10回目を迎えた「iOSDC Japan 2025」カンファレンスレポート

iOSDC Japan 2025とは

iOSDC Japan 2025はiOS関連技術をコアのテーマとしたソフトウェア技術者のためのカンファレンスです。日本中、世界中から公募した知的好奇心を刺激するトークの他にも、パンフレットに掲載された技術記事、懇親会など、初心者から上級者まで楽しめるコンテンツが用意されています。

今回で第10回となるiOSDC Japan 2025は2025年9月19日(金)〜 9月21日(日)の3日間にわたって開催されました。今年は会場が変わり、有明セントラルタワーホールでおこなわれました。

このレポートでは昨年初めてiOSDC Japanにスタッフとして参加し、今年初めてルーキーズLTにスピーカーとして登壇した私(著者)が、iOSDC Japan 2025のコンテンツをいくつかピックアップしてレポートしていきます。

集合写真

オリジナルパンフレット

通常のトークの他に「パンフ記事」という枠を設け、採択された内容をパンフレットに投稿できます。手元に形として残るため、通常のトークとはまた違った魅力があるということで、毎年人気となっています。今年は27本もの原稿が採択され、iOSに関連した技術記事やコミュニティイベントなど、幅広い記事が掲載されました。また、スポンサーからも独自の内容がパンフレットに寄稿されました。事業内容やアプリ紹介、エンジニアへのインタビューなどを通じて、会社の雰囲気や働き方などを知ることができます。

参加者全員に配られるパンフレット

年々分厚くなっているパンフレットですが、今年初めて、パンフレット内に掲載されているタイムテーブルが分離できるようになりました! これにより、重いパンフレットを持ち運ばなくてもタイムテーブルが確認できるようになりました。

パンフレット内の「タイムテーブル」

Swiftコードバトル

昨年に引き続き、day0では「Swiftコードバトル」が実施されました。Swiftコードバトルとは、問題として出題された動作をするSwiftのコードをより短く書けたプレイヤーが勝ちという1対1の対戦バトルです。事前に開催した予選会を勝ち抜いた6名の選手が優勝を目指して白熱した戦いを見せました。

本戦ではプレイヤーが実際に試行錯誤しながらコードの文字数を削っている様子がリアルタイムでスクリーンに投影されており、コードが短くなるたびに観客からの歓声につつまれ盛り上がっていました。

決勝戦では今年のiOSDC Japanのロゴを表すという問題が出題されました。Xcodeの機能を駆使し、パターンを見つけ文字列を使用し、圧縮するという技を使用し、去年のリベンジを果たしたkntk(@kntkymt氏が優勝しました!

Swiftコードバトルの決勝戦

スポンサーブース

今年は80社がスポンサーとして協賛し、そのうちの47社がスポンサーブースを出展しました。ミニゲームやクイズを出題しているブース、実際にプロダクトを触りながら担当の方と交流できるブースなど、さまざまな企画をしているブースがあり、双方向のコミュニケーションを楽しめる場となっていました。

様々な企画が実施されたスポンサーブース

トークセッション

トークセッションはトラックA〜Dの4つの会場に分かれ、レギュラートーク・LT・ルーキーズLTを合わせた全89本のトークがおこなわれました。

その中でも個人的に印象的だったトークをいくつか紹介します。

iOSDJ2025 for the 10th anniversary

day0 オープニング後すぐのトークとして、Hiromu Tsuruta氏(@hcrane14による「iOSDJ2025 for the 10th anniversary」がありました。

Hiromu Tsuruta氏によるトーク

iOSDC Japan 2025が10回目という記念すべき節目を祝うために、トーク冒頭でStream Deckを使ったDJが繰り広げられ、会場は大盛り上がりを見せました。

その後はSwiftでStream Deckのプラグインを作る方法についての技術的な解説が行われました。StreamDeckPluginというライブラリを使うことで、Swiftで書いたプラグインの実行が可能になることが紹介されました。SwiftでStream Deckのようなデバイスを動かすという知見があまりなかったので、面白かったです。

カスタムUIを作る覚悟

day1のトークからは、まつじ氏(@mtj_jによる「カスタムUIを作る覚悟」を紹介します。

まつじ氏によるトーク

Appleが提供するAPIにはない表現で実現されたUIのことをカスタムUIと呼びます。標準APIではなくカスタムUIを実装する場合は、アクセシビリティ・アニメーション・複数プラットフォームなどへの対応を自分で考慮する必要があります。

カスタムUIにした場合に「すべてに対応しなければいけない」という話ではないが、⁠対応しないという判断をした・対応できていない」という認識を持つ必要があることを学びました。カスタムUIを作る際はUIデザイナーとエンジニア間での境界を引きすぎず、協業して取り組むことの重要性を感じるトークでした。

トークを聞いた参加者からは「iOSエンジニアだけではなく、デザイナーと一緒に聞きたいトークだった」という声が多く聞かれました。

「iPhoneのマイナンバーカード」のすべて

day2のトークからは、Daiki Matsudate氏(@d_dateによる「iPhoneのマイナンバーカードのすべて」を紹介します。

Daiki Matsudate氏によるトーク

デジタル身分証の規格であるISO/IEC 18013-5 mDLやISO/IEC 23220のmDocといった国際標準について説明があり、その基準に基づいてマイナンバーカードをiPhoneで使用できるようにしたという背景の話がありました。また、マイナンバーカード専用クラスのJPKIPassContentsのドキュメント作成の裏話もあり、興味深かったです。

トークを聞くなかで、対面で本人確認を行うID Verifier APIとアプリ内で本人確認を行うVerify with Wallet APIの2つのAPIの使用用途の違いや具体的な実装方法を理解することができ、実際にアプリに導入するイメージが沸きました。また、Androidでも2026年にmdoc対応予定であることを初めて知り、両OSでのiPhoneのマイナンバーカードを使用した本人確認の導入が進むのが楽しみです。

LT大会

iOSDC Japan 2025の醍醐味でもあるLT大会が今年も開催されました。day1にはiOSDC Japanに初登壇するスピーカー限定の「ルーキーズLT大会⁠⁠、day2には「LT大会」が開催されました。

day1 ルーキーズLT大会

day1にはルーキーズLT大会が開催されました。

iOSDC Japanの登壇はハードルが高いと思われる人は、ルーキーズLT大会から登壇してみるのもおすすめです。ルーキーズLTに採択されたスピーカー向けにiOSDC Japan 2025 ルーキーズLT練習会が開催されます。そこでは発表経験が豊富なiOSDC Japanスタッフがトークを聴き、どうしたらより良いトークになるかを一緒に考えてくれます。そうして、ルーキーズLTの登壇者が本番で堂々と話し、会場も盛り上がりを見せました。

私も今年ルーキーズLTで登壇したのですが、そこでアドバイスをもらったことで自信を持って登壇できました。また、ルーキーズLT登壇予定のスピーカーの方々と事前に仲良くなれたのはとても心強かったです。

ルーキーズLT

day2 LT大会

day2にはLT大会が開催されました。

今年はなんとアプリ内課金の話が5連続で発表され、アプリ内課金の実装を知ることができて面白かったです。その他にも、さまざまな知識を凝縮したLTが5分に詰め込まれており、幅広い知見を広めることができました。

LT大会

なお、入場時に配布されたペンライトを持った観客で会場が埋め尽くされており、一瞬ライブ会場に来たのかと錯覚するほどでした。残り時間が30秒を切ったタイミングで、緊迫した音楽とともにスクリーンに「残り時間わずか ペンライトを振れ!!」という文字が表示されるのを合図に、ペンライトを一斉に振り、会場がスピーカーの推し色に染まっていました。

10周年ならではの取り組み

お菓子・軽食ブースではiOSDC Japanの10周年のロゴをプリントアウトした水や、ロゴをイメージしたお菓子が提供されました。3日間それぞれで異なる種類のものがブースに置かれており、参加者の方々も関心していました。

お菓子・軽食ブースでは、これまでデザインされたものも並んでいました

また、10種類の過去のiOSDC Japanのロゴが並んでいるパーカーを作成しました。スピーカーやスポンサーブースを回ってスタンプを集めると引くことができる抽選の景品として配られました。ロゴ入りのパーカーを見た参加者からは「懐かしい!」という声があがっていました。

10周年のロゴ入りパーカー

おわりに

今年のiOSDC Japan 2025は、10周年にふさわしく大盛り上がりを見せ、盛況のうちに閉幕しました。それも参加していただいた皆さんのおかげです。改めて、iOSDC Japan 2025に関わってくださった参加者、スピーカー、スポンサー、スタッフなどさまざまな形でご参加いただいた皆さん、ありがとうございました。

今回iOSDC Japanのスタッフとして多くの方々と話して、iOSエンジニアだけではなく、学生の方、iOSエンジニアを目指している方、デザイナーやiOS技術に興味がある方など、さまざまなバックグラウンドの方々が参加していると感じました。⁠カンファレンスは自分にはまだ早い」と思って参加タイミングを見計らっている方は、ぜひ勇気を出して一歩踏み出して参加してみてください! カンファレンスでの学びや出会いがきっと良い刺激になると思います。

来年もまた皆さんと一緒に最高なiOSDC Japanを作り上げられることを心から楽しみにしています!

また来年!!

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