春の星座7

7しし座

獅子座

学 名
Leo(略号 Leo)
英語名
The Lion
設 置
古代ギリシア
面 積
947平方度

天体観測の見どころ

1星雲星団の観察

しし座の天体観測の対象には、系外銀河M65、M66がまずお勧めです。ただし、系外銀河は月明かりがあると極端に観察しづらくなります。しし座には二重星も対象が多く、これらは月夜でも楽しめます。

M65、M66、NGC3628銀河

M65(=NGC3623)
位置(分点2000.0)赤経11h18.9m,赤緯+13°05’ 視直径8.7’x 2.2’,等級9.3,型SAB
M66(=NGC3627)
位置(分点2000.0)赤経11h20.2m,赤緯+12°59’ 視直径8.2’x 3.9’,等級8.9,型SAB
NGC3628
位置(分点2000.0)赤経11h20.3m,赤緯+13°36’ 視直径14.0’x 4.0’,等級9.5,型Sb
左:M66、右:M65、上:NGC3628
ここは、比較的明るい3つの銀河が集まる しし座の名所

しし座の後ろ足付近にある系外銀河群です。M65、M66はともに銀河としては比較的大型です。M65mM66のすぐ北にはスーッと長く伸びたNGC3628銀河があり、こちらはやや暗いため透明度の良い夜に観察しましょう。これほど近くにあるのですが、メシエはNGC3628を見逃しています。3銀河は30倍くらいの低倍率で一度に視野に入りとても印象的です。3銀河の中ではM66が最も明るく目立ちます。M65、M66は中口径以上で観察すると渦巻構造も見えてきます。天体写真の被写体としても人気が高く、NGC3628には暗黒帯のあることが分かります。

M95、M96、M105銀河

M95(=NGC3351)
位置(分点2000.0)赤経10h44.0m,赤緯+11°42’ 視直径7.8’x 4.6’,等級9.7,型SB
M96(=NGC3368)
位置(分点2000.0)赤経10h46.8m,赤緯+11°49’ 視直径6.9’x 4.6’,等級9.2,型SAB
M105(=NGC3379)
位置(分点2000.0)赤経10h47.8m,赤緯+12°35’ 視直径3.9’x 3.9’,等級9.3,型E1
M95-M96-M105が集団を作っています。

しし座のおなかの位置に集団を作っている系外銀河群です。数字で示される等級ほどは見やすくなく、口径10cmでは見逃してしまいそうです。M95は恒星状の核が明るく、M96は楕円形状をしています。M105は核の部分がほんのりと見えます。M105のすぐ東にはNGC3384があり、口径20cmくらいから存在が分かるでしょう。3銀河は低倍率で同じ視野に入りますが、M65-M66-NGC3628のグループより暗く、また銀河の構造も分かりません。

NGC2903銀河

  • 位置(分点2000.0)赤経09h32.2m,赤緯+21°30’ 視直径12.0’x 5.6’,等級9.0,型SAB

メシエ天体には含まれていませんが、メシエ天体とそん色のない大きく明るく観察しやすい銀河です。中心核が明るくよくみえます。

NGC3521銀河

  • 位置(分点2000.0)赤経11h05.8m,赤緯-00°02’ 視直径12.5’x 6.5’,等級9.0,型SA

しし座の後ろ足の先のちょっと目立たない位置にあります。メシエ番号はありませんし、それほど知名度のある天体ではありませんが、なかなか明るく観察しやすい銀河です。紡錘状で中心が恒星状に強く光ります。写真では渦巻構造が見えてきます。

2重星の観察

しし座はγ星(アルジェバ)をはじめ、美しい重星が数多く存在しています。

6番星

  • 位置(分点2000.0)赤経09h32.0m,赤緯+09°43’
  • 主星5.2等,伴星9.3等,位置角77°,離角37.1”(2018年),スペクトルK3III

オレンジの明るい主星に消え入りそうに小さい薄紫の伴星が愛らしいペアです。小口径から楽しめます。

γ星アルジェバ

  • 位置(分点2000.0)赤経10h20.0m,赤緯+19°50’
  • 主星2.4等,伴星3.6等,位置角127°,離角4.7”(2020年),スペクトルK0III

全天でも屈指の素晴らしい重星です。少し明るさの異なる金色の主星と伴星が美しく寄り添います。この重星は、周期510.3年の連星系で、現在は最も離角の大きな時期に当たっています。2100年以降は急速に離角が小さくなり、2180年には0.2”まで接近しますので、こうなると大望遠鏡でも分離してみることは困難です。

49番星

  • 位置(分点2000.0)赤経10h35.0m,赤緯+08°39’
  • 主星5.8等,伴星7.9等,位置角157°,離角2.0”(2019年),スペクトルA2V

明るい黄色の主星と小さな青白色の伴星のペアで、素晴らしいながめです。まるで太陽と惑星のように見えます。離角が小さく光度差があるために小口径では難しい対象です。

54番星

  • 位置(分点2000.0)赤経10h55.6m,赤緯+24°45’
  • 主星4.5等,伴星6.3等,位置角112°,離角6.6”(2020年),スペクトルA1V+A2V

黄色の明るい主星とサファイアを思わせる青い伴星の美しい重星です。重星の豊富なしし座の中でも明るく観察しやすいお勧めのペアです。

81番星

  • 位置(分点2000.0)赤経11h25.6m,赤緯+16°27’
  • 主星5.6等,伴星10.8等,位置角6°,離角55.4”(2018年),スペクトルF2V

明るい黄色の主星ととても小さな赤い伴星のコントラストが愛らしいペアです。離角が空いて、小口径の低倍率で楽しめます。

83番星

  • 位置(分点2000.0)赤経11h26.8m,赤緯+03°01’
  • 主星6.6等,伴星7.5等,位置角146°,離角28.6”(2019年),スペクトルG7V

τ星

  • 位置(分点2000.0)赤経11h27.9m,赤緯+02°51’
  • 主星5.1等,伴星7.5等,位置角181°,離角89.2”(2019年),スペクトルG8II-III

しし座τ星と83番星は離角20’をへだてて東西に並んでいますが、それぞれが重星で、広い間隔のダブルダブルスターとなっています。83番星はオレンジ色のペアで、τ星はレモンイエローの主星の南にグレーの小さな伴星が間隔を広く開けています。τ星のさらに南東には7等星があって、視野をにぎやかにしています。

90番星

  • 位置(分点2000.0)赤経11h34.7m,赤緯+16°48’
  • 主星A 6.3等,伴星B 7.3等,位置角209°,離角3.1”(2018年),スペクトルB4V+B9V
  • 主星A 6.3等,伴星C 9.8等,位置角235°,離角63.4”(2018年),スペクトルF5

この星は近接した伴星と離角の大きな伴星による三重星です。白色の主星にくっつくように紫の伴星があります。さらにと間隔を空けて小さな赤い伴星が見られます。最初に視野に映るのは間隔のあいたペアです。主星は高倍率にして注意深く観察しましょう。

93番星

  • 位置(分点2000.0)赤経11h48.0m,赤緯+20°13’
  • 主星4.6等,伴星9.0等,位置角356°,離角75.5”(2020年),スペクトルA7

明るい黄色の主星と間隔をあけてとても小さな白い伴星があります。このコントラストが楽しめるペアです。

ι星

  • 位置(分点2000.0) 赤経11h23.9m, 赤緯 +10°32’
  • 主星4.1等,伴星6.7等,位置角92°,離角2.3”(2021年),スペクトル F4IV

186年周期の実視連星。現在は最も大きく離角の大きな時期だが、それでも2.6等級差の伴星が2.2”で近接している対象は、小口径ではかなりの難物だ。これから数十年の観察好期に口径15cmクラスの望遠鏡で試してみたい。深い黄色の主星と白色の伴星のペア。

3しし座流星群

  • 活動期間:11月10日~11月29日。極大11月18日頃(太陽黄経235°)。
  • 極大ZHR 15。対地速度71km/s。

しし座に放射点も持つしし座流星群は、毎年11月18日頃、放射点が上がってくる夜半から明け方に、大変高速で印象的な流星が見られる流星群です。放射点は、獅子のたてがみの位置にあるγ星付近にあります。母天体は55P/テンペル・タットル彗星(公転周期33年)で、2001年には日本でも1時間当たり3000~4000個もの大出現が見られました。

しし座流星群は、流星群の研究において最も重要な役割を果たしてきた流星群です。確実な最古の出現記録は西暦902年とされており、以降およそ33年ごとに出現の記録が残っています。1799年11月12日早朝には、ドイツの地理学者フンボルトが大出現に遭遇し「何千もの流星や火球が北から南へ流れ、一瞬といえども月を2個並べられる隙間さえなかった。」と記しています。1833年米国で見られた大出現では1時間当たり5万個もの流星が見られと伝えられ、この様子をフロリダからニューオリンズに向かう途中で見た神学者ジョセフ・ハーベイ・ワゴナーが版画に残しました。この年の出現で初めて放射点の存在が明らかになりました。目撃の記録によると、「この世の終わりだ」「世界が火事だ」と叫んだというほど壮観だったそうです。また、放射点の方向に吸い込まれていくような錯覚を受けたといいます。(出典 29 他)

1833に起こったしし座流星群の嵐を描写した版画絵。

1866年の大出現では流星群と55P/テンペル・タットル彗星(公転周期33年)の関係性が明らかにされました。1999年と2001年の大出現においては、デイビッド・アッシャー(David John Asher,1966年– 英)がダスト・トレイル理論を発表し、大出現のピーク時刻を分単位の正確さで的中させることに成功しました。この理論は現在では流星群の標準的な理論となっています。2001年11月19日の大出現は日本付近が全地球的にも好条件で、好天にも恵まれて社会現象にもなりました。夜中に高速道路が渋滞し、深夜の公開天文台に多くの観察者が押し寄せました。この夜の流星嵐は、有史以来日本で最も流星の流れた記録となりました。
次回しし座流星群の母天体55P/テンペル・タットル彗星の回帰する2031年に大出現が期待されます。

テンペル・タットル彗星の軌道。地球は11月18日頃にテンペル・タットル彗星の軌道に近づき、この頃にしし座流星群が活動します。

2001年11月19日 世界的な大出現を見せた しし座流星群

しし座は東の空にあるので、東の空から広がるように流星が流れます。
放射点付近のクローズアップ
全天カメラでとらえたしし座流星群(撮影:百武裕司)