夏の星座4

4ヘルクレス座

 

学 名
Hercules(略号 Her)
英語名
Hercules
設 置
古代ギリシア
面 積
1225平方度

天体観測の見どころ

1星雲星団の観察

M13球状星団(=NGC6205)

  • 位置(分点2000.0)赤経16h41.7m,赤緯+36°28’ 視直径16.6’,等級5.7,集中度(高1-低12)5

ヘルクレス座にある代表的な球状星団で、天の北半球では最大です。年間を通じても屈指の球状星団で、少々月明かりがあっても観察できる明るい対象です。暗夜には肉眼でも存在を認めることができます。実態は数十万個もの恒星の大集団です。小望遠鏡では、2つの6等星に挟まれて、ぼんやりとザラザラした丸い姿が印象的に観察できます。大望遠鏡では中心部まで恒星が密集した様子を見ることができ、これはもう圧巻の光景です。天頂付近まで高く昇りますので観察時間帯も長く、観察会でも一押しの星団です。

M92球状星団(=NGC6341)

  • 位置(分点2000.0)赤経17h17.1m,赤緯+43°08’ 視直径11.2’,等級6.4,集中度(高1-低12)4

ヘルクレス座にはM13という全天屈指の球状星団がありますが、このM92球状星団もぜひ見ておきたい素晴らしい星団です。視直径はM13より小さいものの、中心部の集光は強くM13より明るく見えます。微光星がコンパクトに凝集した美しい星団です。ヘルクレス座の足元にあり、双眼鏡で見つけられます。

NGC6210惑星状星雲

  • 位置(分点2000.0)赤経16h44.5m,赤緯+23°49’ 視直径14”
  • 写真等級9.3,視等級8.8,中心星等級13.7

かなり小さく恒星状に見える惑星状星雲です。倍率を上げても恒星と区別しにくく、見逃してしまいそうです。惑星状星雲特有の緑色をしており、それで対象の天体と気づきます。それでもピントが少しずれた星像の程度です。視野の中の恒星の配置を確認するとよいでしょう。

2重星の観察

ヘルクレス座は面積が広いこともあり、小望遠鏡で観察しやすい重星がたくさんあります。明るい星も多くバリエーションも様々ですから、ひとつずつ拾って見比べてみましょう。

κ星

  • 位置(分点2000.0)赤経16h08.1m,赤緯+17°03’
  • 主星5.1等,伴星6.2等,位置角14°,離角26.8” (2016年),スペクトルG7III

小口径の望遠鏡向きで観察しやすい見本のような観察対象です。オレンジ色の主星に間隔を空けて赤紫色の伴星がついています。

Σ2063星(=HIP 80953)

  • 位置(分点2000.0)赤経16h31.8m,赤緯+45°36’
  • 主星5.7等,伴星8.7等,位置角195°,離角16.3” (2020年),スペクトルA2V

明るい主星に控えめの伴星が寄り添った可愛らしいペアです。主星は明るい黄色で、白みがかった赤の伴星です。

37-36番星

  • 位置(分点2000.0)赤経16h40.6m,赤緯+04°13’
  • 主星5.8等,伴星6.9等,位置角229°,離角69.3” (2017年),スペクトルA1V

広い間隔を空けたユニークな双眼鏡向きの重星です。主星の17番星は青白色で伴星の16番星は青色で似た色合いをしています。主星の37番星は、光学的には分離できない近接した5.9等と7.8等の連星系です。

ζ星

  • 位置(分点2000.0)赤経16h41.3m,赤緯+31°36’
  • 主星3.0等,伴星5.4等,位置角110°,離角1.6” (2019年),スペクトルG1IV

公転周期34.5年のよく研究された連星系です。地球から光学的に観測可能な連星系としては例外的に短い公転周期を持っています。これはこの星が近接した連星ながら35.2光年の近距離の恒星であるため、望遠鏡でその様子を直接観察できるためです。現在は離角を徐々に広げつつある時期にあり、2025年には現在よりも若干広い1.53”まで広がります。広いといってもこの数字で、光度差もありますから、分離して観察するには口径20cm以上を要します。シーイングに恵まれないとまず困難ですが、上級者の方には腕試しによい対象でしょう。

α星

  • 位置(分点2000.0)赤経17h14.6m,赤緯+14°23’
  • 主星3.5等,伴星5.4等,位置角103°,離角4.7” (2020年),スペクトルM5I-II

公転周期3600年の連星系で、周期が長く数100年程度では見かけの配置はあまり変わりません。伴星は主星に対して円に近い軌道で公転しています。赤橙色の主星にくっつくように青緑色の小さな伴星があり色の対比、離角の近さとも、とても美しい観察対象です。

ラスアルゲティは、星の進化の過程の終末期に当たる赤色巨星としてもよく知られています。その直径は太陽のなんと387倍もあり、もしラスアルゲティを太陽の位置に置いたら、その表面は火星の軌道付近にまで達するという巨大さです。このような赤色巨星は明るさも不安定で、ラスアルゲティは0.6等程度の変光がありますが、時に2.7~4.0等の大きく不規則な変光も観測されています。

δ星

  • 位置(分点2000.0)赤経17h15.0m,赤緯+24°50’
  • 主星3.1等,伴星8.3等,位置角291°,離角13.8” (2020年),スペクトルA3IV

光度差があり見ごたえのある重星です。明るい黄色の星に、けし粒のような青白い伴星があります。この主星は、さらに3.1等星と4.4等星が離角わずか0.1”で近接しています。こちらはアマチュアの機材では観測することは出来ません。

ρ星

  • 位置(分点2000.0)赤経17h23.7m,赤緯+37°09’
  • 主星4.5等,伴星5.4等,位置角321°,離角4.0” (2021年),スペクトルB9.5III

見ごたえのある美しい見本のような重星です。1等級の光度差の近いペアで、兄弟のように並んでいる様子が楽しめます。両星とも明るい緑色です。さらに主星は、4.9等星と5.9等星が離角0.3”で近接した連星系です。この分離は口径60cm以上の大望遠鏡でないと困難です。

μ星

  • 位置(分点2000.0)赤経17h46.5m,赤緯+27°43’
  • 主星3.5等,伴星9.8等,位置角249°,離角35.4” (2016年),スペクトルG5IV

6等級も光度差のある重星ですが、離角が35.5”も空いているので、難しい観察対象ではありません。強烈な主星の光芒の近傍に消え入りそうな伴星を見つけると、伴星がまるでレンズのゴーストのようで不思議な印象があります。主星はオレンジです。伴星は紫色ですが眼視的には色は分からないでしょう。

95番星

  • 位置(分点2000.0)赤経18h01.5m,赤緯+21°36’
  • 主星4.9等,伴星5.2等,位置角255°,離角6.4” (2020年),スペクトルA5III

重星の見本のような素晴らしい観察対象です。ほぼ同じ明るさの主星と伴星が適度な離角で並びます。両星とも澄んだ金色をしています。

100番星

  • 位置(分点2000.0)赤経18h07.8m,赤緯+26°06’
  • 主星5.8等,伴星5.8等,位置角182°,離角14.3” (2019年),スペクトルA3V

双子のようなペアで楽しく観察できます。両星とも白色です。小望遠鏡で面白い観察対象です。北側に位置している主星はさらに5.9等と8.8等の近接した重星ですが、これは0.2”と近すぎて観察対象にはなりません。