるということを伝えていました。

このトークはプログラミングそのものをテーマとしているものではありませんが、プログラマーの文化や、コミュニティの雰囲気を知る上でとても参考になる内容だと感じました。

ポスターセッション

スポンサーチームの平田です! 続いてはポスターセッションの様子を取り上げます。

当日はたくさんの個性豊かなポスターが掲示されていました。たとえば、英語版の俳句・川柳を分類する試みや、データ分析を用いて小売業者の業務を最適化する手法の考案など、理論・実験をまとめたもの。また、PyCon miniの開催レポート、Raspberry Pi もくもく会の紹介といったコミュニティに焦点を当てたものもありました。

いずれも、ポスターを通じて会話が生まれている様子がわかりますね!👍

写真 PyConKyushu 2024のポスターを前にしての会話
PyConKyushu 2024のポスターでの会話

さらに、PyLadiesのみなさんは仲良く集合写真も撮られていました(出典:@PyLadiesTokyoによるポスト⁠。

写真 PyLadiesのみなさんの集合写真
PyLadiesのみなさんの集合写真

こういったコミュニティ活動において、⁠楽しんでいるさま」をそのまま発信することには大きな意義があると感じます。⁠参加してみたいけど、仲間ができるか不安だな…」と迷っている方の背中を押す、素敵な発信ではないでしょうか👏 。

私自身、⁠Pythonが好きな人たちがこんなにいるんだ」と再認識するきっかけとなりました!

最後に

筒井です。PyCon JP 2024の様子についてお伝えしました。

今年は651名もの来場者にご参加いただき、大盛況となりました。PyCon JPがこれほどの盛り上がりを見せるのも、Pythonコミュニティのみなさん一人ひとりの貢献があってこそです。改めてお礼を言わせてください。ありがとうございます!

写真 2日目クロージングでの集合写真
2日目クロージングでの集合写真

さて、来年のPyCon JP 2025ですが、開催日は2025年9月26日〜27日、開催地は広島県広島市の広島国際会議場に決まりました。これまで東京で開催してきたPyCon JPですが、次回は初の地方開催です。私たちの新しい挑戦に、多くの方が興味を持ってくれると嬉しいです。

また、来年のイベントを一緒に作り上げていく主催メンバーをこれから募集する予定です。応募方法の詳細は後日お知らせしますので、PyCon JP Blogをチェックしてください。

それでは、来年のPyCon JP 2025でお会いしましょう!

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