三歳までに脳で何が起きているのか?
~コトバや喜怒哀楽、知能、性格はこうして生まれる

[表紙]三歳までに脳で何が起きているのか? ~コトバや喜怒哀楽,知能,性格はこうして生まれる

紙版発売

A5判/176ページ

定価2,068円(本体1,880円+税10%)

ISBN 978-4-7741-5327-8

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書籍の概要

この本の概要

「三つ子の魂百まで」と言いますが,生まれてたての赤ちゃんは言葉もしゃべれません。自分を認識すらしていません。誕生から三歳までの間に,人間の脳ではどんなことが起きているのでしょうか。実は,最新研究でさまざまなことが解き明かされています。サイエンスライターの西村尚子氏が,そういった脳研究の最前線を人間の脳形成というテーマでわかりやすくまとめたのが本書です。最新脳科学を面白く,わかりやすく読むことができます。

こんな方におすすめ

  • 最新脳科学に関心のある人
  • 子育て中のお父さんお母さん

目次

  • はじめに

プロローグ

1 こんなに不思議、子どもの脳

2 脳はどうやって研究されてきたのか?

3 脳のなりたちとはたらき

1章 回路をつくる

【基本解説】脳は、いつ、どうやってできるの?

  • 脳の発生
  • 胎児の脳もはたらいている?
  • 誕生後の回路づくり

1 増えたり減ったりするシナプス

  • シナプスとは?
  • 増えたり、減ったり
  • ヒトらしさとシナプスの可塑性
  • COLUMN シナプスにある小さなトゲ

2 ほとんど休眠、時々はたらく神経幹細胞

  • 脳の幹細胞
  • 休眠状態を観察する

3 シナプスのメンテナンスを請負う「ミクログリア」

  • 特殊な顕微鏡による観察
  • 単なる「糊」ではなかったミクログリア

4 ニューロンの先端は、右ねじ方向に回転しながら伸びる

  • 神経突起の動きを3次元でとらえる
  • 回転の原動力となるモータータンパク質
  • 脳機能の左右非対称性との関連も

5 新生児だけにみられる原始反射は、大脳の回路ができると消失

  • まず必要なのは、呼吸と母乳を吸うこと
  • さまざまな原始反射
  • 反射の消失と回路の構築
  • COLUMN 大人にもある、さまざまな脊髄反射

6 回路に組み込まれるのは、成熟したニューロン

  • 成熟度で、大きさ、形、機能が異なる
  • 回路の未熟なニューロンと統合失調症
  • 抗うつ薬は神経細胞を未熟な状態に戻す?

7 神経回路の不具合と発達障害

  • 発達障害とは?
  • アスペルガー症候群
  • 脳で何がおきているのか?
  • 大きいとされる遺伝的要因

8 男の子の脳と女の子の脳

  • 男らしさと女らしさをもたらす脳
  • 具体的な脳構造の男女差
  • 女の脳を「男型」につくりかえる

2章 言葉を操る

【基本解説】なぜヒトだけが言語をもつのか?

  • ヒトとチンパンジーをくらべる
  • 鍵は調節遺伝子のはたらき具合?

1 生後4か月までに発達する「母語の音声認識」

  • 5歳までに3000語の母語を学習
  • 生後4か月で母語を聞き分ける?

2 大人になってからの外国語の習得は可能?

  • 動物で発見された臨界期
  • サルやヒトにも
  • 大人になってからの外国語習得

3 言語中枢と失語症

  • ブローカ野と失語症
  • ウェルニッケ野と失語症
  • 言葉の処理過程のモデル

4 臨界期以降の外国語習得と、そのための中枢

  • ブローカ野には文法中枢
  • 外国語習得のための「文字中枢」
  • 外国語習得度をfMRIで判定?

3章 感情をつむぐ

【基本解説】喜怒哀楽はどうやって生まれるの?

  • 情動と脳の研究史
  • 情動にかかわる脳の部位
  • 一筋縄ではいかないヒトの情動障害

1 「快」と「不快」、感情の芽生え

  • 基本となる、お母さんとの愛着
  • 恐怖や不安を感じるしくみ
  • 快感を感じるしくみ
  • 前頭前野で感情をコントロール

2 赤ちゃんも、笑顔と怒った顔を区別して認識

  • 笑顔と怒った顔に対する脳の反応
  • 脳は、ほめると反応する

3 性格はどうやってつくられる?

  • 怪しい血液型の性格診断
  • どこまでが遺伝子で決まるの?

4 ほめられたい、役に立ちたい、尊敬されたい

  • ヒトがもつ他人に共感する回路
  • チンパンジーにみられる利他的行動の萌芽が

5 感情の不具合と精神疾患

  • 日本で20人に1人がかかるうつ病
  • うつ病と誤診されやすい躁うつ病
  • トラウマ記憶は消せる?

4章 学習と記憶

【基本解説】「頭がいい」ってどういうこと?

  • 重要なのは、脳の各機能を統合すること
  • 1%のひらめきと99%の努力?

1 学習とは、新たな情報や知識をたくわえること

  • ウミウシではじまった学習の研究
  • ウミウシの連合学習

2 シナプスの変化と学習効果

  • 空間的な記憶と長期増強
  • 運動の記憶と長期抑圧
  • 神経回路の形が変わる

3 記憶の分類と記憶障害

  • すぐ忘れる記憶と忘れない記憶
  • 記憶の障害

4 記憶の発達

  • まずは短期記憶が発達
  • 記憶内容を象徴として使えるようにも

5 知能や記憶力は遺伝子に左右されるの?

  • 双子を対象にした研究
  • 動物では分子レベルの研究も

6 判断に迷うほど、賢くなる?

  • 迷うほど賢くなる?
  • 迷ったときの前頭葉の活動
  • 教育や産業にも応用
  • COLUMN「迷いの中枢」を突き止めた田中博士の実験
  • おわりに
  • 索引

著者プロフィール

西村尚子(にしむらなおこ)

1967年に東京生まれ、神奈川県で育つ。1991年、早稲田大学人間科学部人間基礎科学科卒業。専攻は細胞生物学。1992年より約10年にわたって科学雑誌『ニュートン』の編集に携わった後、フリーランスのサイエンスライターとして活動。生命科学分野の仕事を得意とする。ネイチャー アジア・パシフィックの特約記者でもある。

これまでの主な仕事は、雑誌として『nature日本版』『nature digest』『三洋化成ニュース』『JST ニュース』など、書籍として『花はなぜ咲くの?』(化学同人)、『サイエンスコミュニケーション 科学を伝える5つの技法』(日本論評社)、『きっずジャポニカ』(小学館)など、冊子として『理化学研究所 GSCの10年とゲノム科学の新たなる挑戦』『GSCアニュアルレポート2006』、ウェブとして『国立遺伝学研究所ホームページ』『日本語バイオポータルサイト』(国立情報学研究所)などがある。 2008~2010年3月まで、NPO幹細胞創薬研究所の生命倫理委員も務めた。