三歳までに脳で何が起きているのか?
~コトバや喜怒哀楽、知能、性格はこうして生まれる
2012年10月20日紙版発売
西村尚子 著
A5判/176ページ
定価2,068円(本体1,880円+税10%)
ISBN 978-4-7741-5327-8
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書籍の概要
この本の概要
「三つ子の魂百まで」と言いますが,生まれてたての赤ちゃんは言葉もしゃべれません。自分を認識すらしていません。誕生から三歳までの間に,人間の脳ではどんなことが起きているのでしょうか。実は,最新研究でさまざまなことが解き明かされています。サイエンスライターの西村尚子氏が,そういった脳研究の最前線を人間の脳形成というテーマでわかりやすくまとめたのが本書です。最新脳科学を面白く,わかりやすく読むことができます。
こんな方におすすめ
- 最新脳科学に関心のある人
- 子育て中のお父さんお母さん
目次
- はじめに
プロローグ
1 こんなに不思議、子どもの脳
2 脳はどうやって研究されてきたのか?
3 脳のなりたちとはたらき
1章 回路をつくる
【基本解説】脳は、いつ、どうやってできるの?
- 脳の発生
- 胎児の脳もはたらいている?
- 誕生後の回路づくり
1 増えたり減ったりするシナプス
- シナプスとは?
- 増えたり、減ったり
- ヒトらしさとシナプスの可塑性
- COLUMN シナプスにある小さなトゲ
2 ほとんど休眠、時々はたらく神経幹細胞
- 脳の幹細胞
- 休眠状態を観察する
3 シナプスのメンテナンスを請負う「ミクログリア」
- 特殊な顕微鏡による観察
- 単なる「糊」ではなかったミクログリア
4 ニューロンの先端は、右ねじ方向に回転しながら伸びる
- 神経突起の動きを3次元でとらえる
- 回転の原動力となるモータータンパク質
- 脳機能の左右非対称性との関連も
5 新生児だけにみられる原始反射は、大脳の回路ができると消失
- まず必要なのは、呼吸と母乳を吸うこと
- さまざまな原始反射
- 反射の消失と回路の構築
- COLUMN 大人にもある、さまざまな脊髄反射
6 回路に組み込まれるのは、成熟したニューロン
- 成熟度で、大きさ、形、機能が異なる
- 回路の未熟なニューロンと統合失調症
- 抗うつ薬は神経細胞を未熟な状態に戻す?
7 神経回路の不具合と発達障害
- 発達障害とは?
- アスペルガー症候群
- 脳で何がおきているのか?
- 大きいとされる遺伝的要因
8 男の子の脳と女の子の脳
- 男らしさと女らしさをもたらす脳
- 具体的な脳構造の男女差
- 女の脳を「男型」につくりかえる
2章 言葉を操る
【基本解説】なぜヒトだけが言語をもつのか?
- ヒトとチンパンジーをくらべる
- 鍵は調節遺伝子のはたらき具合?
1 生後4か月までに発達する「母語の音声認識」
- 5歳までに3000語の母語を学習
- 生後4か月で母語を聞き分ける?
2 大人になってからの外国語の習得は可能?
- 動物で発見された臨界期
- サルやヒトにも
- 大人になってからの外国語習得
3 言語中枢と失語症
- ブローカ野と失語症
- ウェルニッケ野と失語症
- 言葉の処理過程のモデル
4 臨界期以降の外国語習得と、そのための中枢
- ブローカ野には文法中枢
- 外国語習得のための「文字中枢」
- 外国語習得度をfMRIで判定?
3章 感情をつむぐ
【基本解説】喜怒哀楽はどうやって生まれるの?
- 情動と脳の研究史
- 情動にかかわる脳の部位
- 一筋縄ではいかないヒトの情動障害
1 「快」と「不快」、感情の芽生え
- 基本となる、お母さんとの愛着
- 恐怖や不安を感じるしくみ
- 快感を感じるしくみ
- 前頭前野で感情をコントロール
2 赤ちゃんも、笑顔と怒った顔を区別して認識
- 笑顔と怒った顔に対する脳の反応
- 脳は、ほめると反応する
3 性格はどうやってつくられる?
- 怪しい血液型の性格診断
- どこまでが遺伝子で決まるの?
4 ほめられたい、役に立ちたい、尊敬されたい
- ヒトがもつ他人に共感する回路
- チンパンジーにみられる利他的行動の萌芽が
5 感情の不具合と精神疾患
- 日本で20人に1人がかかるうつ病
- うつ病と誤診されやすい躁うつ病
- トラウマ記憶は消せる?
4章 学習と記憶
【基本解説】「頭がいい」ってどういうこと?
- 重要なのは、脳の各機能を統合すること
- 1%のひらめきと99%の努力?
1 学習とは、新たな情報や知識をたくわえること
- ウミウシではじまった学習の研究
- ウミウシの連合学習
2 シナプスの変化と学習効果
- 空間的な記憶と長期増強
- 運動の記憶と長期抑圧
- 神経回路の形が変わる
3 記憶の分類と記憶障害
- すぐ忘れる記憶と忘れない記憶
- 記憶の障害
4 記憶の発達
- まずは短期記憶が発達
- 記憶内容を象徴として使えるようにも
5 知能や記憶力は遺伝子に左右されるの?
- 双子を対象にした研究
- 動物では分子レベルの研究も
6 判断に迷うほど、賢くなる?
- 迷うほど賢くなる?
- 迷ったときの前頭葉の活動
- 教育や産業にも応用
- COLUMN「迷いの中枢」を突き止めた田中博士の実験
- おわりに
- 索引