春の星座4

4りょうけん座

猟犬座

学 名
Canes Venatici(略号 CVn)
英語名
The Hunting Dogs
設 置
ヨハネス・ヘヴェリウス
面 積
465平方度

天体観測の見どころ

1星雲星団の観察

明るい星の少ないりょうけん座ですが、メシエ番号のついた星雲星団は5つもある観察対象の多い星域です。小口径の望遠鏡向きの多数の銀河があります。子持ち銀河(M51)はユニークな天体でよく知られており、球状星団M3も必見の観察対象です。

M3球状星団(=NGC5272)

  • 位置(分点2000.0)赤経13h42.2m,赤緯+28°23’ 視直径16.2’,等級5.9,集中度(高1-低12)6

球状星団の少ない春の星空にあって、このM3は突出して大型の球状星団です。およそ50万個もの星の大集団です。小望遠鏡はもちろん、ファインダーや双眼鏡でも芯のある星雲状の天体として見つけられます。月明かりの下でも耐えて見やすく、また赤緯が高いので観察できる期間が長く、春の観望会などでは重宝します。「うしかい座」の境界に近い「りょうけん座」にありますが、探すときには「うしかい座」からの方が星の並びを追いかけやすいでしょう。中高倍率をかけると、周辺部が星に分離してきます。口径20cmの望遠鏡では、中高倍率でほぼ中心部まで星に分解してきます。球状星団としては密集度合いは標準的で、代表的な球状星団のひとつです。春の球状星団の共通した特色で、この季節には背景の微光星が少ないために、望遠鏡で観察すると暗闇の視野の中に星団の存在がポンと浮かび上がったような感覚で観察することができます。

発見者のメシエはこれを、星のない中心部が輝いた星雲としましたが、ハーシェルが1783年に20フィート望遠鏡で観測した際に「見事な目標で径5’~6’,星数1000ほど」としています。ベイリーは星団中に赤い星があるとしています。
春の星空の球状星団では、ケンタウルス座のオメガ星団(NGC5139)に次いで大型で、春の星雲星団全体としても、かに座のプレセペ星団(M44)とともに、明るく見やすい素晴らし観察対象です。

M51銀河(=NGC5194-5)愛称:子持ち銀河,渦巻銀河(Whirlpool galaxy)

(NGC5194)
位置(分点2000.0)赤経13h29.9m,赤緯+47°12’ 視直径8.2’x 6.9’,等級8.4,型SA
(NGC5195)
位置(分点2000.0)赤経13h30.0m,赤緯+47°16’ 視直径6.4’x 4.6’,等級9.6,型I0
ロス卿(William Parsons,3rd Earl of Rosse 1800-1867 英)が、口径1.8mの巨大反射望遠鏡でスケッチしたM51銀河。
ジョン・ハーシェル(John Frederick William Herschel 1792-1871 英)の、口径46cm望遠鏡によるM51のスケッチ。

渦巻銀河と伴銀河の並んだ天体で「子持ち銀河」の愛称でとても人気があり、英語圏では「渦巻銀河(Whirlpool galaxy)」とよび、これでM51銀河に対する固有の愛称となっています。本体となる渦巻銀河はNGC5194,伴銀河はNGC5195のIDがつけられています。1773年メシエの発見で「星はなく非常にかすか」と記しています。この時メシエは伴銀河を見落としていたようですが、伴銀河は1781年にメシャンによって発見されました。メシエカタログには「二重の星雲で中心部が明るい。両者の間隔は4’35”。両者は触れ合っていて、片方が暗い。」と記しています。ジョン・ハーシェルは、口径46cm反射望遠鏡で観測し「星雲状のリングで囲まれた明るく丸い中心核のある星雲。渦巻は確かめられない。」と記しています。

りょうけん座のエリアにありますが、星を追って導入するには北斗七星の柄の先端η星から探すのが近いです。小望遠鏡でも2つの明るい星雲が並んでいることが分かります。この一方が親銀河の中心核で、口径10cmで腕が渦状に巻いている様子が分かります。

M63銀河(=NGC5055)

  • 位置(分点2000.0)赤経13h15.8m,赤緯+42°02’ 視直径13.5’x 8.3’,等級8.6,型SA

楕円状に淡く大きく広がって、とても小さな中心核が明るく見えます。中心核はファインダーでも恒星状に見ることができます。広がりは淡いので暗夜が必要ですが、目が慣れてくるとM51(子持ち銀河)に匹敵する大きさがあり、なかなか壮観な観察対象です。
眼視的には困難ですが、ひまわりの花のような渦巻状で、天体写真の対象としても人気のある銀河です。

M94銀河(=NGC4736)

  • 位置(分点2000.0)赤経12h50.9m,赤緯+41°07’ 視直径13.0’x 11.0’,等級8.2,型SA

データの数字上ではM63よりも大きな銀河ですが、広い円盤部は眼視的にはほとんど見ることができず、中心部の強い輝きがまるで球状星団のように見えます。この中心部だけでは小型の銀河に見えるのですが、写真ではその周囲に広く均質なディスクを伴っている渦巻銀河であることが分かります。

M106銀河(=NGC4258)

  • 位置(分点2000.0)赤経12h19.0m,赤緯+47°18’ 視直径20.0’x 8.4’,等級8.4,型SAB

りょうけん座の4つのメシエ番号のある銀河の中で、最も明瞭で大型の観察対象です。ファインダーで認められます。低倍率で明るい中心部がまず目に留まり、よく観察すると南北に長い楕円状のディスクが見えます。写真では棒渦巻の構造が見えています。

1781年メシャンが発見し「おおぐま座に近いりょうけん座3番星の約1°南」と記しましたが、この時にはなぜかメシエカタログに追加されていません。1788年にハーシェルにより再発見され「中心核が輝いてかなり大きい」と記しています。

NGC4449銀河

  • 位置(分点2000.0)赤経12h28.2m,赤緯+44°06’ 視直径5.5’x 4.1’,等級9.6,型IB

小型の不規則銀河で、小口径の望遠鏡では難物でしょう。中口径以上で、葉巻のような形状に見え、濃淡の少ない短い棒のような形に認められます。この銀河は、M94、M106等と同じ銀河団の一員です。

NGC4631銀河 くじら銀河(Whale Galaxy)

  • 位置(分点2000.0)赤経12h42.1m,赤緯+32°32’ 視直径15.5’x 3.3’,等級9.2,型SB

りょうけん座には多くの銀河がありますが、このNGC4631銀河はM51と同様に個性的で見て楽しい観察対象です。小望遠鏡でも細長い姿を認められます。中口径以上では視野に大きく長く、刷毛ですっと線を引いたように見え両端までほぼ均一な明るさで大型の銀河です。北にくっつくように小型の伴銀河NGC4627があります。NGC4631は、海外では「くじら銀河(Whale Galaxy)」の愛称で紹介されています。すぐ南東33’には、ずっと小ぶりですが、これも細長いNGC4656銀河があります。

2重星の観察

α星コル・カロリ

  • 位置(分点2000.0)赤経12h56.0m,赤緯+38°19’
  • 主星2.9等,伴星5.5等,位置角230°,離角19.3”(2020年),スペクトルA0

明るく楽に観察できます。またその色と明るさのコントラストも素晴らしい、有名な美しい重星です。明るく美しいパールの主星と青緑色の伴星の対比は、観察していてうっとりさせられます。このペアは、1777年の観測データと比較すると、位置角、離角はわずかに変化していますが、お互いに重力の関係のない見かけの二重星です。

2番星

  • 位置(分点2000.0)赤経12h16.1m,赤緯+40°40’
  • 主星5.9等,伴星8.7等,位置角260°,離角11.6”(2017年),スペクトルM1III+F7V

赤茶色の明るい主星と小さな銀色の伴星の愛らしいペアです。主星の美しさが印象的です。主星のかたわらにある伴星はほんのりとした小さな姿で見ることができ、光度差も楽しめます。りょうけん座ではコル・カロリに目が向きますが、この星もとても美しいお勧めの観察対象です。

S654星(=HIP 67250)

  • 位置(分点2000.0)赤経13h47.0m,赤緯+38°33’
  • 主星5.6等,伴星8.9等,位置角239°,離角71.8”(2013年),スペクトルK0III+F8V

間隔の広いペアで小望遠鏡で楽に見ることができます。薄桃色の主星が印象的です。バイエル符号、フラムスティード番号のない恒星ですので、探すのに手がかかるかもしれません。すぐ西側8’にある6等星と双眼鏡的な重星となっていますので目印になるでしょう。