GitLabが解説:ロードマップとは? ソフトウェア開発における役割、メリット、作り方

効果的なロードマップの作成方法

第2回となる本稿では、ソフトウェア開発におけるロードマップの具体的な作成方法、作成時の注意点について論じます。

ロードマップの作成ステップ

ここでは、実際のロードマップの作成方法について解説します。

目標設定

まずは目標設定を行い、プロジェクトとして進むべき方向性を明確化します。目標設定においては、関係者全員が理解できるよう具体性を持たせることが大切です。また、目標達成のハードルが高い場合、メンバーのモチベーション低下を招いてしまう原因にもなるため、実現可能な目標を設定しましょう。

例えば、ソフトウェア開発において顧客にプロダクトを納品するなら、具体的な納品日を目標として設定すると良いでしょう。

明確な目標を持つことで、チームは開発優先度を共有しやすくなり、無駄なリワークを防ぐことができます。GitLabの調査「ソフトウェアイノベーションによる経済効果」では、ソフトウェアイノベーションに取り組む企業の65%が、過去1年間に生産性の向上を実感していることが分かりました。このデータはソフトウェア戦略をビジネスと整合させることが、より良い成果につながることを示しています。

現状把握

目標設定が完了したら、現状抱えている課題を洗い出します。例えば、顧客にプロダクトを予定通り納品するにあたり、⁠開発リソースは足りているか?」⁠メンバー構成に問題はないか?」などの現状の状態をチェックしていきます。開発メンバーや顧客に対してもヒアリングを行い、プロジェクト開始前に懸念点がないか確認しておくと良いでしょう。

現状課題があるのにもかかわらずプロジェクトが開始されると、トラブルが発生してしまう可能性が高くなるため、現状把握を徹底して行い事前に課題を解消しておきましょう。

リスク対策

プロジェクト開始前には進行中に想定されるリスクについても洗い出し、必要な対策を検討しておく必要があります。例えば、市場の変化や顧客の要望により急な仕様変更が発生したり、タスクの依存関係からスケジュールに影響が出たりする可能性もあります。

そういったリスクが実際に起こった時にどのような対策を講じるのかを事前に検討しておくことで柔軟かつ迅速に対応できるため、プロジェクト進行における安定性を高められるでしょう。

マイルストーンの設定

マイルストーンは、プロジェクトにおける中間目標を指します。最終的な目標だけでなく、中間目標であるマイルストーンを設定することで進捗管理がしやすくなります。また、長期に及ぶプロジェクトであっても、中間目標があることで着実に作業が進んでいることを実感できるため、メンバーのモチベーションも保ちやすくなるでしょう。

なお、マイルストーンを設定する際は、実現可能性を意識し、無理のない計画にしましょう。

スケジュール計画表の作成

最終目標やマイルストーンなどの情報を実際にスケジュールに組み込んでいきます。スケジュールを作成する際には、ガントチャートや計画表、フローチャートなどのフォーマットを利用します。

ソフトウェア開発ならタスクの細かな期日や依存関係を把握できるガントチャートの利用が有効です。ガントチャートを作成する際にはWBS(Work Breakdown Structure:作業分解構成図)についても理解しておく必要があります。

WBSとは、プロジェクトを達成するためにどのようなタスクが必要なのかを整理したリストを指します。WBSによって細分化されたタスクを利用してガントチャートを作成するため、両者は密接な関係にあります。

関係者への共有と改善

ロードマップが無事完成したらプロジェクトにおける関係者全員に共有します。その際、開発メンバーや顧客から計画や内容の修正案が出た場合は、必要に応じてブラッシュアップします。

また、プロジェクトは関係者全員が同じ認識を持って進めることが望ましいです。丁寧に擦り合わせを行いメンバーの意見をきちんと反映する意識を持つことが大切です。

ロードマップ作成時の注意点

ロードマップは以下のようなポイントを意識して作成しましょう。

見やすさを意識して作成する

ロードマップは関係者全員に共有するものであるため、誰もが見やすいように視認性の高さを意識することが大切です。例えば、レイアウトを工夫したり、重要なマイルストーンにはアイコンを適宜活用したりすると良いでしょう。

ロードマップに情報を詰め込み過ぎると、かえって見づらくなり、重要なポイントを見逃してしまう可能性もあるため、内容は必要最低限に絞り、視認性を保つことが大切です。

計画の実現性を意識する

ロードマップを作成する際には、設定した目標や計画が実際に実現可能なのかも精査しましょう。

例えば、ソフトウェア開発なら「設定した納期は現実的であるか?」⁠現状のエンジニアのスキルや人数でタスクを完了させられるのか?」などの実現性を細かにチェックします。

また、計画を立てる際に開発メンバーや顧客の要望に答え過ぎると全体の方向性がブレたり、実現不可能な計画になってしまったりする可能性があるため注意が必要です。関係者の声はきちんと拾い上げつつも、その情報を実際に計画に反映するかどうかはきちんと検討しなければなりません。

定期的な見直しを実施する

ロードマップは静的な計画ではなく、変化に合わせて進化させる必要があります。GitLabの調査では、日本の経営層の約半数がAI導入におけるセキュリティリスクやデータプライバシーを懸念しており、企業はガバナンスにおける優先事項を見直す必要があることが明らかになっています。この調査結果は、優先事項の変化へ柔軟に対応するために、動的なロードマップが必要であることを裏付けています。

ロードマップは一度作成して終わりではなく、定期的な見直しが必要です。例えば、アジャイル開発ならスプリント終了時に現状把握と必要に応じてロードマップの修正を行います。

また、プロジェクト進行中にリソース不足から作業の遅延が発生したり、情勢の変化によって新たなニーズが生まれたりした場合なども、変化に合わせて柔軟に更新する必要があります。定期的な見直しとリスク評価を組み込むことが、信頼性の高いロードマップ活用の鍵になります。

次回は、ロードマップ作成に用いる手段の選択肢や、ロードマップ作成に便利なプロジェクト管理ツールの選定ポイント、そしてロードマップ作成にあたってぶつかりやすい課題と対策についてご紹介します。

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