Linus Torvaldsは3月24日(米国時間)、「Linux 6.14」のリリースをアナウンスした。前回の「Linux 6.13」(1/19)のリリースから約2ヵ月、通常の開発スケジュール通り7本のリリース候補(RC)版を経ての公開となる。
今回、いつもは日曜日に行われるリリースが月曜日となったが、それについてLinusは「リリース間際の土壇場でなにか重要なことが起こり、それが原因で遅れてしまった…と言いたいところだが、それは違う。単に僕が無能だっただけだ。マージウィンドウと関係ない作業を片付けていたら、リリースカットするのを完全に忘れていた」とコメントしており、Linux 6.14のリリース自体に問題があったわけではないとしている。
Linux 6.14ではAMD Ryzen AIのNPU(Neural Processing Unit:AIの演算に最適化されたプロセッサ)をサポートする「AMDXDNA」ドライバを実装、これによりCNNやLLMなどの機械学習アプリケーションを効率的に実行することが可能となる。また、WineなどのWindowsエミュレータ上で実行されるWindowsゲームのパフォーマンスを大幅に向上させる「NTSYNC」ドライバを完全実装している。NTSYNCはWindows NTの同期プリミティブ(セマフォ/ミューテックス/イベント)をサポートしており、既存のツールを使用したユーザ空間での体感速度の向上が期待される。
ファイルシステム関連では、Btrfsに3つのRAID 1読み取り分散方法(rotation/latency/devid)が追加され、デバイス間での読み取りI/Oの分散を最適化する。また、ユーザ空間で独自のファイルシステム実装を可能にする「FUSE(Filesystem in Userspace)」のパフォーマンスを向上させる目的で、カーネル空間とユーザ空間のあいだのio_uring通信をサポートするFUSEサポートが追加されている。
その他、興味深いアップデートとしては、キャッシュなしのバッファI/Oのサポートとして、高速ストレージデバイスのRAMが不要なページキャッシュでいっぱいになることを防ぎ、I/Oパフォーマンスを向上させる「RWF_UNCACHED」フラグが実装されているほか、ファイルコンテンツにアクセスする前に生成されるfsnotifyイベント「FS_PRE_ACCESS」が新たに導入される。
その他にもx86 TLBフラッシュのスケーラビリティ最適化、GPUメモリリソースをより適切に制御するdmem cgroup、NFSv4.2の属性委任によるファイルのmtime管理などが行われている。
Linusはすでに次のリリースとなる「Linux 6.15」のマージウィンドウをオープンしており、開発者からのプルリクエストを受け付けている。Linux 6.15は今回のLinux 6.14以上に大きな変更が実施されることが期待されており、エキサイティングなリリースとなりそうだ。