イベントレポート⁠クラウドネイティブ時代の歩き方と 2025年のエンジニアの生存戦略

株式会社スリーシェイクの早川@bells17です。今回は2024年12月4日に開催されたクラウドネイティブ時代の歩き方と2025年のエンジニアの生存戦略というイベントに参加してきたので、こちらのイベントで話された内容について共有します。

左から藤川真一氏、尾藤正人氏、吉田拓真氏、馮富久氏。

今回のイベントについて

今回参加した「クラウドネイティブ時代の歩き方と2025年のエンジニアの生存戦略」スリーシェイク代表取締役社長の吉田が技術評論社さんの協力の元、第一線で活躍されてるエンジニアの方々をゲストに招いてお話するという趣旨のイベントで、今回は技術評論社のデジタル事業部部長の馮富久さんに司会を務めていただき、下記の登壇者(敬称略)の方々にパネルディスカッション形式でエンジニアのキャリアや転職トレンドについてざっくばらんに語るイベントでした。

パネルディスカッションで話されたこと

今回のパネルディスカッションでは下記のようなエンジニアのキャリアに関わるテーマについて広く話されたイベントでした。

  • これからのエンジニアリングがどう変わっていくのか?
  • これからのエンジニアのキャリア
  • エンジニアの採用や育成

パネルディスカッション形式でのトークイベントで数多くのトピックについてカジュアルに話をする形式だったため、本記事は著者が気になったトピックについていくつか紹介する形で書いていきたいと思います。

エンジニアとしてのレベルアップ

まず著者の中で面白かったのが、エンジニアとしてのレベルアップ方法の違いについてです。

  • 藤川さん:自分がレベルアップしたい技術を学べる環境に身を置くこと
  • 尾藤さん:エンジニアとしてのレベルアップに必要なことは仕事でもプライベートでも学ぶこと
  • 吉田:自分の場合は興味あることは事業化を目指す

3名それぞれがこのような視点での話をされていました。

個人的には尾藤さんの考えが一番近く、たとえば尾藤さんの場合は過去に趣味でVine Linuxの開発に取り組むことでそれがレベルアップにつながっていたそうです。

著者もKubernetesなどのOSSに少しコントリビュートを行ったり、Kubernetesに関する登壇をするために周辺情報も含め勉強するなど、周辺の技術要素のキャッチアップを行ってきたのでとても共感できる内容でした。

藤川さんから話のあった「自分がレベルアップしたい技術を学べる環境に身を置くこと」ということの具体例として、藤川さんが関わられているジーズアカデミーの話を聞くことができました。

ジーズアカデミーで藤川さんのメンタリングに来る学生の方は起業を考えられている方々で、そのためのスキルとしてプログラミングを学びに来るようです。

「サービスを作って起業して、エンジニアを採用したら(それまでに開発した)既存のコードについてはリファクタリングしてもらえばいい。仲間を作るためにもまずは自分の想いを伝えるために動くサービスを、自分で作るのが重要」ということで学生の方には指導されているとのこと。

この話は、エンジニアのキャリアとしてのスキルアップとは少し異なるケースの例ですが、⁠自分が達成したい目標のために必要なことに取り組む」というのが重要ということを伝えようとしていたのかなと思いました。

一方で吉田は社長だからできるという感じではありますが、⁠興味のあることを事業化」するというのは面白いやり方だなと思いました。

ある意味藤川さんのやり方に通じるやり方でもあるというか、⁠事業化するならやるしかないよね」となると思うので、自然と「自分がレベルアップしたい技術を学べる環境」を作ることができるので、こういう考え方を持つのも面白いと思いました。

エンジニアの採用の観点

次に採用観点の話についてです。

尾藤さんはオープンロジという物流プラットフォームの開発を行っている会社、一方藤川さんはBASEというネットショップ作成サービスやPay IDという購入者向けショッピングサービスの運営などを行っているというところから、お二人からは事業ドメインの理解や興味が大事だという話がありました。

また、元々ドメインに関する知識は持っていなくてもいいものの、開発を進めるためには必ずドメインの理解を進めなければならないため、想定よりも短期間でのキャリアを重ねている方の採用は難しいそうです。

吉田からも1年くらいで辞めるのを繰り返してる人は会社のコアなシステムに対する開発に関わった経験が少ない傾向にあるので、重要なタスクは任せづらいのではないかという話がありました。

さらに、エンジニアを採用する大前提として、⁠受け身のエンジニアの採用は難しい」という話がありました。

これはエンジニアが努力し、成長し、成果をだそうとするスタンスを持たなければならないということだと理解しています。

その上で、会社からは当人の能力を鑑みてパニックにならないような難易度のタスクから順々に渡していくなど、成長してもらえるようタスクの渡し方を意識しているという話が尾藤さんからありました。

とくに会社規模が1→2くらいの初期フェーズは採用が非常に重要であり、採用で間違うと後を引くので、違和感のある人は採用しないという方針だそうです。

吉田からは、採用の観点とは少しずれるかもしれませんが、会社規模の変化に伴う行動について「昔は全然権限委譲できていなかったが、それが不評で逆に全部任せてみたら意外とうまくいった」という経験があり、そのため人に全部任せるというのをベースにしているそうです。

一方でそうなると一部の人とのコミュニケーションに偏りがちになるので、関わりの薄い人と信頼関係を築けなくなることがあったので、今はできるだけさまざまなレイヤの人と関われるように意識して行動してるとのこと。

上記は正社員についての話でしたが、一方で業務委託のエンジニア採用については難易度が高いと感じているようです。

業務委託のエンジニア採用についてはどこもレジュメと1時間くらいの面談しかできないケースが多く、ジャッジミスにつながりやすいとのことです。

そのため、藤川さんも尾藤さんも正社員が足りていないケースで業務委託のエンジニアの方と契約を行ったり、あるいは元々の顔見知りの方中心の契約になりがちであるようでした。

2024年のエンジニア採用市場

採用観点の話の流れで2024年のエンジニア採用市場についてもそれぞれの考えを伺うことができました。

藤川さんからは、昔に比べて採用市場の過熱は落ち着いてきていると考えていて、それには会社がちゃんと黒字になっていかないと行けないフェーズの会社が増えたので、若手よりも元々スタートアップで今は上場しているSaaS系企業などで中堅どころのエンジニアとして活躍している「スタートアップ文化を知ってて大規模システムも作れるような人」がだいたい年収700万円台くらいのオファーで見かけるケースが増えてきたそうです。

これは転職ドラフトのようなサービスを見ていても、このくらいのレベルの人に指名が集中しているように思うとのことでした。

また、吉田からは業界経験が3~4年ほどとそこまで多くない一方で、工業系や機械学習などのドメイン知識のあるエンジニアの人が年収500~600万円台くらいのレンジを中心に市場に増えてきたように思うとの話がありました。

また、技術や社会の変化とともに会社のフェーズの移り変わりもあり、最近は巨大に成長した元スタートアップの人材が市場に増えてきた印象があるのだそうです。

採用広報(技術広報)について

採用市場の話に続き、会社としての採用戦略、中でも採用広報(技術広報)に関する話題に移りました。

まず藤川さんから、BASEには現状ではDevRelやエンジニアの役割としての採用広報は配していないとのこと。

ただ、技術カンファレンスにスポンサードしたり、エンジニアとしての登壇を会社として支援することはあるそう。これらの動きはあくまで登壇者の応援と、BASEがその技術を採用していることの知名度向上・認知度向上を目指すもので、直接的に採用につなげているものではないとのこと。

とは言え、こうした活動を続けてきたことで、BASEの開発事情などがエンジニア界隈に認知され、採用媒体でマッチングした際のアンマッチ度が下がってきたと感じるとのことです。

尾藤さんも、技術広報活動だけが直接的なオーガニックな応募者の増加につながるかというと、そうでもないと感じているそうです。

ただ、転職を考えている人は、採用ページの募集内容だけを見ているわけではなく、その企業に所属しているエンジニアの登壇や技術ブログ、今の時期であればアドベントカレンダーなどから技術的なマッチングや社内の雰囲気を推し量った上で応募してくる人が多く、社内の情報を間接的に社外の方に伝え、認知を広げることができるのが技術広報活動の効果だと思っているとの話をいただきました。

吉田からも同様に、スリーシェイクでは「プロモーションチーム」という名前で活動しているが、応募者とのマッチングがすごい上がった実感があり、⁠話してみたけどなんか違う」となりカジュアル面談から応募につながらないケースが減ったそうです。

それに加えて、採用以外だけではなく、社内におけるエンゲージメント強化についても効果を感じているとのことでした。

前述のBASEでは登壇だったり、外での活動だけを社内の評価制度にはあえて反映しないようにしているとのことでした。理由として、評価基準は事業貢献であることが原則だからとのこと。

これは、表に立って登壇するといった形で目立つ活動が得意な人もいれば、黙々と勉強して成果を出している人もいるから、そこで差を付けないようにする狙いが含まれているからでした。

それと関連し、もし、リファラル採用につながった場合は、リファラル採用に対する報酬制度で報いるようにしていて、評価制度の加点要素としては反映しないようにしているそうです。

まとめ

今回のイベントでは、三者三様、技術系執行役員、代表取締役社長など、エンジニアでありながら経営の立場に関わっている3名から、エンジニアの育成や採用に関して、それぞれの考え方を直接伺うことができる時間となりました。

パネルディスカッション後は2時間ほどの懇親会が行われ、この懇親会で筆者は藤川さんや尾藤さんたちともお話することができ、パネルディスカッションの場だけでは聞ききれなかった話を聞かせてもらえました。

藤川さんからは、パネルディスカッションの最後の方で出ていた「今後大きな会社のDXをやりたい」という話の詳細を教えていただいたり、今のBASEのエンジニア組織や規模などについても教えていただくことができました。

一方、尾藤さんからは、所属していた高専の先輩とのつながりなどからVine Linuxの開発に参加することになったという話や、未踏ジュニアのPM活動はどんなことをされているのかなど興味深いお話を伺うことができました。

藤川さんや尾藤さん以外にもいろんな会社の役職者をされている方の出席も多く、エンジニアのキャリアに関するさまざまな話をすることができました。

キャリアについての考えは本当に多様であり、多様な人の意見を伺うことができる貴重な機会なため、またこういったイベントに参加して自分の考えのアップデートのきっかけにできれば良いなと感じました。

最後に、イベントを主催した弊社(スリーシェイク)の吉田から「今回は、特定の技術に留まることなく経営視点、俯瞰した視点でエンジニアリング全般について率直な議論ができ、個人としても非常に学びの多いイベントでした!また来年も継続して、オフラインイベントを開催していきたいと思いますので、お楽しみに!」とのコメントをもらっています。

このコメントを実現すべく、スリーシェイクでは2025年はこういったイベントを3~4回主催する予定です。

筆者は次回開催時にも参加し、その模様をお届けしたいと考えていますので、次回を楽しみにお待ちください。

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