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Fedoraプロジェクト⁠条件付きで生成AIによるコード貢献を受け入れへ

Fedoraプロジェクトのリーダーシップとガバナンスを担う組織「Fedora Council」は10月22日、生成AIおよび大規模言語モデル(LLM)を活用したコード貢献を許可する決定を下した。この決定にともない、Fedora CouncilはAI支援貢献(AI-Assisted Contributions)ポリシーの最新版を正式に承認、開発者はこのガイドラインに従う限り、AIを活用したコードを貢献に含めることができるようになった。

Fedora Councilが承認したAI支援による貢献ポリシーの概要は以下の通り。

説明責任
開発者は貢献に対して責任を負う必要があり、人間の手によってであれ、LLM/生成AIツールによるものであれ、すべての貢献はプロジェクトの参加基準を満たしている必要がある。貢献者はつねに作者であり、貢献全体に対して完全な責任を負う。
透明性
貢献の大部分がAIツールからなされたものである場合は、AIツールの使用を必ず開示すること。また、AIツールのその他の用途であっても、有用と思われる場合は開示すべき。ただし文法やスペルチェックなどに関しては開示は不要。開示は通常、著者が明示されている場合に行われる。
貢献とコミュニティの評価
AIツールは分析や提案を提供することで人間のレビュー担当者を支援できるが、AIを貢献に対する実質的または主観的な判断を行うための唯一または最終的な裁定者として使用することは許可されない。また、コミュニティ内での人物の立場(資金調達、リーダーシップなど)を評価するためにAIを使用することも許可されない。ただしCI/CDパイプライン、自動テスト、スパムフィルタリングなど客観的な技術検証のための自動ツールの使用は禁止されない。貢献の承認に関する最終的な責任は(たとえ自動システムによって作成された場合でも)つねにそのアクションを承認した人間の貢献者に帰属する。
大規模なイニシアティブ
本ポリシーはプロジェクトの運営方針に大きな変化をもたらす可能性のある、あるいはプロジェクトの一部への貢献が飛躍的に増加する可能性のある大規模なイニシアティブには適用されない(別途Fedora Councilと協議が必要⁠⁠。

なお、Fedora CouncilのメンバーであるAoife Moloneyはこのポリシーの承認にあたり、⁠Fedora CouncilはAI技術の進化に対応するため、このポリシーが今後更新される必要があることを十分に認識している。ポリシー変更ポリシー(the policy change policy)がこの初期ポリシーへの変更が必要になった時点で適用されることになっている」とコメントしており、AIの進化と普及のスピードにあわせて本ポリシーも随時アップデートされるとしている。

Fedoraプロジェクトでは2024年5月からAI支援による貢献に関するポリシー策定プロセスを開始しており、ポリシーの策定をめぐってさまざまな議論が噴出していたが、2025年9月に大まかなポリシー案がまとまり、今回の正式承認に至っている。Fedoraコミュニティの内部にはオープンソースコミュニティが作成するディストリビューションにAIが作成したコードを入れることに強く反対する人々が少なくないが、一方で現在のFedoraプロジェクトリーダーであるJeff Spaletaは「仮にAIツールを厳しく禁止したとしても、人々がAIツールを使うことを止めることはできない」として、AIツールの禁止は本質的に不可能という立場をとっていた。ポリシー策定後もAI利用に対する懸念は残っており、議論は今後も続きそうだ。

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