Microsoft⁠.NET 10をリリース

Microsoftは2025年11月11日、ネット上で開催中のバーチャルイベント.NET Conf 2025において、.NETの最新バージョンとなる「.NET 10」のリリースを発表した。.NET 10はLTS(Long Term Support)リリースとして3年間サポートされる。今回のリリースで、C# 14とF# 10、Aspire 13、Visual Studio 2026も同時に提供開始されている。

.NET 10ではパフォーマンス、ライブラリ、AI拡張機能を含め、横断的に機能が改善されている。

  • 実行とメモリ効率が改善した。JITのインライン化や仮想呼び出しの削減、AVX10.2/Arm64 SVEへの対応、Arm64 write-barrierの改善でGC一時停止時間の短縮がおこなわれた。NativeAOTでは起動時間とサイズが抑えられ、ループ反転やスタック割り当て最適化などのコード生成が改善した。
  • 暗号やネットワークの対応が改善した。量子耐性暗号(PQC)対応、WebSocketStream、macOSでのTLS 1.3、PipeReader、AES KeyWrap with Paddingなどが追加された。
  • AIへの対応として、Microsoft Agent Frameworkと、Microsoft.Extensions.AIおよびMicrosoft.Extensions.VectorDataで複数エージェント・モデル連携が容易になった。さらにMicrosoft Agent FrameworkはAG-UIプロトコル互換となり、リアルタイムにフロントエンド連携がしやすくなった。

.NET 10 SDKのCLIでは、名詞優先の新しいコマンドエイリアスdotnet package addなど)による一貫性向上と、dotnet completions generateによる主要シェル向けのタブ補完スクリプトに対応した。また、dotnet tool execでインストール不要の一時的なツール実行が可能になった。

.NET 10にあわせてC# 14F# 10がリリースされている。いずれもコードを短く安全かつ高速に書くための機能が追加された。C# 14はプロパティの記述やメモリ操作のSpan関連の改善、F# 10は警告の抑制/整理と並列コンパイル高速化によるビルド時間短縮が含まれる。

特に.NET 10では単一のC#ファイルをそのままdotnet run app.csといったかたちで実行できる「ファイルベースアプリ」の機能が強化された。プロジェクトファイル(.csproj)を作成せず、一つの.csファイルにトップレベルステートメントを書くだけで動作する。必要に応じてファイル冒頭にファイルレベルディレクティブ#:package#:sdkなど)をおけるほか、シェルスクリプトとして実行するためのshebang#!/usr/bin/env dotnetなど)を記述できる。

分散アプリ向けフレームワークAspire 13⁠.NET Aspire⁠から単に⁠Aspire⁠へ再ブランドされ、Python/JavaScriptが.NETと同列のファーストクラス言語として扱われるようになった。Vite/React+FastAPIなどのスターターテンプレートに加え、Pythonでは「単一スクリプト」⁠複数モジュール構成」⁠ビルド済み実行ファイル」⁠Uvicornで起動するASGIアプリ(FastAPI等⁠⁠」といった起動形態をまとめて扱える。そのほか、単一ファイルAppHostやC#ファイルベースアプリとのシームレスな併用、aspire doによる並列パイプラインなども加わっている。

ASP.NET Coreでは、Blazorの状態永続化と Pause/Resume機能により長時間の切断や一時中断からの復帰が滑らかになった。初期表示や大きなレスポンス処理の速度とメモリ効率も向上している。API開発ではOpenAPI 3.1形式が使えるようになった。ほかにもWebAuthn/FIDO2に基づくPasskey対応などが追加されている。

.NET MAUIでは、Android 16とiOS 26対応がおこなわれた。また、Marshalの最適化で起動が速くなり、Webリクエストのインターセプトで通信制御が柔軟になった。このほか、MediaPickerの複数選択やEXIF自動取得、画像圧縮、SafeAreaEdges APIによる統一レイアウト、XAMLソースジェネレータを使った記述削減などが追加されている。

なお今回、UIフレームワークを提供するAvaloniaはWebAssemblyを利用して、LinuxとWebブラウザで動作する.NET MAUIアプリケーションを紹介している。さらに先日、GoogleのFlutterチームと提携し、Impellerレンダリングエンジンを.NETに導入する計画も公表している

このほか、O/RMであるEntity Framework Core 10ではSQL Server/Azure SQLのvector型とネイティブJSON型、Cosmos DBのフルテキスト検索とハイブリッド(ベクトル+全文)検索、JSONカラム部分更新、ログ出力の機密情報レダクション(マスク)などに対応した。Windowsデスクトップ領域ではWinFormsのクリップボード処理改善とUITypeEditorの移植、Fluentスタイル更新、WinUI 3のWindows App SDK対応などが進んだ。

さらに今回の発表にあわせて、AI統合や開発体験の改善がおこなわれたVisual Studio 2026もリリースされた。Adaptive Paste、Profiler Copilot Agent、Debugger Agentなどの個別機能が追加され、Profiler Copilot AgentではCPU/メモリ分析と最適化候補の提示、Debugger Agentではテスト失敗時の修正提案の反復ができるようになった。また、Mermaid表示やSLNX対応、起動時間とメモリ使用の削減、Aspire連携なども改善している。


.NET 10はVisual Studio 2026でサポートされるほか、SDK、Webアプリ用のASP.NET Coreランタイム、デスクトップアプリ用の.NETデスクトップランタイム、およびコンソールアプリのみ実行できるコンポーネントの.NET RuntimeがMicrosoftのダウンロードページから入手可能。

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