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Firefoxを“モダンAIブラウザ” ―Mozilla新CEOの就任メッセージにブラックボックス化を懸念する

Chromeなど最近のモダンブラウザはAI機能がデフォルトでオンになっており、クエリを入力するたびに「AIによる概要」が最初に示されることが多い。しかし機能面に加え、プライバシーや信頼性の観点から「ブラウザにAI機能は不要」と思っているユーザも少なくなく、そうしたユーザにとってFirefoxは貴重な存在であるといえる。また、ソースコードも開発プロセスもオープンに公開されているFirefoxは、Linuxユーザにとっても日々の活動を支えるためのもっとも重要なソフトウェアコンポーネントだといっていい。そのFirefoxが現在、Mozillaの新CEO就任に伴って⁠モダンAIブラウザ⁠への方針変更が示されたことから、多くのユーザの間で不安と懸念が広がっている。

12月16日、MozillaでFirefoxのゼネラルマネージャを務めていたAnthony Enzor-DeMeoがMozillaのCEOに就任し、同時に就任メッセージを公開した。そこには「Mozillaが信頼されるソフトウェア企業となるために、今後3年間に渡ってAIへの投資を実践する」と宣言されており、FirefoxへのAI機能実装を推進していく方針が打ち出されている。

もっともEnzor-DeMeoは、これまで⁠プライバシー重視のブラウザ⁠として勝ち得てきた既存のFirefoxユーザからの信頼を失わないよう、⁠AI機能はすべてオプトインとし、完全な透明性を約束する」と表明しているが、AIフリーを理由にFirefoxを選んできたユーザからの反発は少なくなく、ソーシャルメディアなどでは否定的な意見が相次いでいる。これに対し、Firefox開発チームは「すべてのAI機能は完全に無効にするオプションがあり、オプトイン方式で提供される」と火消しに走っているものの、批判の声はいまだにやんでいない。

Post by @firefoxwebdevs@mastodon.social
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このMozilla/Firefoxの方針発表に対し、FirefoxからフォークしたオープンソースブラウザのWaterfoxの開発チームは「存亡の危機に瀕しているMozillaの立場は理解するが、しかしMozillaは根本的な間違いを犯している」として批判、とくに⁠AI機能⁠としてLLMを用いた機能をブラウザに実装することによるブラックボックス化のリスクを指摘している。⁠LLMはブラックボックスであり、監査もできないし、データをどのように扱っているのかを真に理解することもできない。動作の検証も無理。Mozillaはそれらをブラウザの中核に据えようとしているが、とうてい納得できるものではない」⁠Mozillaは⁠AI機能はオプトインで提供する⁠と言っているが、ブラックボックスがオンになったときに実際に何を行っているのかをどうやって追跡するのか? その動作を監査するにはどうすればいいのか? ユーザが気づかないうちにAIがブラウジング体験を変えていないとどうやって確認できるのか?」⁠Alex Kontos / Waterfox)

周知の通り、Mozillaはここ数年、厳しい経営環境に置かれており、従業員のレイオフやグローバルプログラムの中止などネガティブなニュースが続いてきた。一方で生成AIの急激な普及はブラウザ市場にも変化をもたらしつつあり、LLMやAIエージェントの実装によってユーザエクスペリエンスが大きく変わる可能性が高い。MozillaがFirefoxにAI機能の実装を図ることで、信頼性や透明性といったこれまでの評価とは別の価値を付加し、ブラウザ市場でのシェアを高めようとする動きに出たことはある意味、自然な流れだといえる。今後、Firefoxユーザ、そしてFirefoxを搭載してきたLinuxディストリビューションがどういう選択と判断を行うのかが注目される。

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