わかる基礎入門シリーズゼロからわかる構造化学入門
2016年9月7日紙版発売
2016年9月7日電子版発売
齋藤勝裕 著
A5判/224ページ
定価2,398円(本体2,180円+税10%)
ISBN 978-4-7741-8391-6
書籍の概要
この本の概要
身の回りの物質はいろいろな分子からできています。その分子は,原子が結合してできた構造体です。例えばメタン分子(CH4)は平面形ではなく,正四面体形の立体です。なぜこんな立体的な原子同士の結合ができるのでしょうか? この結合のしくみが分かると,物質の性質や特徴が理解できます。さらに,小さい分子(部品)からまるでプラモデルを組み立てて新しい物質を創る時のような面白さを味わえます。作った分子の構造は,名探偵のように推理しますが,それはワクワクするほど楽しいものです。これが化学の醍醐味です。本書は分子の結合や混成軌道のしくみ,構造の推理法などをとてもやさしく解説しています。
こんな方におすすめ
- 化学を基本からきちんと理解したい人
- 物質(分子)の性質や特徴に興味ある人
- 物質の構造や設計に興味ある人
目次
第1章 すべては原子から始まる
1-1 原子は何からできているのか
- A 原子の構造
- B 原子番号・質量数・原子量
1-2 電子はどこにいるのか
- A 電子殻の種類と定員
- B 電子殻はエネルギーをもつ
- 電子殻のエネルギーの表し方
- 電子の居場所と安定・不安定
1-3 電子殻は軌道に分かれる
- A 軌道の種類
- B 軌道のエネルギーと大きさ
1-4 軌道はどんな形をしているか
1-5 電子はどのようにして軌道に入るのか
- A 電子のスピン
- B 電子配置の約束
- C 実際の電子配置をみてみる
- 水素からホウ素(1H~5B)の電子配置を見る
- 炭素6Cの電子はどの軌道に入るか
- 窒素からネオン(7N~10Ne)の電子配置を見る
- D 最外殻の電子(価電子と非共有電子対)
- E 電気陰性度
第2章 分子をつくる結合と混成軌道
2-1 結合の種類と分子
- A 分子と化合物
- B 結合の種類
- 原子間の結合
- 分子間力
2-2 イオンとイオン結合
- A イオン
- B イオン結合
2-3 共有結合はどのようにできるか
- A 最も簡単な水素分子の形成
- B 結合電子は接着剤
- C 共有結合の条件と本数
2-4 共有結合の基本はσ結合とπ結合
- A結合軸上にできるσ(シグマ)結合
- B 軸の上下にできるπ結合
- C σ結合とπ結合の違い
- 結合回転ができるか
- 結合強度の違い
2-5 混成軌道がわかれば分子の形がわかる
- A 混成軌道とは
- 混成軌道と合挽きハンバーグ
- 混成軌道の性質
- B 炭素の混成軌道は3種類
- (1)sp3混成軌道(単結合)
- (2)sp2混成軌道(二重結合)
- (3)sp混成軌道(三重結合)
第3章 基礎的な分子構造を見てみよう
3-1 有機分子の基本中の基本:メタンの結合
- A メタンの結合状態
- B メタンの構造の表現法
3-2 単結合を理解する:エタンの結合
- A メチルラジカルとは
- B エタンの生成
3-3 エタンの結合回転
- A 立体表現1:木挽き台モデル
- B 立体表現2:ニューマン投影式
- C 回転異性体とは
3-4 二重結合を理解する:エチレンの結合
- A σ骨格とは
- B π結合と二重結合
- C 二重結合のシス体とトランス体
- 3-5 三重結合を理解する:アセチレンの結合
- A アセチレンのπ電子雲
- B 結合の多重度と混成軌道
第4章 重要な分子の構造を見てみよう
4-1 アンモニアNH3の結合
- A 窒素の混成状態
- B アンモニアの形
4-2 水H2Oの結合
- A 水の形
- B 水素結合
4-3 アンモニウムイオンとオキソニウムイオンの結合
- A 水素陽イオンH+ の構造
- B アンモニウムイオンNH4+の結合
- C 配位結合とは
- D オキソニウムイオンH3O+の結合
4-4 共役二重結合(1):ブタジエンの結合
- A ブタジエンの構造式
- B ブタジエンのπ結合
- C ブタジエンの二つの構造式
4-5 共役二重結合(2):非局在π結合とベンゼン
- A 非局在π結合
- B ベンゼンの結合
- C 非局在π結合の強度
- D 単結合と二重結合の中間
第5章 異性体が分子の種類を多くしている
5-1 分子式と構造式は何が違うのか?
- A 構造式
- B 構造式の表現
5-2 炭化水素の異性体
- A 分子式C4H10の異性体はいくつあるか
- B 分子式C5H12の異性体はいくつあるか
5-3 官能基が異なる異性体
- A 置換基とは
- アルキル基
- 官能基
- B 官能基異性
5-4 立体異性体
- A 配座異性とは
- B シス・トランス異性
5-5 光学異性体
- A 不斉炭素とは
- B 光学異性体の合成と分離
- C 光学活性(旋光性)
- D 生理的性質
- E 光学異性体の例
第6章 基礎的な分子構造の決め方
6-1 分子構造の決め方の手順
6-2 分子量を決めるには
- A 分子量の化学的決定
- 凝固点降下
- 沸点上昇
6-3 分子式の決定
- A サンプルの燃焼
- B 原子数比の決定
- (1)原子の重量を求める
- (2)原子数比を求める
6-4 簡単な分子の構造を決めよう
- A 2個の原子が作る分子の形
- B 3個の原子が作る分子の形
- C 4個の原子がつくる分子の形
6-5 物性による構造の決め方
- A 分子式C2H6Oの分子の形
- B 分子式CH2O2の形
6-6 定性反応による構造の決め方
- A 分子式C2H4Oの分子の形
- B 分子式C2H4O2の分子の形
第7章 スペクトルと分子構造
7-1 スペクトルとは
- A スペクトルの定義
- B スペクトルの原理
7-2 質量スペクトル:分子量が分かる
- A 質量スペクトルの原理
- イオン化
- 質量スペクトルの測定
- B 質量スペクトルの実際
- C 質量スペクトルからわかること
- 開裂パターン
- 高分解能質量スペクトル(High Resolution MS)
7-3 分子と光の相互作用
- A 光は電磁波
- 光のエネルギー
- 光の種類
- B 分子軌道とエネルギー
- 分子軌道
- 分子軌道エネルギー
- C 電子配置
7-4 UVスペクトル
- A 光吸収
- B UVスペクトルと分子構造
- C UVスペクトルの実際
7-5 IRスペクトル
- A 分子の振動回転エネルギー
- B IRスペクトルの実際
- C 特性吸収
第8章 NMRスペクトルと分子構造
8-1 NMRスペクトルの実際
- A NMRスペクトルのチャート
- B 結合定数とは
- C 積分強度とは
- D NMRスペクトルの測定
- 試料
- 測定器
8-2 分子を磁場に入れるとどうなるか?
- (NMRスペクトルのしくみ)
- A 原子核はスピンしている
- B 共鳴吸収
8-3 化学シフトは電子密度を明らかにする
- A 電子密度と実効磁場強度
- B 化学シフトとは
8-4 結合定数は立体化学を明らかにする
- A シグナルの分裂
- B 結合定数とは
8-5 13CNMRスペクトル:炭素原子を見る
- A 13C NMRの測定
- B 13C NMRの化学シフト
- C 積分強度
第9章 スペクトルで分子構造を決定しよう
9-1 スペクトルによる構造決定の方針
9-2 ハイマス,UV,IRスペクトルによる簡単な構造決定
- [例1] 高分解能質量スペクトルとUV
- [例2] 高分解能質量スペクトルとIR,NMR
9-3 構造式の知見による予備整理
- [例3] 異性体の可能性が多い分子構造の決定
- A 可能な構造式をリストアップする
- B 各構造の特徴を見つける
9-4 スペクトルによる知見
- A UVスペクトルによる知見
- B IRスペクトルによる知見
9-5 NMR スペクトルによる決定
- カルボニル体f,gの識別
- エーテル体j,lの識別
第10章 基礎的な分子の構造を決定しよう
10-1 構造決定の実際的手順
- A 可能性の積算
- [問題]
- B スペクトルの解析
- (1)分子式を見るポイント
- (2)IRスペクトルを見るポイント
- (3)NMRスペクトルを見るポイント
- (4)13CNMRスペクトルを見るポイント
- C 構造決定
10-2 水素同士の関係の決定
- A 複数個のプロトンとのカップリング
- B 結合定数
- ジェミナールカップリング
- アリルカップリング
- フェニル基のカップリング
10-3 立体異性体の識別
- A シス・トランスの識別
- B カゴ状化合物の立体識別
- 立体異性体
- 二面角と結合定数
10-4 光学異性体の識別
- A 偏光スペクトル
- B 偏光スペクトルの実際
10-5 単結晶X線解析
- A スペクトルと分子構造
- B 単結晶X線解析:分子の肖像写真
- C 単結晶X線解析の弱点
- 結晶でなければならない
- 結合の存否は分からない
章末問題の解答と解説
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