春の星座3

3うしかい座

牛飼座

学 名
Bootes(略号 Boo)
英語名
The Herdsman
設 置
古代ギリシア
面 積
907平方度

天体観測の見どころ

隣接する、おおぐま座、りょうけん座、かみのけ座、おとめ座には多数の星雲星団が存在するのに、うしかい座にはメシエ天体をはじめ、小望遠鏡の対象となるような星雲星団は見当たりません。その一方で、重星は豊富な観察対象があります。

1重星の観察

κ星

  • 位置(分点2000.0)赤経14h13.5m,赤緯+51°47’
  • 主星4.5等,伴星6.6等,位置角236°,離角13.8”(2021年),スペクトルA7V+F1V

明るく観察しやすい魅力的なペア。主星は明るい黄緑で伴星は小さい赤茶色。すぐ南東にι星があり、低倍率で両星が同一視野で見られます。

ι星

  • 位置(分点2000.0)赤経14h16.2m,赤緯+51°22’
  • 主星4.8等,伴星7.4等,位置角33°,離角39.0”(2020年),スペクトルA7IV+K0V

明るく間隔も広く楽に観察できます。ただちに重星と分かります。真珠のような薄い黄色と乳白色のペアです。

μ星

  • 位置(分点2000.0)赤経15h24.5m,赤緯+37°23’
  • 主星4.3等,伴星7.1等,位置角171°,離角109.2”(2020年),スペクトルF2IV+G0V

大きく間隔の開いた低倍率でも楽に観察できる対象です。主星は薄い黄色で伴星は薄い青色に見えます。伴星はさらに4.3等と7.6等の257年周期で公転する連星です。現在は1.8”の離角ですが公転周期の中では最も離れています。とはいっても離角が小さすぎますし光度差もありますから、小望遠鏡の対象にはなりません。

Σ1825(=HIP 69751)

  • 位置(分点2000.0)赤経14h16.5m,赤緯+20°07’
  • 主星6.5等,伴星8.4等,位置角154°,離角4.2”(2019年),スペクトルF6V

アルクトゥルスの1°北の容易に探せる位置にあります。琥珀のような黄色の主星に、接触するようにシルバーの伴星があります。

Σ1835(=HIP 70327)

  • 位置(分点2000.0)赤経14h23.4m,赤緯+08°27’
  • 主星5.0等,伴星6.8等,位置角197°,離角6.4”(2020年),スペクトルA0V+F2V

アルクトウルスの南方約11°のおとめ座との境界に近い位置にあります。明るさ,近接ぐあい,コントラストともに立派なペアです。金色がかった白色の主星と青白色の伴星が美しく観察できます。

Σ1850(=HIP 70786,HIP 70781)

  • 位置(分点2000.0)赤経14h28.6m,赤緯+28°17’
  • 主星7.1等,伴星7.6等,位置角263°,離角25.2”(2018年),スペクトルA1V+A1V

ほぼ等光度で広く間隔のあいた際立った白色のペア。個性的で印象に残る観察対象です。

π星

  • 位置(分点2000.0)赤経14h40.7m,赤緯+16°25’
  • 主星4.9等,伴星5.8等,位置角114°,離角5.4”(2020年),スペクトルB9

主星、伴星とも明るく観察しやすい。低倍率でくっつくように見えます。両星とも白色のペアです。

ε星エザル/プルケリマ

  • 位置(分点2000.0)赤経14h45.0m,赤緯+27°04’
  • 主星2.6等,伴星4.8等,位置角347°,離角2.9”(2020年),スペクトルK0II-III

主星は橙色で、非常に近接して深青の伴星があり素晴らしい重星です。天文学者ストルーベ(Friedrich Georg Wilhelm von Struve 1793-1864 ロシア)が、この重星の美しさを称賛したことから「プルケリマ(最も美しいもの)」の名称でも知られています。しかし、気流の条件がよくないと中口径の望遠鏡でもこれを分離することの難しい観察対象です。気流の良い条件の時に、倍率を上げて観察しましょう。

Σ1884(=HIP72412)

  • 位置(分点2000.0)赤経14h48.4m,赤緯+24°22’
  • 主星6.6等,伴星7.5等,位置角55°,離角2.3”(2020年),スペクトルF8IV+V

近接した重星で、高倍率にしてみると両星がつながって一見楕円形に見えます。ほどよい明るさで、両星の輝度差が少なく、離角2.2”の数値よりは見やすい観察対象です。

39番星

  • 位置(分点2000.0)赤経14h49.7m,赤緯+48°43’
  • 主星6.3等,伴星6.7等,位置角46°,離角2.6”(2020年),スペクトルF6V+F5V

ほぼ等光度の2星が近接したみごとなペア。6cm口径でも観察できます。両星とも白色の重星です。

ξ星

  • 位置(分点2000.0)赤経14h51.4m,赤緯+19°06’
  • 主星4.8等,伴星7.0等,位置角296°,離角5.0”(2021年),スペクトルG8V+K5V
うしかい座ξ星の軌道

明るい黄色の主星と赤紫色の伴星が美しい実視連星です。観測から連星系の軌道が求められており公転周期151.6年,現在は年々離角が小さくなってきています。2065年には離角2.1”まで近接し、小口径での観察は難しくなりますから、今のうちに観察しておきたい対象です。

2しぶんぎ座流星群

  • 活動期間:12月28日~1月12日。極大1月3~4日頃(太陽黄経283.16°)
  • 極大ZHR 120。対地速度41km/s。

りゅう座に近い うしかい座に放射点を持つ流星群ですが、放射点の位置には今では廃止された へきめんしぶんぎ座があった名残から現在でも「しぶんぎ座流星群」が正式な名称となっています。しぶんぎ座流星群は、活発な活動がみられることからペルセウス座流星群(8月中旬)、ふたご座流星群(12月中旬)とともに3大流星群のひとつに数えられています。毎年の活動時期は1月3~4日頃で、放射点の高くなる明け方に多くの流星が見られます。月明かりやピーク時刻の条件の良い年には1時間に100個近い流星を期待することができます。

ただしこの流星群の極大のピークは鋭く、活発な出現は長続きしません。極大から半日ずれると出現数は4分の1ほどに激減します。
この流星群の母天体は、2003年に発見された小惑星2003EH1が有力視されています。元は彗星だったものが、揮発成分が枯渇してしまった小惑星と考えられています。

1月4日4時頃(東京)でみる しぶんぎ座流星群のイメージ
小惑星2003EH1の軌道。地球は1月3~4日頃にこの小惑星の軌道に近づき、この頃にしぶんぎ座流星群が活動します。