春の星座10

10かみのけ座

髪座

学 名
Coma Berenices(略号 Com)
英語名
Berenice’s Hair
設 置
カスパル・ヴォペル
面 積
386平方度

天体観測の見どころ

1星雲星団の観察

かみのけ座の中心部を形作る微光星がΛ形に集まった集団は、Mel.111という全天でも最大級の散開星団です。まるでおうし座のヒヤデス星団を春の夜空に持ってきたような印象があります。また、おとめ座との境界を中心に、かみのけ座にも非常にたくさんの系外銀河が存在しています。また、この星域には珍しい球状星団(M53)も見ごたえのある観察対象です。

Mel.111散開星団(Coma Berenices Cluster)

  • 位置(分点2000.0)赤経12h22.5m,赤緯+25°51’ 視直径275’,等級2.7,星数約40
Mel.111は、かみのけ座の本体となる大きな散開星団。

かみのけ座の本体は、肉眼でブドウの房のように多数の星々が集団を作っているのが分かります。星の数はおよそ40星くらいで、範囲が広いために、星団の範囲も見た目にははっきりわかりません。大きすぎて、7倍50mm双眼鏡でも、視野の中にやっと収まるくらいですから肉眼から双眼鏡で観察することがお勧めとなります。

今日、メロッテカタログ(Melotte catalogue)と呼ばれている星団を集めた星表は、イギリスの天文学フィリベール・ジャック・メロッテ(Philibert Jacques Melotte 1880-1961)が編纂しました。このカタログの111番に記されているために、Mel.111と広く呼ばれています。

M53球状星団(=NGC5024)

  • 位置(分点2000.0)赤経13h12.9m,赤緯+18°10’ 視直径12.6’,等級7.5,集中度(高1-低12)5

春の球状星団としては、なかなか大型の球状星団で、この周辺の銀河を見続けた目にはとびきり明るい天体に感じます。密集していて星雲状にみえ、典型的な美しい球状星団です。双眼鏡やファインダーでも存在が分かります。

M64銀河(=NGC4826)黒目銀河(Black eye galaxy)

  • 位置(分点2000.0)赤経12h56.7m,赤緯+21°41’ 視直径9.2’x 4.6’,等級8.5,型SA

かみのけ座おとめ座銀河団からは離れた位置にあります。楕円形で明るい渦巻銀河です。淡い系外星雲ばかりのかみのけ座の中では、もっとも明るく観察しやすい天体です。写真では中央に暗黒帯があり、これが「黒目」の由来となっています。しかし、この暗黒帯を見るのは意外と難しく、口径20cm以上の望遠鏡が必要でしょう。口径20cmクラスでは、暗黒帯を挟んで銀河の中心部2カ所が明るく見えます。

M85銀河(=NGC4382)

  • 位置(分点2000.0)赤経12h25.4m,赤緯+18°11’ 視直径7.5’x 5.7’,等級9.1,型SA

楕円形状で中心が明るい銀河です。銀河内に恒星が乗っかっているのが印象的にみえます。すぐ近くにNGC4394が並んでいますが、これは口径20cm以上の望遠鏡でないと見えないでしょう。

M88-M91銀河

M88(=NGC4501)
位置(分点2000.0)赤経12h32.0m,赤緯+14°25’ 視直径6.1’x 2.8’,等級9.6,型SA
M91(=NGC4548)
位置(分点2000.0)赤経12h35.4m,赤緯+14°30’ 視直径5.0’x 4.1’,等級10.2,型SB

M88(右)は、楕円状で比較的明るい銀河です。中心核はわりあいに明るく目立ちます。この付近の銀河の中では大きい方になります。すぐ南に重星があって印象的に観察できます。
M91はとても淡く円形をしています。まるで微光星が暗闇ににじんでいるかのようです。

M91(左)は、1781年にメシエによって発見されながら、その位置が永らく不明だった天体です。メシエは「おとめ座にある星のない星雲。M90の先にありM90よりは淡い。」と記しました。M91が行方不明となった原因は、メシエはM58を基準にM91の位置を測定したにもかかわらず、「M89を基準」と誤って記したためです。1969年になってようやくその誤りが指摘され、現在ではNGC4548=M91とする説が受け入れられています。

M98銀河(=NGC4192)

  • 位置(分点2000.0)赤経12h13.8m,赤緯+14°54’ 視直径9.1’x 2.1’,等級10.1,型SAB

淡く細長い銀河です。中心部もあまり明るくありません。メシエ番号はついていますが、小望遠鏡向きではなく、口径10cmクラスでは空の状態がよくないと見つけられないでしょう。

M99銀河(=NGC4254)

  • 位置(分点2000.0)赤経12h18.8m,赤緯+14°25’ 視直径4.6’x 4.3’,等級9.9,型SA

写真では渦巻状の銀河であることが分かりますが、眼視では分かりません。中心核がほんのり明るく、全体は大きな円盤状です。

M100銀河(=NGC4321)

  • 位置(分点2000.0)赤経12h22.9m,赤緯+15°49’ 視直径6.2’x 5.3’,等級9.3,型SAB
11_マルカリアンの鎖.jpg(取り寄せ中)

典型的な渦巻銀河でかみのけ座の系外銀河の中では観察の対象、写真の対象として人気があります。やはり淡いため、口径10cm程度がから観察の対象となりますが、渦巻構造が分かるのは、口径20cm以上ほしいところです。

NGC4565銀河 串団子銀河(Needle Galaxy)

  • 位置(分点2000.0)赤経12h36.3m,赤緯+25°59’ 視直径14.0’x 1.8’,等級9.6,型SA

かみのけ座の銀河群からは10°ほど北の位置の、星座の本体となるMel.111星団の東隣にあります。メシエ番号はついていませんが、多くの春の系外銀河の中でもユニークで、ぜひ観察しておきたい対象です。大型の渦巻銀河を真横から見たタイプで、スーッと細長いスパイク状の光芒が非常に特徴的で印象深いものです。写真では銀河を二分する暗黒帯が分かりますが、眼視的にはこれを認めることは困難です。

渦巻銀河を真横から見ているという点では、ソンブレロ銀河の愛称で知られるM104(おとめ座)と同じですが、長径はM104の2倍もあるのに、バルジの部分は薄くてM104の半分しかありません。
海外では、Needle Galaxyの愛称で知られ、直訳すると「針銀河」とでもなりますが、日本では「串団子銀河」の愛称が普及しています。

NGC4725銀河

  • 位置(分点2000.0)赤経12h50.4m,赤緯+25°30’ 視直径11.0’x 8.3’,等級9.4,型SAB

前述のNGC4565銀河の3.5°ほど東にある系外銀河です。写真では大きな棒渦巻銀河ですが、眼視では中心付近のみ見えます。銀河の中心部でもうすく淡く、中心付近がほんのりと明るく、一見そこのみが星雲状に見えます。

2重星の観察

2番星

  • 位置(分点2000.0)赤経12h04.3m,赤緯+21°28’
  • 主星6.2等,伴星7.5等,位置角236°,離角3.7”(2017年),スペクトルF01V-V

素晴らしい重星です。2星がぴったりくっついて、接点は髪の毛のような細い線で分けられます。黄白色の主星と黄緑色の伴星のペアです。

24番星

  • 位置(分点2000.0)赤経12h35.1m,赤緯+18°23’
  • 主星5.1等,伴星6.3等,位置角272°,離角20.2”(2018年),スペクトルK2III

観察のしやすいみごとな重星です。離角は十分に大きくオレンジ色の主星と青い伴星のコントラストも美しい観察対象です。色の組み合わせがアルビレオに似て美しい。アルビレオよりも淡色の、春の重星の中でも色のコントラストを楽しめる逸品です。

35星

  • 位置(分点2000.0)赤経12h53.3m,赤緯+21°15’
  • 主星5.0等,伴星9.8等,位置角127°,離角28.5”(2016年),スペクトルG7III

広く開いた重星です。主星は黄色、伴星は青です。さらに主星にはわずか1.2”の離角で7.1等星の付いた三重星ですが、これを分離することはかなり困難で、20cm以上の口径が必要です。この近接した主星は公転周期359年の連星系となっています。